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先日ジオメディアサミットに、急遽パネリストとして参加する機会があった。当日の詳細は、下記のTechWaveのレポートに掲載されていたUstream配信のアーカイブをご覧頂ければと思うが、そのパネルセッションで出たgumiの国光さんの発言で興味深かったのが、「もう日本でタイムマシン経営は無理」という発言だ。
タイムマシン経営というのは、ソフトバンクの孫さんがネットバブルの頃に唱えていたキーワード。アメリカの最先端事例をコピーして日本にすぐに持ってくれば、アメリカと日本には数年の時差があるのでそれによってあたかもタイムマシンで未来からサービスを持ってきたかのごとく、サービスを成功させることができるというコンセプトだった。
ネットバブルの時代には、米国Yahooを参考にしたヤフージャパンの成功を筆頭に、イートレード証券など、複数の米国の成功モデルが日本に持ち込まれたし、実際その後の日本のネットベンチャーの成功には、米国の成功モデルをブランドごと輸入して日本法人を立ち上げるパターンや、米国の成功モデルを日本向けにコピーしたサービスが多い。
]]>OrkutやFriendsterの流行を参考にサービスを開始したmixiやGREEも、ある意味タイムマシン経営といえるし、現在日本でトップのブログサービスとして認知されているAmebaブログも、サービスとしては海外に比べると数年遅れで開始されたサービスだ。数年遅れで日本でサービスを開始しても、十分に間に合うという意味で、まさにタイムマシン経営が可能だった時代だったといえるだろう。
ただ、このタイムマシン経営による成功パターンは、実はブログやSNSを最後に途絶えつつある。
SNSの次の波として注目された動画共有サービスでは、御存知の通りYouTubeが日本でも日本語版が提供される前からブレイク。YouTubeのブームに触発されてYouTubeクローンとでもいうべき動画共有サイトが雨後の筍のように日本でも開発されたが、YouTubeの天下を崩すことはできなかった(もちろん日本にはニコニコ動画があるが、ニコニコ動画はどちらかというとYouTubeのような動画共有サイトと言うよりは、日本ならではの進化を遂げた新しいサービスといえるだろう)。
さらにYouTubeの次のブームといえるTwitterでも、マイクロブログやミニブログと呼ばれるサービス領域として、日本でも多数のTwitterクローンが登場したが、ほとんどのサービスはTwitterと比較して意味があるほどの利用者を獲得出来ていない。個人的にはAmebaなうの動向に注目しているが、今のところはTwitterに水を開けられつつあるようだ。
その他にも、最近のEvernoteやUstreamなど、最近では日本法人が設立される前から日本でブレイクするサービスが増える傾向にあり、日本市場でクローンを作る前に勝負が決まってしまっているケースも多い。このようなタイムマシン経営を難しくしている要因として大きいのが、オープンなAPI公開の流れだろう。
YouTubeにしても、Twitterにしても、英語版しか提供されていなかったサービス初期の頃から日本のエンジニアが日本人向けのサイトや利用環境を早期に構築してしまっていた。特にTwitterにおいては、2007年の段階で日本の携帯電話用のツイッターサービスであるモバツイッター(現モバツイ)がサービスを開始していたが、当時モバツイッターの開発はあくまで個人での実験的サービス。
個人でもAPIを上手く活用すれば、サービスのクローンが作れてしまうと言うのが、TwitterのAPIがいかにオープンかと言うことの証明だろう(アメブロやmixiのiPhone版や中国語版、英語版を、海外の個人エンジニアが作ってしまえるという状況を想像してみてほしい)。
最近では、これにiPhoneアプリのようなグローバルなプラットフォームができてしまったことで、さらに世界同時リリース、同時ブレイクの流れが加速しつつある。いまや、タイムマシン経営の基盤になっていたサービス普及の時差がどんどん埋まりつつあるのだ。
ジオメディアサミットでのテーマだった位置情報サービスにおいても、やはり世界の注目はFoursquareであり、日本でも「ケータイでfoursquare」など、米国で注目されているFoursquareを日本の携帯電話で提供するサービスが登場しつつあり、濃いネットユーザーの間ではFoursquareが国境をあっさり超えてしまった印象もある。
個人的には2008年から開催されていたジオメディアサミットに見られるように、ケータイ国盗り合戦やコロニーな生活など、日本では位置情報に関する取り組みがかなり海外に比べると先行していた印象を持っていたが、残念なのはそういった先行していたサービスがあまりAPIなどを上手く活用出来ておらず、海外のエンジニアの力どころか日本のエンジニアの力も自らのサービスに活かせていないようにみえるところだ。
いくら日本の現状のサービスが先進的でも、世界中の開発者がよってたかっていじるサービスと、日本のベンチャー企業が一社単独で開発しているサービスでは、残念ながら長期的な勝負はみえている。せっかく日本で何年も先進的な取り組みをしていたサービスも、このまま放置しておけばガラケーと呼ばれるようになった携帯電話と同様、ガラパゴスサービスと呼ばれてしまいかねない。
この流れに対抗する手段の一つは明確だ。自分たちの取り組みが先進的であると認識しているのであれば、世界中の開発者がよってたかっていじりたくなるようなオープンなAPIを提供することで、さらにその流れを加速させていくことだ。
サービスに対する賛否はあれど、セカイカメラが取り組んでいるのもまさにそういうアプローチの一つだろうし、Lang-8やCacooのように、海外のユーザーに地道に認知され始めているサービスも日本にはある。
いわゆるネットの覇権を争うような巨人の争いに今から日本企業が参戦することは現実的ではないかもしれないが、位置情報に代表されるように、まだまだインターネットの可能性を活かした周辺サービスの発掘は今後も続くだろう。
その時に、「日本では昔から取り組んでいたのに」と日本の片隅でくやしがるのではなく、日本企業自体が世界をリードする存在になれるチャンスはまだまだある。そういう意味では、日本企業はそろそろタイムマシン経営は最初から忘れて、自らがアジアの国々からタイムマシン経営の対象にされるようなサービスを考えることに注力するべきで、アイデアの輸入国から輸出国にならないといけないのだ。
