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2003年11月27日

ワークショップ「Big Science & High Performance Network」講演

2003年11月27日、ワークショップ「Big Science & High Performance Network」にて、アリエル・ネットワーク取締役 開発部長 井上誠一郎が「P2P技術と応用」をテーマに講演を行いました。

ワークショップ概要

ワークショップ「Big Science & High Performance Network」
日 時: 平成15年11月27日(木)9:30~17:20
場 所: MAFFIN 電農館3階 VCホール
主 催: ワークショップ「Big Science & High Performance Network」実行委員会
協 賛: (五十音順)
・アジア太平洋高度ネットワーク日本協議会/APAN-JP
・つくばWAN研究交流委員会/Tsukuba-WAN
・日本学術振興会産学協力研究委員会インターネット技術第163委員会

ワークショップ「Big Science & High Performance Network」のウェブページはこちら

講演プログラム

時間内容テーマ/講演者
9:30-9:40開会 
9:40-10:10研究事例紹介「e-VLBI における High Bandwidth-Delay Product Network 問題」
独立行政法人通信総合研究所 平原 正樹 氏
10:10-10:40「P2P技術と応用」 アリエル・ネットワーク株式会社 井上 誠一郎 氏
10:40-11:10「つくばギガビットラボ/JGNの活動・成果報告」 通信・放送機構 つくば情報通信研究開発支援センター 古賀 達蔵 氏
11:10-11:40「Trans Pacific Grid Data Farm によるデータ解析実験と拡がる応用」 独立行政法人産業総合技術研究所 建部 修見 氏
11:40-12:40昼休み 
12:40-13:20基調講演「ハイパフォーマンスネットワーク研究の現状と今後の展開」 九州工業大学 尾家 祐二 教授
13:20-13:50研究事例紹介「つくばWANネットワーク上のスーパーコンピュータを利用した大規 模流体数値解析」 日本電信電話株式会社 アクセスサービスシステム研究所 海老根 崇 氏
13:50-14:20「つくばWAN等による衛星データ取得、解析及び提供に関する国際共同研究」 独立行政法人防災科学技術研究所 諸星 敏一 氏
14:20-14:50「ディジタルアジアネットワーク構想におけるプロトタイピングシステム の開発」 宇宙航空研究開発機構 地球観測利用推進センター 落合 治 氏
14:50-15:10休憩 
15:10-15:40研究事例紹介「遠隔医療とゲノム研究における高速ネットワークの利用 」 国立がんセンター研究所 水島 洋 氏
15:40-16:10「高度医療ネットワークの研究開発」 株式会社三菱総合研究所 村瀬 一郎 氏
16:10-16:40「素粒子物理学実験・Belle実験と高速ネットワーク」 高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所 片山 伸彦 氏
16:40-17:10「農業・環境情報共有データグリッドの構築」 独立行政法人農業・生物特定産業技術研究機構 中央農業総合研究センター 二宮 正士 氏
17:10-17:20閉会 
17:40-懇親会 

井上講演内容

P2P(Peer To Peer)技術は、ノード(PC)がアプリ層マルチキャストを行うことで分散的に協調動作するネットワーク技術です。
P2Pは、双方向コミュニケーションのみならず、アドホックなグループ間コミュニケーションや従来の組織にとらわれないコラボレーションを実現する手段として注目されています。

まずは当社が開発したP2PフレームワークのSOMAnet/Ariel Frameworkの技術的背景と動作概要を説明しました。
SOMAnet/Ariel Frameworkは、ピュア型P2Pのノード間トポロジを動的に最適化することで、P2Pネットワーク内の効率的なリソース発見の仕組みを提供する基盤技術です。
ユーザの匿名性を廃し、PKIをベースにした暗号化、署名技術により、安全なP2Pを実現しています。

次に、P2P技術が既に実用段階に達していることを示すために、Ariel Frameworkの上に構築されたP2PコラボレーションツールのAriel AirOneをご紹介しました。
ご紹介内容は、現実の様々な制約のあるトランスポート層(FireWallやNAT)を、中継ノードやHTTPカプセル化で透過する仕組みや、 オフラインのユーザ同士のコミュニケーションを支援するための代理応答機能などです。

講演内容の資料はこちらからご覧いただけます。(PDFファイル:599KB)

2003年11月26日

P2P とビジネスの関係:中心の無い組織って?(下)NPO の可能性


(前回より続く)


■組織のためではなく、目的のために働く組織 NPO



NPO とは直訳の「非営利組織」という言葉が示すように、利益を追求することを目的としない組織です。



企業というのは基本的には「利益」を出すことを目的に運営されています。もちろん社会に貢献している企業もたくさんありますが、本質的には株主に資本を出してもらい、株主に対して利益を還元することが究極的な目的です。



