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2003年10月29日

P2P とビジネスの関係:企業の壁が無くなる日(2)


前回のコラムの最後の宿題は考えていただけましたでしょうか? それでは続きです。


■企業機密と情報共有



前回紹介した水平分業のコラボレーションが行われる際に問題となるのが、実は情報共有のあり方です。



協業している部分では当然情報を共有しなければなりませんが、それ以外のそれぞれの企業に属する情報を相手に見せるわけにはいきません。



サーバー型の情報共有システムの場合、サーバーに接続できるようにしてしまうと、通常、その中味が相手にすべて見えてしまいます。



システム構築プロジェクトの会議のために、自分の予定表を相手に見せようものなら、別の顧客の訪問予定まですべて見られてしまいます。



簡単な例えで言い換えると、ビルの入り口に鍵をかけてガードマンを立たせている状態です。入り口を入るのは大変ですが、入ればそのあとは自由です。



もちろん、それぞれの部屋にさらに鍵をかけることはできますが、ビルに入れてしまうと、その部屋に侵入される危険も増すことになるため、一般的にはなかなかビルであるサーバーへの接続許可を出すことが難しいのが実状です。



さらに物理的なネットワーク接続の問題や、サーバー費用をどちらが負担するかという別の問題も発生します。当然、短期のプロジェクトで大規模なシステムを構築するわけにも行きません。 そのため、サーバー型のシステムでは、企業をまたいだ情報共有は非常に実現が難しい、というのが一般的な事実でした。



結果的に、これだけ IT 化が進んだ現在でも、企業をまたいだコラボレーションを行う場合には、実際の情報共有は紙やメールだけで行われているケースがほとんどなのです。



■情報共有をしたい相手と情報共有



P2P 型システムの場合、自分の持っている情報を相手に見せるかどうかを選択するのは、サーバーではなく自分のパソコンになるため、企業を超えた情報共有を行うのが非常に容易です。



先ほどサーバー型のシステムでは、ビルの入り口に鍵をかけている例で説明しましたが、同じ例でいうと、 P2P 型のシステムはお互いに写真付の身分証明書を胸につけている状態です。



お互いが誰かはその身分証を見れば確認できますから、それをもとに相手に情報を見せるという、より現実社会に近い情報のやり取りを行うことができるのです。



そのため、企業の壁をまたいで、情報共有をしたい相手との情報共有を安全に行うことができるのです。 (セキュリティの仕組みについては、また別の機会に詳しく説明したいと思います)



P2P 型システムは、このような情報共有のセキュリティ確保のコンセプトと、以前に「組織の壁を超える」のコラムでご紹介したような、柔軟に情報共有の単位を構成することができるという特徴を持っているため、企業の壁を超えた情報共有にも簡単にソフトウェアだけで対応することができるわけです。



これまでのサーバー型システムでは、社外の人と情報共有をするのが難しかったため、社外と情報共有できずに思考停止に陥っている場合が多いようです。



もう一度、あなたの情報共有をしている相手を冷静に考えてみてください。



頻繁に、社外の人とメールでやりとりをしていませんか? 社外の人との会議の日程調整のために、メールが何往復もしていませんか? 必要なファイルを社外の人に CD-R や FD で渡していませんか?



実は P2P 型システムを使えば、社内で行っている情報共有と同じ仕組みを、社外の人とも構築できるのです。



本当にあなたが情報共有をするべき相手は、実は社内ではなく社外にいるかもしれません。

2003年10月22日

P2P とビジネスの関係:企業の壁が無くなる日(1)


前回のコラムでは、クロスファンクショナルチームに代表される、企業の内部での組織の壁を超えたビジネススタイルについて紹介しましたが、今回はもう一段視点を外に広げてみましょう。


あなたの仕事は、企業の内部に閉じているでしょうか? それとも、社外の人と協働する場合が多いでしょうか? 企業の組織にとらわれない情報共有を実現できる P2P の技術を活用すれば、組織だけでなく企業の壁すら意識する必要がなくなります。



これこそが P2P 型の情報共有の真骨頂とも言える世界です。



■ソニーから工場が無くなる?



2000年10月、ソニーは自社で保有する2つの工場を Solectron という米国の企業に売却し、世界を驚かせました。この売却は、いわゆる工場を閉鎖して売却するというネガティブな売却ではなく、工場を売却して生産部分をアウトソーシングすることで、自社の経営資源はコアとなる研究開発や商品企画に注力させるという新たな形の売却です。



ソニーとしては、経営資源の集中はもちろん、工場内に陳腐化した設備を保有するというリスクを回避することができ、ソレクトロンとしては、受託に特化することでスケールメリットによるコストダウンなどのメリットを狙えるという、Win-Win を目指した売却でした。



また、生産財のカタログ通販を行っているミスミは、アウトソーシングで非常に有名です。



ミスミが自社で担っているのは、商品の企画と顧客にとっての購買の代理店という機能だけです。 製品の製造どころか、総務経理業務などの管理業務や、情報システムの管理・運用、受発注や物流のサービスに至るまで、ほとんどの業務をアウトソーシングしていることで知られています。