そんな風に考えてしまうのは、私だけだろうか。
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先月、日本でFacebookの地位を獲得するのは、mixiかGREEかという記事を書いたが、その記事への反応として想像以上に多かったのは、日本でもFacebookがmixiやGREEを抜いてトップの地位を獲得するのでは?という反応だった。
現在のグローバルでのFacebookの勢いを考えれば、当然そういうシナリオも考えられるが、個人的にはmixiやGREE等の既存の国内SNSがよっぽど展開を失敗しなければ、そのシナリオは難しいのではないかと考えている。
グローバルで圧倒的首位を占めるサービスが、日本において意外に苦戦すると言うのは今に始まった話ではない。世界最大手のオークションサイトであるeBayも、2002年に日本から撤退した過去を持っているし、米国でダントツの検索シェアを誇るGoogleも日本ではヤフージャパンの後塵を排し続けている。
SNSの世界においても、ソフトバンクが出資して鳴り物入りで設立されたMyspace日本版が、現在のところも日本での認知向上に苦しんでいる印象が強い。
特にSNSにおいては、いわゆるネットワーク効果が他のサービスよりも更に強くはたらいてしまうため、すでに特定の世代でコミュニケーションインフラになっている国内のSNSを、これからFacebookがひっくり返すのは容易なことではない。
ただ、そうは言っても、Facebookが日本でも外資系企業や、留学経験のあるビジネスマンを中心に徐々に認知度を上げているというのも事実。利用者も100万人を超えてきているということだから、すぐにトップ3に追いつくのは難しくても、独自のコミュニティを抑えることができる可能性は十分にある。
そういう意味で、日本でFacebookが一定の成功をおさめるためのポイントを考えてみるのは、思考実験としても面白そうだ。ぱっと思いつくところでは、下記のようなポイントが考えられる。
■日本の携帯電話環境への対応
これはすでに日経BPの記事でも取り組んでいることが書かれているが、当然日本独自の携帯電話向け環境の構築は必須だろう。一応現在でも使えないことはないが、やはり国内のSNSに比べると使い勝手が一段劣る印象が強い。すでに日本においてSNSの主戦場はモバイルにシフトしており、Twitterの日本普及においても日本の携帯電話向けプラットフォームだったモバツイが大きな役割を果たしたのは周知の事実。
本気で日本市場攻略を目指すのであれば、日本の携帯電話環境への対応は不可欠だ。特にFacebookアプリのほとんどが日本の携帯電話に対応していないだろうという点は、膨大なアプリを保有するFacebookの強みが消されてしまうと言う点で、今後の課題になるだろう。
■日本のスマートフォン利用者への最適化
ただ、日本の携帯電話環境での競争が激化していることを考えると、個人的にFacebookにとって逆張りの選択として重要だと考えているのが、スマートフォンへの対応強化だ。日本のSNSはスマートフォンへの対応がまだ不十分になっている印象が強い。
一方で、Twitterのブレイクと並行して見られるように日本でもスマートフォンユーザーは着実に増加してきており、あえて日本のスマートフォンユーザーがTwitterと並行して利用するのに最適なSNSというポジションを確保するのは、意外に良い選択肢なのではないかと考えられる。(もちろん、日本のスマートフォン普及が進まないと逆にリスクになってしまうが)
■ビジネスユーザーに特化した機能の強調
Facebookというと何といっても大学生専用コミュニティから始まったこともあり、学生向けという印象が強いが、日本では学生向けのSNSはmixiやモバゲーなどライバルが非常に多い。逆に日本のSNSはどれも若者向けやゲームコミュニティの印象が強いことから、あえてFacebookが日本においてはLinkedIn的なビジネスに直結するSNSというポジションを取る、というのはどうだろうか。
個人的にも、AdTech Tokyoの主催をしている武富さんが、AdTechのプレイベントの告知をFacebook限定で行っていたのが印象的だった。類似のFacebookを中心に活動するビジネス系のイベントやコミュニティが増えれば、日本のオピニオンリーダーを国内SNSからFacebookにスライドさせることが可能かもしれない。(当然、そのためにはある程度の機能追加や、アレンジが必須になるが。)
■英語に対する恐怖を呼び起こさないための対策実施
これはちょっと極端に書きすぎかもしれないが、日本の多くの利用者がまだまだ英語によるサービスに対しては強い抵抗感を持っている。特にFacebookでは海外からのフレンド登録依頼が比較的多く届く印象があるが、おそらく海外指向の無い利用者からは、スパムメールにしか見えず印象が悪い。日本語強制限定モードを用意して、日本語以外でのコンタクトをブロックするなどの仕組みが必要かもしれない。
また、現時点でもフッター部の「Facebookについて」を選択すると、Facebook本家による英語のファンページが表示されるのは、おそらく日本のFacebook初心者にとっては敷居が高い。こういった細かいところを修正していかないと、他社を押しのけて一般的な日本人に広がるサービスになるのは難しい印象が強い。
■本国での成功体験を一旦忘れる
精神論過ぎて、ちょっと話がずれてしまうかもしれないが、外資系企業の日本法人において、最も担当者が苦しむのが本国の担当者からの圧力だ。特に本国で圧倒的な地位を築いていれば築いているほど、本国の担当者には日本で苦戦している理由が理解できない。本国の担当者からすると変化球や回り道に見えるであろうアプローチを取ることができるかどうかは、日本の事業環境を理解してもらい、米国での成功体験を忘れてもらうことが出来るかにかかっているだろう。
個人的には、もっとも重要なのは最後の5番目で、それを元に日本独自のシナリオを描けるかというのが、Facebookの日本展開には最も重要なのではないかという印象もあるが、皆さんはいかがお考えだろうか?