これは自営業の会社であろうが、従業員が10万人の大企業であろうが同じです。利益を出さなければ、経営陣は株主に職を追われますし、従業員をリストラしなければなりません。これは利益を目的としている限り、ある意味当たり前のことです。



もちろん NPO も利益を出さなくて良いというわけではありませんが、 NPO の存在目的は利益を出すことではなく、その組織が設立された目的自体にあります。



これは実は非常に大きな違いです。



企業においては、従業員はどうしても、企業が「利益」を出すために雇っている人という色合いが強くなります。利益を出さなければ自分の責任が問われるわけですから、利益を出すために様々な不正が発生してしまうことも、ある意味自然と言えるかもしれません。



これに対し NPO はあくまで「目的」のために存在します。もちろん、資金を維持できなければ組織として存在できなくなりますが、そこで働く人たちのモチベーションは、この「目的」をともに達成するという使命のもとにあります。



■組織力のハンデを IT 技術で超える



もちろん現在存在する NPO が組織的に企業を超えているかというと、そんなことはまだまだないのが現状です。資金的にも人材的にも課題はありますし、そのような「目的」を共有している人々が交流する手段もまだ限られています。



しかし、インターネットを中心とする IT 技術の発展は、そのような現状を大きく変える可能性を秘めており、特に P2P というコンセプトは、この NPO 的な組織に合っていると言われています。



サーバー型のような中央集権的なシステムは、どうしてもサーバー自体の管理や費用の分担などの面で、 NPO のようなフラットな集団に適応しづらいのが現状です。



P2P は、Person to Person や People to People と呼ばれることもあり、 NPO のようなボトムアップ型のアプローチに非常に適しているのです。もし、NPO が大企業と同様に IT 技術の恩恵を受けることができれば、企業と同様の役割を一部で置き換えていくことがあり得るかもしれません。



そんなことはあり得ないですって?



考えてみてください。同じ給料で、「利益」と「目的」のどちらのためにあなたは毎日働きたいですか?



同じ価格で「利益」のためのサービスと「目的」のためのサービス、どちらのサービスをあなたは受けたいですか?



利益を追求する企業のほうが効率的になるという議論もありますが、さてさて誰も50年後のことは分かりませんよね?

2003年11月19日

P2P とビジネスの関係:中心の無い組織って?(上)


7月から続いたこの「P2P とビジネスの関係」というテーマも、今回で一段落です。



これまでは「企業」やその企業で働く「ビジネスマン」を中心にコメントをしてきましたが、今回はその視点をさらに幅広い組織に広げてみましょう。


実は企業という考え方を中心にしている時点で、私たちは既存の常識にとらわれているのかもしれないのです。



■中心の存在しない組織



皆さんは、『踊る大捜査線 THE MOVIE 2』をご覧になったでしょうか。この映画で象徴的なシーンの一つとなっているのが、主人公の青島巡査部長が「レインボーブリッジ、封鎖できません!」と叫ぶシーンです。



レインボーブリッジを封鎖するのに複数の官公庁がからんでいて、いつまでたっても結論がでない。映画の一つのテーマともなっていたのが、硬直的な縦割り組織では、必要に応じてリーダーが変わる柔軟なグループに太刀打ちできないというメッセージでした。



実際にどちらの組織が優秀かという議論は、あまり意味が無いのでここでは避けたいと思いますが、このメッセージに代表されるように、最近は多くの企業が、これまでの縦割り方の官公庁的モデルから、クロスファンクショナルチームのような柔軟な組織を目指そうとしています。  



これまでこのコラムのあちこちで触れてきたように、究極的には中央集権思考に進むか、分散型の思考に進むかの違いです。



分散型の仕組みと P2P 型の関係は、中央集権的組織にいた人々にはイメージしづらいかもしれません。



「指揮命令系統は明確に決まっていなくて良いのか?」

「各メンバーは何をすれば良いのか分からなくなるのではないか?」

「管理ができなくなって混乱がひどくなるのではないか?」



これまでの組織が中央集権的なものが中心だったのですから、様々な疑問が生じてくるのも当然でしょう。 でも、はたして中央集権的な組織が、本当にビジネスを行う基本形態と呼べるのでしょうか?