このような自社の経営資源をコアビジネスに集中させ、それ以外の部分は他社に任せるというスタンスは、ビジネスの変化の速度が急激になっているここ数年、さらに顕著になっています。いわゆる垂直統合から水平分業への産業構造の変化です。



■垂直統合から水平分業へ



一般的にこれまでの日本企業は、自社の業務に関わる全ての業務を自社の社員やグループ会社の社員で実施する、というスタイルを取ってきました。



特に大企業においてはコアビジネスの周辺領域はおろか、社員食堂の運営や社宅、福利厚生施設の管理、社員の海外出張の手配に至るまで、グループ会社を作って自社グループで完結させるという企業も少なくありませんでした。



このように自社ですべてを担うというスタイルは、自社ですべてをコントロールできる上に、自社の事業周辺で発生する事業機会を自社グループで吸収できるという点では、意味がありました。



しかし、変化が速い現在では、高コストの温床になってしまうということが指摘され、各企業とも急速に改革を進めてきています。



例えば企業システムの構築などが良い例です。一昔前に企業システムを構築する際には、中心となるホストコンピュータからダム端末、ネットワーク機器に至るまで1つの企業から購入することができました。



これが現在では、サーバー、パソコン、ルータ、中で動くソフトウェア、そしてそれをまとめて構築するシステムベンダーと、複数の企業が協働でシステムを構築するのが当然となっています。



あなたの業務も振り返ってみてみてください。社内の人とだけやりとりしていれば仕事は終わるでしょうか? 



次回のコラムまでに是非一度振り返ってみてください。(次回に続く)

2003年10月 8日

P2P とビジネスの関係:組織の壁を超える?


前回のコラムでは、個人を軸にしたビジネススタイルの変化についてご紹介しましたが、今回はもっと企業のビジネススタイルを中心に考えてみることにしましょう。


P2P の特性を活かすと、単純に個人に情報のコントロール権を与えることができるだけでなく、企業組織の情報共有に対してもより柔軟に対応できるのです。 



■クロスファンクショナルチーム



カルロス・ゴーンは、今やビジネスの世界では知らない人がいないと言っても良いカリスマ経営者でしょう。



このゴーン社長が日産リバイバルプランにおいて力をいれていたものの一つが、クロスファンクショナルチームです。



従来の縦割り組織に横軸を通した形でプロジェクトチームを発足させ、組織全体の問題点を抽出したり、改善策を検討したりといったスタイルは、縦割り型組織の弊害で硬直してしまった組織を蘇らせるのに、非常に効果があると言われています。



縦割り型組織においては、組織のメンバーはどうしても、企業全体よりも自分の所属する組織自体のメリットを優先してしまいがちです。それに対して、クロスファンクショナルチームでは各組織の代表者が集まり、企業に対するメリットにフォーカスした議論ができるので、ドラスティックな方向転換を行う際には非常に有効です。



■企業単位でのシステム構築による弊害



ところが、このようなチームの情報共有をサポートする仕組みとしては、これまでのサーバー型の情報共有システムではあまり効率的ではありませんでした。



サーバー型のシステムは、基本的にまず第一に設計が必要となります。そのサーバにアクセスする人数、アクセスする組織の場所、ネットワーク構成など、必要な項目を元にシステム担当が最適なシステムを構築していきます。



また、ロータス・ノーツのようなシステムで良く問題になるのが、新しい情報共有の単位が発生した時に、システム担当の設定などの作業が発生する点です。



そのため、先ほどのクロスファンクショナルチームのような短期のプロジェクトや、メンバーが頻繁に入れ替わるプロジェクトになると、そのフォローはかなり面倒な作業になってしまいます。



これらは結局、情報共有の場を構成する考え方で、固定的な組織をイメージしているために起こる問題です。



また、サーバー型のシステムの場合、違う拠点にいるメンバーがサーバーに接続できなかったり、逆にサーバーに接続できるプロジェクト外の他の社員に情報が見えてしまったり、という物理的な問題も発生してしまうのです。



そのため、現実的にはほとんどの企業横断型のプロジェクトは、単純にEメールや電話、実際の会議など、旧来の手段で運営されているというのが実態だと言われています。



■プロジェクト単位でシステム構築



これまでのコラムでもご紹介してきたように、 P2P 型のツールはインターネット経由で簡単に情報を共有できます。そのため、クロスファンクショナルチームのようなプロジェクト型のビジネススタイルをサポートするのに非常に有効です。



情報のコントロール権が個人レベルに落ちているわけですから、チームリーダーやプロジェクトマネージャが必要に応じて、情報共有の単位や情報を共有するメンバーを選択できるわけです。



これまでの情報共有システムは、会社のシステム担当が中心となって運営するのが当然とされていました。ただよくよく考えてみると、情報共有システムはコミュニケーションを支援する電話や FAX、ホワイトボードなどの代替品にあたるものですよね。



P2P 型の情報共有の仕組みのような、社員が必要に応じて柔軟に情報共有の仕組みを運営していくことができるツールを利用することにより、クロスファンクショナルチームのようなプロジェクト単位での情報共有が簡単にできるようになります。



これにより、企業の組織のあり方も、これまでのような縦割り型のものからよりプロジェクト単位のものへと、ビジネススタイルの変化に加速度がつくかもしれません。

2003年10月 1日

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