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先日、mixiがFacebookのようなタイムラインを導入するべきではないかという記事を書いたが、この視点で日本のSNS市場を見た上で、当然もう一つ忘れてはいけないプレイヤーがいる。それがGREEだ。
mixiとGREEというのは、そのサービスの開始時期や生い立ちが非常に似ていることもあり、サービス開始から6年がたとうしている今でも、直接的なライバルとして比較されることが多い。SNSというサービスのくくりからも、それはある意味当然と言えるだろう。
ただ、現時点においては、mixiとGREEは本質的には全く違うサービスと考えた方が良い。その利用者数こそどちらも1500万を超え、ある意味日本のネットのインフラ的サービスという印象のある数になってきているが、基本的なサービスの使い方を聞く限り、実際の利用者の意識は大きく異なるようだ。
誤解を恐れずに言い切ると、mixiがいわゆる人と人の関係性を表すソーシャルグラフを押さえ、利用者同士のコミュニケーションのインフラとして機能しているサービス。一方、GREEは、グリゲーに代表されるようにソーシャル性をもったアプリやゲームを楽しむためのサービスだ。いわゆるソーシャルグラフを元にしたコミュニケーションサービスとしての競争に、GREEは一度mixiに敗れた経緯がある。(私自身、5年半前のmixiとGREEの激しい利用者数競争においては、GREE派だった過去がある)
その後、GREEはモバゲーの成功を参考に、モバイル向けのゲームを中心にしたサービスに大転換を実施。アイテム課金をてこに見事な成功を収めて、一度敗北したmixiを時価総額でも抜き去った。これが、良く語られるmixiとGREEの競争の歴史だが、このように文章で書くと単純に直線での競争でmixiとGREEが競っているように聞こえてしまうだろう。
しかし実はmixiとGREEはこの5年で全く異なる領域に到達しているのが現実だ。イメージとしては下記のような感じだろう。
ただ、その状況がこの半年大きく変わろうとしている。
mixiがmixiアプリ、特にmixiモバイルでのアプリを開始したことにより、明らかにmixiはモバイルSNSゲーム市場に足を踏み入れることになった。現在のmixiモバイルのメニューの並び順を見ると、mixiモバイルアプリのショートカットがmixi日記の上に置いてあるぐらいで、個人的にはmixiアプリに入れ込みすぎてmixi日記閲覧者が減ってしまうのではないかと心配してしまうぐらいの力の入れようだ。
一方、先日のmixiタイムライン記事で書いた、Facebook的なタイムラインのアプローチをmixiに先駆けて実施してきたのがGREEだ。すでに、GREEではPC版もモバイル版も、GREEひとことというタイムライン上に、Twitter的なショートメッセージ機能を取り込み、Twitterの発言の同期を可能にしたほか、GREEのゲームのプレイ情報も、タイムライン上に混ぜて表示するようにしてしまった。
つまり、両者とも利用者同士のコミュニケーションのタイムラインという機能と、その周辺にあるゲームやソーシャルアプリの組み合わせという、世界市場でFacebookがMyspaceやTwitterを抑えこむのに成功した武器自体は手にしたわけだ。つまり、これからmixiとGREEは再び同じ市場で直接対決をすることになる。
個人的な視点から現時点で判断すると、日本でFacebookの地位を手にするのに近いのはmixiだ。利用者数こそ近い両者だが、周辺の話を聞いている限り、GREEを使っている人の目的はあくまでゲーム。ソーシャル性が強いアプリケーションが多いが、基本的には一人でプレイするのが前提で、ソーシャル性はおまけになっている印象が強い。どちらかというと、モバイル版オンラインゲームであり、実際の人間関係はmixiほどには反映されていないように見える。
ただ一方でいろいろ話を聞くと、学校のクラスではお互いにGREEでつながっているようだし、職場の同僚と釣りゲームをやっていたり、お互いにクリノッペをつっつきあったりというシーンもあるらしい。もしGREEが、これから再びリアルなソーシャルグラフをつなげるようなアプリケーションを出してきたら、現在のmixiの地位が安泰とはとても言えないのも事実。
mixiアプリの盛り上がりを見れば分かるように、一人でやっていてもつまらないアプリが、リアルのソーシャルグラフとつながると途端に盛り上がってしまうことがある。単純なゲームは、常に飽きられるリスクと背中合わせだが、ソーシャルグラフを制していれば、実はその上で流行るアプリは何でも良い。
大事なことは利用者のコミュニケーションのハブになっていることであり、Facebookの強さはここにあるといえる。現在のGREEの勢いを考えれば、当然このFacebook的ポジションを得るためにリアルのソーシャルグラフの取り組みは強化してくるはずで、mixiも黙ってはいないだろう。
いずれにしても、今年は日本のSNSの将来を占う上で、興味深い年になりそうだ。
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最近は、すっかりネット界の話題がTwitterに独占されている印象もあるが、個人的に日本のネットの今後を占う上で、特に注目しているのがmixiの動向だ。昨今のTwitterの盛り上がりもあり、あまりネットのイノベーター層の会話で取り上げられることが少なくなった印象もあるSNSだが、世界的にはとにかくFacebookの伸びが凄い。
あれだけTwitterが盛り上がっていると言われる米国の動向をGoogleトレンドで見てみると、実はTwitterの伸びは頭打ちになっていると言われる一方、Facebookは着実な伸びを示しているのだ。(もちろんTwitterはより携帯経由のアクセスが多いと思われるので、Googleトレンドの検索数だけでは一概に言えないが)
当然、日本においてこのFacebookの地位を確保するのに一番近いのはmixiということになが、Googleトレンドで検索数の推移を見る限り、話はそう単純ではない。
日本ではYahoo!が検索のシェアトップであることを考えれば、GoogleトレンドのデータはITリテラシーが高いTwitterと相性の良い層に偏っているとは思われるので、実際にはここまで接近していないと考えられるが、そのトレンドの違いは一目瞭然。いかに日本のmixi利用が携帯にシフトしていると言っても、mixiの今後に黄色信号が点灯していると考えられても仕方がないグラフだろう。
ただ、mixiに打つ手が無いわけではない。当然参考にすべきは、Twitterの勢いを押さえ込んでいるように見えるFacebookのTwitter対策だ。
例えば、FacebookにTwitterのフィードを転送しておくと、Facebookではコメントがつくとメールが来るため、自然とFacebookにログインする羽目になる。また、ひとつの発言へのコメントを他の人もまとめて見ることができるため、Facebook上の方がTwitterより議論が盛り上がることも少なくない。また、写真共有についてもFacebook上ではサムネイルがそのままタイムラインで見えるせいか、Likeによるリアクションが多いこともある。FacebookはTwitterとは異なる位置づけのタイムラインとして機能しているのだ。