■ナレッジ ワーカー



実は人類の歴史の中では、いわゆる「ナレッジワーカー(知識労働者)」と呼ばれる、「知識」を資本として働く人々が世の中の中心になるビジネススタイルは、ここ数十年発展してきたにすぎません。それまでは、いわゆる肉体労働や職人的な技術に対しての賃金を支払うという形が通常であり、当初の中央集権的な組織は、そういった労働を管理するのには比較的向いていたと言えます。



ただ、IT 技術の進化や競争の激化により、変化のスピードはこれまでと比べものにならないほど速くなり、ナレッジワーカーはますます重要な地位をしめるようになってきています。しかし、このナレッジワーカーの重要性も、ピータードラッカーが指摘したのが1960年代で、まだ、ここ数十年の話でしかないのです。 



つまり、本当にどのような組織が正解なのか、まだまだ誰にもわからないというのが現状です。(永遠に続く正解というものはないというのが、実は正解かもしれ ません。)



例えばコンサルティングファームのような組織は、すでにかなり分散型の仕組みを取り込んでいます。一人一人のコンサルタントは、「企業」に雇われて仕事をしているというよりも、それぞれのプロジェクト単位に雇われるイメージです。



各コンサルタントは全社的な方向性を意識するよりは、各プロジェクトの目的を意識してプロジェクトを進めており、このような仕組みは、各個人の責任や役割が明確になる組織で、徐々に取り入れられつつあります。



 そのような中で、新たな組織体として注目されているのが NPO(Nonprofit Organization)です。次回は NPO の話をしましょう。(次回に続く)

2003年11月 5日

P2P とビジネスの関係:SOHO が大企業と肩を並べる日


前回のコラムを読んで、皆さんは「企業の壁を超えた情報共有」についてどういう印象をもたれたでしょうか。


前回のコラムでは、ソニーなどの大企業を事例として紹介したため、大企業のアウトソーシングの話と思われた人も多かったかもしれません。



しかし、企業の壁を超えた情報共有というのは、 SOHO のようないわゆる小規模な企業レベルでの連携においても、非常に意味があります。



■SOHO では大規模な仕事はできない?



SOHO とは「Small Office Home Office」(スモール オフィス ホーム オフィス)の略で、単純に中小企業と解釈されることもあるようですが、通常は「IT を活用して」事業活動を行っている従業員10名以下程度の規模の事業者のことを言います。資格や過去の実績を元に事務所を開設している場合や、在宅ワークを中心としているところまで幅広く対象とされます。



パソコンやインターネットの普及・高度化や、ビジネススタイルの変化により、このような業務形態は拡大を続けています。財団法人日本SOHO協会によると、国内の SOHO としては約500万の事業所(内法人:188万、個人:315万)があり、就労者は1,500万人を超えると言われています。



現状の SOHO の主な業態と言うのは、一般的に企業の下請け的業務であったり、自営業や個人ビジネスに近い事業が中心であると言われています。当然従業員は数名しかいないわけですから、大規模なビジネスはなかなか実現できません。当然他の SOHO や企業と協働して事業にあたることになります。



■企業の壁によるコミュニケーションの質の低下



ここでやはり壁となるのがコミュニケーションの問題です。



現状は、当然メールや電話が連絡手段の中心になります。そうすると、大企業のような情報共有手段が確立している企業と比較すると、どうしても SOHO 間の情報共有というのは質が落ちてしまいます。



SOHO 間ではいわゆるグループウェア的な情報共有が実施できないため、メールによる会議調整も手間もかかりますし、メールによるファイルのやり取りも、ファイルサイズや最新ファイルの管理などの問題が発生してしまうのです。



仮にそれぞれの SOHO の仕事のレベルが大企業のものよりも高かったとしても、この情報共有が上手くいかないために、 SOHO はかなりのハンデを背負ってしまうことになります。



もちろん事務所が近ければ、お互いに頻繁に打合せを持てばよいのですが、当然協働する相手がいつも近くの事務所とは限りません。



ASP 型グループウェアのような手段を活用する場合にも、費用の負担や共有すべき情報と見せてはいけない情報の区分が難しくなり、なかなか上手く行かない場合が多いようです。



■複数の SOHO が一つの企業体として



P2P 型の情報共有手段は、このような問題を解消する手段として注目されています。



「組織の壁」の回で紹介したように、 P2P 型の情報共有手段は柔軟に情報共有の単位を変えられるため、プロジェクト的な運営に適していますし、複数の企業間でセキュリティを保った情報共有を実現できます。



また、そもそも P2P 型のシステムにおいてはクライアントサーバー型の場合と異なり、高価なサーバーやシステム構築が不要ですので、 SOHO としても気軽に利用することができるのです。



冒頭でご紹介したように、近年の終身雇用制度の崩壊により、優秀な人材がどんどんとSOHOの業態を始めるケースが増えています。また、すでにデザインやコンテンツ開発の分野では、企業名ではなく個人名を意識して仕事を依頼することが通常となりつつあります。



P2P 型の情報共有手段によって、 SOHO が企業規模のハンデを乗り越えることができるとしたら。複数の SOHO と大企業が、同じ事業で頻繁に競合するという時代が来るかもしれません。

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