日本のmixiとTwitterを比較して、「クローズドのSNSはダメ」とか「双方向の承認システムはだめ、Twitterの片方向のフォローの仕組みが良かった」と評する人もいるが、実際にはFacebookの順調な展開を見る限り、クローズドのSNSも双方向の承認システムもmixiの根本的な問題ではない。mixiがもともと持っていたはずの、友人の最新情報を知ることができるというパーソナライズポータル的なタイムラインの役割を、Twitterに奪われ始めているというのが問題なのだ。
mixi日記が登場した当時、ブログ的な日記を書くという機能と、友達の最新日記が見れるというRSSリーダー的な機能、さらに足跡機能で「日記」を見たという確認機能をひとつのサービスに統合していたのは実に革新的なアプローチだった。ただ、時代の中心がモバイルからの投稿に移るに従い、件名と本文という形式で日に1~2回更新される日記から、分単位で投稿するショートメッセージのマイクロブログ形式に世の中がシフトしつつある。日記を中心としたmixiのタイムラインは、更新速度の面でTwitter的なタイムラインにその地位を奪われつつあるのだ。
つまりmixiがFacebookのように、自らをTwitter並みのタイムラインシステムに変えることができるかどうか、というのが今後mixiがTwitterの勢いに対向できるかどうかのポイントになる。そういう意味で個人的に注目していたのが、1月6日にロゴも含めて実施されたmixiの大幅なリニューアルだった。ただ、現時点で見る限りmixiはまだFacebookほど大胆な方針変更には踏みきれていないようだ。
昨年12月10日に公開されたプレスリリース上では、「従来の、「日記」、「mixiアプリ」、ユーザーが参加している「コミュニティ」など、コンテンツごとに分類した更新情報に加え、「新着順」「マイミク別」の分類でも更新情報を見ることが可能となります。」と書かれていたため、いよいよmixiもFacebook的なタイムライン化を実施するのかと期待したのだが。現時点で見る限り、新着順のボックスにまとめられたのは写真程度で、アプリやコミュニティの更新情報はおろか、mixiボイスもあいかわらず別のボックスに表示されたままだ。
しかも更に悪いことに、デフォルトの表示はあいかわらず今まで通りのコンテンツ別の表示のため、おそらく多くの利用者が新着順で表示できる機能に気づいていないと思われる。
当然運営側の視点で見ると、アプリの更新情報やmixiボイスに混ぜてしまったり、Facebookのような新着順のフィード形式にすることで、現状の主力機能であるmixi日記ユーザーの混乱を招く恐れがあるというのが、mixi社内において最も議論を呼ぶポイントになるのだろう。
ただ、もしmixiのトップページが、利用者にとってそこさえ見ておけば友達の最新情報を知ることができるというタイムライン機能の優位性を失ってしまったら、結果的にmixi内の日記を読んでくれる人が減り、それに伴いmixi日記を書く人も減ってしまうことになる。
もちろん、Facebookと同じ対応をすることが必ずしも正解とは限らないが、mixiアプリを投入した現在、Twitter的な進行サービスに対抗する上でもmixiが何かしなければならないのは明白だ。
TwitterやFacebookが教えてくれているのは、利用者が見たいのは「日記」や「写真」など特定の機能のコンテンツではなく、自分がフォローしている相手や自分の友人の最新情報や行動だったという事実。実はその表現方法は必ずしも文章でなくとも良く、時には単なる位置情報やアプリの更新情報からコミュニケーションが始まることもある。
mixiにとって重要なのは、日記サービス提供事業者としての立ち位置を堅持することや、140文字のショートメッセージをやり取りする機能だけをコピーすることではない。利用者同士のコミュニケーションのハブとして機能し続けることだ。
是非日本最大のソーシャルグラフを保有しているmixiには、リスクを取って、日本ならではの新しいタイムラインの在り方にチャレンジして欲しい。そんなことを感じてしまうのは私だけだろうか。
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10月にサービス開始を明言して話題になったサイバーエージェントのTwitterクローンである「Amebaなう」が、12月8日に携帯版、12月10日にPC版と続いてリリースされた。
私自身、過去に個人ブログで「AmebaなうはTwitterにとって、かなりの強敵になり得るんではなかろうか」という記事を書いた経緯もあるし、この2社の今後の戦いはグローバルのデファクトスタンダードになっているサービスと、日本のネット事業者のサービスの戦いという意味でも興味深いので、実際にサービスを使っての感想をまとめてみたい。
Amebaなうの機能自体は、APIが公開されていないために外部アプリが全く存在しないことを差し引いても、メッセージの保存期限が1ヶ月だったり、フォロー数が500人で制限されていたり、一つ一つのメッセージのPermalinkが存在していなかったりと、正直Twitterとは比べるべくもない。
サービス開始初期に、かなり基本的なセキュリティのトラブルも発生するなど、システム面でのスケーラビリティだけでなく、セキュリティ面で懸念する声もある模様。現状においては、地球の神経システムを目指しているTwitterとは、ビジョンも思想も全く違うサービスだといえるだろう。
ただ、この点は開始してからまだ2週間もたっていないことだし、今後変更される可能性はあるので、現時点で評価するのは酷というものだ。
逆に、細かいAmebaなうの機能自体を見ると、日本人向けにTwitterの分かりづらい点をうまく修正してきている印象を受ける。@によるコミュニケーションを、Reというよりメールの返信に近い形にし、コメント一覧を手軽に表示できるようにしているし、投稿方法は面倒な印象があるものの画像添付ができるようになっているのも興味深い。日本のケータイ文化向けに絵文字に対応しているのも地味に重要なポイントだろう。
ただ、気をつけなければいけないのは、Twitterとの戦いにおいては、機能差というのは実はほとんど意味を持たないということだ。過去を振り返ってみると、「Twitterクローン」と言うのは、カテゴリとしての名称が存在する割には、完璧というほど類似サービスが駆逐されてきた歴史を持っている。
例えば、JaikuというTwitter類似サービスがあり、Googleに買収されて話題になったが2009年1月には開発を打ち切られているし、Diggの創業者であるKevin Roseが招待制で開始して話題をさらったPownceも2008年末に終了している。2008年の春にTwitterの再来と期待されたFriendFeedをもってしても、Googleトレンドの検索数は誤差に過ぎない。
ブログサービスが複数乱立する状況になったのとは、全く違う。Twitterのタイムラインは、非常に排他的なネットワーク効果を持つハブページとなっており、Twitterに人が集まれば集まるほど、他のサービスとの両立や、共存を難しくするのだろう。結局、Twitter的なタイムラインを持つサービスは、一人に一つで十分なのだ。
単純にサービス単体での機能を比較すると、Twitterに敗北したサービスは明らかにTwitterに機能で優っているようにみえる。だが、Twitterは早期にプラットフォームをオープンにすることで、サービスの魅力は外部の協力者のツールで補い、多様な利用者を早期に獲得してネットワーク効果を確立し、他者が追いつけない状況をつくりあげることで勝利を収めてきたのだ。
その視点で日本市場を振り返ると興味深いのは、実はAmebaなうを提供しているアメブロこそが、現在はブログ、特に携帯で閲覧し、更新するブログの分野でネットワーク効果を発揮しているサービスだという点だろう。当然、多数の芸能人ネットワークを保有するAmebaなうが、芸能人の間でネットワーク効果を発揮できる可能性も高い。
ただ、現時点では、話はそう簡単ではない。
ITmediaの記事によると、「Amebaブログを利用する著名人のうち200人以上がすでに利用しており、開始から1時間で1万人にフォローされた人もいる」とのことだが、実際にそれらの芸能人のAmebaなうを見ると、1時間で1万人にフォローされたらしいマオさんが記事執筆時点で15638人のフォロワーで、アメブロで殿堂入りしている辻希美さんでも8000人弱。現在、Amebaブログの芸能人・有名人総合ランキング1位の北斗晶さんも5000人台という状況。開始直後の勢いと比較すると、落ち着いてきている印象も強い。
特に注目したいのが、つぶやきの数だ。
辻希美さんが現時点で4件しかつぶやいていないのは論外としても、比較的つぶやいている北斗晶さんや押切もえさんでも一日1~2件程度。3名ともアメブロの方は、一日平均3~10件はアップしているのに、である。
ブログの「日」記に対して、Twitterは「分」記と呼ばれることもあるが、現状の芸能人におけるアメブロとAmebaなうに限って言えば、この状況は逆転してしまっているのだ。要するに、Amebaなうに参加している芸能人からすると、まだアメブロとAmebaなうの使い分けのイメージが出来ていないのだろう。
上述の個人ブログに以前書いたように、実はアメブロというのは携帯でいつでもどこでも更新できるというTwitter的なサービスだ。ある意味、日本のマイクロブログの先駆者だったといえる。
そもそもアメブロ自体をそうやってTwitter的に使っていた芸能人からすると、Amebaなうもアメブロも、現時点では利用目的が同じになってしまっている。そうなると、当然アメブロのほうが芸能人ランキングで上位になればメリットも大きいし、記事マッチと言う記事広告サービスで収入も見込めるのだから優先度として高くなってしまうのは当たり前。
つまり、Amebaなうにとって、最大のライバルはアメブロなのだ。
そういう意味で、Amebaなうが今後力をいれるべきは、アメブロと異なるAmebaなうならではの利用シーンを芸能人・有名人に対して強調していくことだろう。おそらく、そのヒントの一つはTwitterで成功している広瀬香美さんにある。広瀬香美さんは19万人以上のフォロワーを獲得しておリ、Twitterの女王の座を手にしたといえるが、すでに7月にTwitterを開始してから5ヶ月で7200以上のツイート数がある。つまり一日平均50回近くつぶやいている計算だ。
それを引き出しているひとつの要因が、勝間和代さんとの掛け合い。つまり芸能人・有名人同士の掛け合いなのだ。
現在のAmebaなうに登録されている芸能人は、ほとんどの場合数名しかフォローをしておらず、極端な場合はフォロー数が0人という人も多い。これではせっかくAmebaなうにログインしても、自分の発言しか見えないわけで、自分の独り言を不特定多数に向けて一方的に発信する、という芸能人ブログと使い方が全く同じになる。これでは、すべての利用者がフラットにタイムライン上に存在するという、Twitterクローンの特徴を芸能人に理解してもらえないだろう。
そういう意味では、Amebaなうで今後推進するべきは、芸能人に他の芸能人をフォローしてもらい、Amebaなう上で積極的に雑談をしてもらうようにすることだろう。
例えば鈴木杏さんのAmebaなうは、芸能人を中心に20人をフォローしておリ、一日に10件以上投稿している日もある上、他の人と何度かやりとりをしているようだ。鈴木杏さんの場合は、ブログの更新は一日一回程度というペースが決まっているようなので、その隙間のコミュニケーションにうまくAmebaなうがはまっているのだろう。そういう意味では、アメブロの人気ランキングに登場しないような芸能人の中に、Amebaなうの原動力になる芸能人がうもれている可能性が高いともいえる。
こうした芸能人同士のコミュニケーションがAmebaなう上で実施されるようになると、当然その芸能人のファンの人達は芸能人同士の可視化された楽屋トークをみに、Amebaなうに押し寄せることになるはずだ。
当然、Twitter Japan側が今後取り組むべきことは同じ。すでに原田知世さんが12月にTwitterを初めてフォロワーが8000人を超えるなど、Twitterに芸能人が多数流入してきそうな気配もある。そうなったら、Twitterが、アメブロにとっての強力なライバルになるのは間違いない。
そうなる前に、Twitterへの芸能人流入をAmebaなうが阻止できるかどうかは、まずAmebaなう自身が兄弟であるアメブロの影を乗り越えて、独自の存在意義を示せるかどうかがポイントになりそうだ。
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先週末の12月12日に、日本のネットコミュニティの恒例行事とも言える忘年会議2009が開催された。
忘年会議では毎年「究極のウェブ」を読者投稿から選んでいる。
過去の究極のウェブランキングでは、2004年の段階でmixiが1位に選ばれるなど、一般的な投票企画とは異なった一足先の未来を感じさせるツールがピックアップされるので有名だ。
残念ながら、忘年会議の開催は今年で最後になるため、究極のウェブランキングの発表も今年が最後になるようだが、最後にふさわしい独特のトップ10が発表されたので、ここで紹介しておこう。
(Photo by masakiishitani)
■2009年「究極のウェブ」ランキング
10位 Twitter
完全に2009年の顔となった印象もあるTwitterだが、あまりに当たり前ということでこの究極のウェブランキングでは10位に。当たり前になったサービスは上位に入れないのが、究極のウェブランキングのひとつの特徴というのがよくわかる結果に。とはいえ、日本においてもTwitterが今年の話題の中心だったことは間違いない。
9位 nanapi
7分以内でデキル!をキャッチフレーズに、生活をもっとハッピーにするテクニックを共有するライフレシピ共有サイト。ネットコミュニティで有名なけんすう氏が運営するロケットスタートが今年開始したばかりのサイトで、日本版Mahaloとでもいうべき雰囲気のあるサイトだ。
8位 テレビジン
2ちゃんねるのスレッドやブログ、Twitterなどの情報をもとに、現在進行形でテレビ番組の盛り上がりを可視化しているサイト。アジャイルメディア・ネットワークのエンジニアで、Twitterのつぶやきランキングサイト「Twitty」などのサービスも開発している福田一行氏が、個人で運営している。
7位 AppBank
大量のiPhoneのアプリケーションをレビューしているサイト。複数人で運営するグループブログ的な携帯で運営されており、個人で運営されているライバルブログに差をつけ始めている模様。今年のiPhoneアプリの盛り上がりを象徴させる受賞といえる。
6位 美人時計
360人の日本美人が手書きボードで現在時刻をお知らせする「1min自動更新時計サイト」。ウェブサイトだけでなく、iPhone版やiGooeleやMy Yahoo用のウィジェットなども提供されており、美男時計をはじめ、フランス・パリ版や美声時計等が計画されたり、企業とのタイアップも始まっている。月間PVは2億4000万を突破。
4位 Revilist
ISBNコードからAmazonのAPIを使ってレビューだけをひっぱるサイト。Amazonに比べてレビューだけを一覧して手軽に閲覧できる点が評価された。開発したのはたつをのChangeLogというブログを書いていて、様々な便利アプリを開発していることでもお馴染みのたつを氏。
3位 Joker Blog
過去にTechCrunchでもWISH2009での大賞受賞が紹介されて話題になった、ラジコンをネット経由で操作できるというJoker Racerのラジコンマネージャー「Akiko」さんが運営しているブログがランクイン。Joker Racerの話題の盛り上げに貢献している。
(Photo by masakiishitani)
2位 Lang-8
世界中のユーザーがそれぞれの言語でお互いの日記を添削しあうクラウドソーシング的な言語学習翻訳サイト。昨年開催された忘年会議2008の究極のウェブランキングでも5位に入賞していたが、あらためて2位に入賞。現在は月額10万円程度の売上しか上がっていないとのことだが、今回の受賞も含め、今年はWISH2009でもITmedia賞を受賞するなど、認知が高まってきており、来年のさらなる飛躍が期待される。
1位 モバツイッター
日本ではおなじみの携帯電話用Twitterサービス。Twitter Japanが公式の携帯版を開始するまでは、Twitterの公式サイトからもリンクが貼ってあったことでも有名で、利用者は15万人以上、ページビューももうすぐ月間1億PVに到達する見込みだそうだ。実は開発者のえふしん氏が一人で業務の時間外に運営しているサービスだった。
なお、開発者のえふしん氏は12月末で現在在職するPaperboy&coを退職し、モバツイッターをコアに独立するとのことなので、来年は本家との開発競争が激化するのかもしれない。いずれにしても、Twitter利用者にとっては良いニュースだろう。
(Video by masakiishitani)
本家のサービスであるはずのTwitterが10位で、Twitterの周辺サービスであるはずのモバツイッターが1位に選ばれるという、究極のウェブランキングならではの象徴的な結果となった。ただ、初期のTwitterユーザーからは、モバツイッターがなければ、Twitter黎明期に日本でここまでTwitterファンが増えることはなかったと言われることも多かったため、今回のランキングは、はからずもそれを証明した形になったと言える。
また、過去の究極ランキングで1位に選ばれたサービスは下記の通り。
2004年:mixi
2005年:はてなブックマーク
2006年:あとで読む
2007年:ニコニコ動画/時速ニコメートル
2008年:Dropbox
それぞれ現在となっては一般的なサービスと思われるものも多いが、マスメディアで取り上げられ始める前にピックアップされているのが特徴だ。そういう意味では、今回のランキングにも未来の日本のウェブを占う上でのヒントが含まれているかもしれない。
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すでに先週木曜日に発表され、話題が一巡した感もあるGoogle日本語入力。
本日、記者向けの説明会が行われ、詳細の説明が実施されたのでレポートしておこう。
記者発表会の様子は下記の動画にまとめてみたが、20%プロジェクトからスタートしたことやベータ版であることを強く強調しているのが特に印象的で、現在のところはGoogle Chrome OSとの連携や、Google Adsense等の広告ツールとの連携の話は全くなし。
対マイクロソフトの戦略的なツールと言う印象は、ほとんど受けなかった。実際、20%プロジェクトから始まったことを考えれば、そういう位置付けのサービスなのだろう。(もちろんGoogleのことだから、現在のところは、という注記つきではあるが)
]]>ウェブ連携サービスとしての特性や、既存サービスとの競合など、このサービスの可能性をめぐる議論の軸はいくつもあるが、個人的に興味深いのは今回のサービスがGoogle日本法人のチームが中心に、日本語という日本独自の市場に対して提供されたということ。
これまで、主にGoogleがリリースするサービスはグローバルでの展開が先にあり、それを日本語環境にローカライズするという展開が一般的。もちろん、Google日本法人もこれまで日本独自の展開はいろいろと実施してきていたが、ここまで明確に日本法人が主導で独自のサービスを打ち出してきたことはなかったように記憶している。
今回、それができたのは今回のGoogle日本語入力が、IMEという英語圏には不要のサービスだからという特殊性があるのは間違いない。
ただ、日本法人の業務というのは、Googleストリートビューをめぐる議論のように、とかくグローバル主導のサービスを日本市場にそのまま当てはめようとする際に発生する独特のハレーションをケアするのが主な業務になりがちなことを考えると、今回のGoogle日本語入力が持っている意味は案外大きいという印象がある。
当然日本独自のサービスであれば、利用者のフィードバックに対する反応も早くできるし、日本独自のニーズもより深く反映させることができる。
記者発表会当日には、現在のGoogle日本語入力の抱える誤変換や、卑猥な用語の露出に対する対策など、はやくも大企業が提供するサービスとしての厳しい質問が集中していたが、それらの懸念に対する対応も日本法人独自の方針で積極的に対応することが可能だろう。
これまでのGoogleは比較的日本の利用者との接点が少ないこともあり、日本で顔が見えない黒船として扱われてしまうことが多いように思う。それが、Google日本語入力のような日本独自の活動を通じてGoogle日本法人の開発チームの顔が見えてくれば、そういったイメージを変えていくきっかけにもなりうるかもしれない。
さらに個人的になるのは、IMEという英語圏以外における独特なサービスのおかれた特殊な立ち位置。
これは奇しくも、Google日本語入力の参入により新たな巨大なライバルとの競争をよぎなくされたジャストシステムの担当者が以前言っていた話でもあるし、記者発表会でGoogleの及川氏も言及していた話だが。
IMEというのは実はブラウザや検索ボックスよりも利用者の手前にあるサービスだ。
そういう意味では、IMEというのは英語圏以外における独特のサービスというだけでなく、英語圏以外のウェブ業界における隠れたキープレイヤーとなる可能性も持っている。
例えば、ATOKがチャレンジしているように、文字の入力中に単語の意味を確認したくなった場合、Google日本語入力から直接Googleのウェブ検索の結果を見せることもできるだろうし、Google日本語入力への何らかのキー入力をきっかけとしてアプリケーションやウェブサービスを直接呼び出すことも可能。Google日本語入力の展開の仕方によっては、OSやブラウザをバイパスしてウェブサービスとつなぐ手段になりうるのだ。
もちろん、現時点のGoogle日本語入力でそんな展開がほのめかされているわけでは全く無い。
ただ、今後、Google日本語入力が様々な形でGoogleの既存サービスとの連携を深めていけば、Google日本語入力をきっかけに、Googleの利用者やファンを増やし、日本市場に君臨するYahoo!との戦いにおける差別化要因になる可能性もある。そんな妄想を考えてしまうのは私だけだろうか。
]]>--------------------------------
昨日、NTT東日本の「待受情報配信サービス」と「光iフレーム(仮称)」という名称の、ネット対応デジタルフォトフレーム発表会にお邪魔してきました。
ネット対応のデジタルフォトフレームというと、ソニーが2008年5月に発表したVGF-CP1や、類似のカテゴリーとして米国のChumbyが有名で、NTTグループ自身も既に光フォトフレームなる商品を発売しています。
ただ、今回の光iフレームの注目は、NTT東日本が提供する「待受情報配信サービス」と呼ばれているネットワークサービスの一つの窓として提供されている点でしょう。
誤解を避けずにまとめるなら、デジタルフォトフレーム版i-modeとでも呼ぶべき構想です。
当面は、読売新聞やウェザーニューズ、ジョルダンなど、複数のコンテンツ事業者からニュースや転記、レシピなどの配信を行うようですが、有料コンテンツの情報料回収代行も想定しており、明らかにコンテンツの配信プラットフォームを目指していることが分ります。
日本はケータイでのネット利用が普及するのが早かったため、米国に比べるとPC普及率のわりに、家庭での固定インターネット利用時間は意外に低いのではないかという印象もあります。そう言う意味では、デジタルフォトフレームのようなシンプルな端末で主婦や高齢者など在宅時間が長い層のネット利用の啓蒙というのは意外に大きな市場の可能性もあります。
また、特に注目されるのは、Androidプラットフォームを採用している点。
日本においては、まだAndroid携帯はNTTドコモのHT-03Aしか発売されていないため、それほど大きく盛り上がってはいませんが、グローバルで見ると着実に伸びが見られているため、Android向けのアプリを開発する企業や開発者が増えることが当然想定されます。
当面は、ウィジェットと呼ぶコンテンツ配信が中心にはなるようですが、今後仕様が広く公開されるようであれば、携帯向けのアプリをこの光iフレーム向けに変更することで多様なアプリケーションを利用できる可能性がありえます。
記者発表会場でも、読売新聞の発言小町対応ウィジェットなどのデモが実施されていましたが、Twitterウィジェットや、mixiウィジェット、YouTubeウィジェットなどがあれば、かなり魅力的なのではないかという議論がなされていました。
個人的には女性がメインターゲットとのことなので、美人時計やAmebaピグとの連携も面白そうな気がします。また、将来的には、普段は机の上に置いてあるんだけど、外出時には電子ブックリーダーとしてKindleのように利用できる端末が出てくる可能性もあるかもしれません。
PCと携帯電話に続く家庭における第三のネット端末としては、これまでネット対応テレビからネット対応冷蔵庫まで、様々な可能性が議論されてきましたが、やはりテレビや冷蔵庫のような大型家電は頻繁に買い換える端末ではないことを考えると、普及速度に限度があります。
そう言う意味では、単価が2~3万円程度で購入できるデジタルフォトフレームサイズの端末というのは、実は第三のネット端末のダークホースになってくるかもしれません。
端末の仕様等についてはネタフルにまとまっていますので、こちらもどうぞ。
・[N] 「光iフレーム(仮称)」Android搭載ウィジェット対応デジタルフォトフレーム
それは会場からの日本でTwitter類似サービスが増えることによる影響について質問された際のいしたにさんの「ツイッターはユーザが育てた。そうしたユーザが簡単に他に移るとは考えにくい」という回答。
(詳細についてはこちらの記事をご覧下さい)
また、もう一つ話題が関連してて印象的だったのは、先日の私のツイッターとブログの比較記事に対して書かれた小飼弾さんの「#twitter と #blog の一番(大きく|見落とされる)違い」というブログ記事での「blogは引っ越せるが、TL = Timeline は引っ越せないのだ」という発言。
これらの意見には、個人的にも深く同意です。
Twitterはよくマイクロブログと表現されますが、正確にはブログのような記事のポスト機能だけでなく、RSSリーダー的なタイムライン機能を内包していて、この二つの組み合わせこそが、強力なネットワーク外部性を生んでいます。
Twitterにおいては、個人のつぶやき一覧の画面を見ることがほとんどない、という事実こそが、その象徴と言えると思います。
ちなみに、このポスト機能とタイムライン機能の組み合わせというのは、実はmixi日記も同じです。
SNSの黎明期、日記SNSとしてライバルだったはずのGREEや、キヌガサ、Yahoo Days等が、mixiと比較するとたいした数のユーザーを確保することができなかったのは、やはりこのネットワーク外部性により、コミュニケーションの場という存在をmixiに取られてしまったのが最大のポイントということができるでしょう。
だから、ブログのように事業者が乱立するのではなく、「SNS」というサービス総称よりも「mixi」という個別のサービス名称の方が有名という結果になるわけです。
自分が発言を書き込む画面に、相手の発言も出てくるからこそ、相手の発言を読む機会が増え、相手の発言を読む機会が増えるからこそ、お互いのコミュニケーションが活性化する。この組み合わせは、ネット上のコミュニケーションツールにおいて、かなり重要なポイントのように感じています。
Twitterは、まさにこのポスト機能とタイムライン機能がシンプルに結合した見本のようなサービス。
そう言う意味では、先日「「Amebaなう」はTwitterにとって、かなりの強敵になり得るんではなかろうか」という記事で言及した「Amebaなう」についても、いくら芸能人ネットワークを持っているとはいえ、既存のTwitterユーザーを奪うことが難しいのは、間違いないと言えるでしょう。
ただ、個人的に気になるのは、実はアメブロ自体が、このポスト機能とタイムライン機能をすでに内包しているという点。
実は外部から見ていると分りづらいですが、Amebaにログインすると、トップページに「チェックリスト」という項目で自分が講読しているブログの更新情報を教えてくれる機能があります。
つまりmixiのマイミク最新日記欄。
これは、昨年何人かの大学生に聞いたときに何となく感じた話ですが、一部の学生は明らかに、Amebaのログイン画面を芸能人ブログをチェックするためのリーダーとして使っているそうで。
暇なときに見に行くサイトの一つとして個別の芸能人ブログではなく、Amebaのトップページが選択されているようです。
アメブロでブログを書いている芸能人の最新情報を知りたければ、アメブロにID登録してトップページでチェックするのが楽なわけで、そこに人が集まっているからこそ、芸能人好きの読者に自分のブログを読んでもらいたい芸能人がアメブロにますます集中するわけで。
これまた、ここにもネットワーク外部性が明らかに働いているわけです。
個人的に、アメブロはもはや一般的な「ブログ」サービスではなく、MySpaceのようなオープンなSNSだと考えている理由がここにあります。
つまり、Amebaはやり方によっては、Twitterコミュニティとは異なるマイクロブログコミュニティを形成するポテンシャルは十分あると思うわけです。
特に既存のAmebaトップページに、Amebaなうの機能をFacebookのように組み込んでしまうと言うやり方は、シンプルに機能するように思います。
そう言う意味で、個人的に「Amebaなう」が、日本でTwitterと正面から対抗できる規模のサービスになりうる可能性として重要になるのではないかと思うのが、いわゆる「リアル」の利用者層の取り込み。
上記の図にも書きましたが、実は日本では「リアル」と呼ばれるマイクロブログが女子高生の間で普及しているらしく。
・『mixi』って何? 女子高生は『リアル』でSNSするのが常識 ? ロケットニュース24(β)
・女子高生がなかなかリアルからTwitterに移行しない理由
ようやく先日モバイル版をリリースしたものの、日本のケータイ対応が出遅れたTwitterはこのターゲット層で、リアルに大きく差を広げられているように見えます。
実際のユーザー層を考えれば、まぁ当然の結果と言えるでしょう。
ただ、このリアルの分野は、聞くところによるとCROOZリアルという事業者が強いものの、それほど明らかにカテゴリーキラーと言えるプレイヤーはまだ存在しない模様。
後発にも関わらず、ブログ事業者のトップを獲得することができたAmebaであれば、利用者の属性も結構重なりそうな印象もありますし、リアル事業者のトップを獲得するのは、かなり確率の高いことのように思えます。
ちなみに、メディアパブの先日の記事に出ていたデータでは、なんとグローバルのTwitterユーザーの66%が25歳以下の若年層だったりするそうなので。
*Twitterユーザーの年齢(ソース:Sysomos)
やはり、Twitterのような新しいコミュニケーションで重要なのは、こうした若い層を確保することのように思います。
もし「Amebaなう」が「Amebaリアル」的なサービスとしてリリースされて、多数の芸能人をてこに、この女子高生層を巻き取ってしまうことができたら、これからTwitterのユーザーになるはずの若い世代を抑えられてしまうわけです。
そもそも「Amebaなう」の「なう」って、もはやTwitterコミュニティにおける方言みたいなものだと思うのですが。
そうやって、あえてサービス名称に方言を入れてTwitterコミュニティに媚びを売ってみたところで、現在の友人とのコミュニケーションを中心にしたTwitterコミュニティに満足している層はわざわざ移転してきたりしないでしょうから。
芸能人の発言もまとめて読める「Amebaリアル」として、既存のTwitterコミュニティから縁遠い若年層を根こそぎ持って行く方に注力するのが、Amebaとしては確実な策のように思えたりします。
まぁ、湯川さんがこちらの記事に書かれているように「いずれツイッターやAmebaなうの「池」の中の魚も「海」に泳ぎ出ようとするだろうし、それを引き止める力はどんな大手ネット企業にもない。」と考えることもできますから、利用者としては何が流行ってくれても楽しくなれば一向に構わないわけですが。
この半年~1年のマイクロブログ界隈の動向は、将来の日本のマイクロブログ系サービスの展開を見る上で、かなり重要な期間になりそうです。
]]>全く同じ資料でプレゼンするのも問題ですし、実は資料を作ったときに力尽きて入れられなかったメッセージがあったので、今回の資料にいくつかスライドを追加してみました。
追加したのは「現在の日本のツイッターを巡る状況は、2004~2005年にかけてのブログブーム前の状況に似ているんじゃ無かろうか?」という話です。
プレゼン資料の前半に入れたように、現在の日本のTwitterは現状としては、まだ米国に比べると利用者数が圧倒的に違うので、現在の盛り上がり、特に日本のマーケティング業界界隈でのTwitterに対する期待感はちょっと現実と乖離しているとを感じることもたまにあります。
実際、人によっては、セカンドライフバブルに似ていると感じる方もいたりするようです。
ただ、2007年3月に私が初めてTwitterをレビューしてから今日まで日本のTwitterをみてきて最近感じるのは、Twitter界隈で始まっているいろんな出来事が、何となく2004年頃のブログブーム黎明期の出来事とシンクロしてきはじめているのではないかと言うこと。
例えば、Twitterに広瀬香美さんが参入して、3日も経たないうちに発生した「ヒウィッヒヒー」祭りは、眞鍋かをりさんが2004年6月にココログをはじめてから2週間ぐらいで巻き起こした「メガネっ娘」祭りを彷彿とさせます。
どちらも、一般ユーザーが中心だったコミュニティに、初めて芸能人が入ってきてくれて、直後に大きな話題を集めた出来事ということができると思います。
特に先日2004年9月のブログ開設から5周年を迎えたばかりのTIIDA Blogを運営している日産自動車が、東京モーターショーに期間限定で公式Twitterを活用しはじめたというのは、個人的には何か象徴的な出来事のような気がしてなりません。
(私の記憶が正しければ、TIIDA Blogも2004年当初は期間限定のプロジェクトとして始まったはずです)
もちろん、セカンドライフにおいても似たような企業の参入ラッシュはあったのですが、NAVERのおまとめマンとか、機能プレゼンされたYahoo!ショッピングのように、一定の利用者がついてきているのが1つの違いのように思います。
さらに、ツイッター本を初めとする最近の主にマーケティング向けのTwitter関連本の出版ラッシュも、2004年から2005年にかけておこったブログ本の出版ラッシュを思い出させるものがあります。
コグレさんといしたにさんのツイッター本は、なんと発売日から10日もたたないうちに3刷りが決まっているそうですし。
11月に出版されるらしいTwitter小説なんていうのを見ていると、Twitter版鬼嫁日記のようなエンタメ本が出てくるのも時間の問題ではないかと思ってしまったりします。
実際、こうやってTwitterとブログの日本における歴史を、順を追ってみていくと、意外なほどに日本へのTwitterの浸透の展開が、初期のブログのころと非常に似ていることが良くわかります。
どちらかというと、ブログで起こった出来事が、Twitterにおいてはかなり速いテンポで展開されているような印象です。
そうなってくると、気になってくるのは、当然、これから日本のTwitterにどういう出来事が起こるのかと言うことでしょう。
2004~2005年のブログの展開から、いくつか日本のTwitterで今後予想される出来事を書き出してみましょう。
■テレビ番組「ツイッター**」開始?
ブログの時には、2004年6月頃から芸能人がこぞってブログを書き始め、翌年の2005年4月に、フジテレビが「ブログタイプ」なるテレビ番組を開始しています。
米国でもTwitterとテレビの連携は進みつつあるようですが、Twitterのテレビとの相性の良さを考えたら、当然日本のどこかの局がTwitter連携企画を考えはじめても不思議ではないでしょう。
はたしてそれがTBSになるのか、昔のBlogTVの流れで東京MXだったりするのか・・・はたまた、サイバーエージェントさんが「Amebaなう」連携テレビ番組を企画する方が早かったりするかもしれません。
■広瀬香美 Twitter本(歌?)発売?
ブログの際にも、2005年8月に、ブログ開始から約1年経った眞鍋かをりさんが、自身のブログ記事をまとめた本を出版し、出版記念を兼ねて「眞鍋かをりさんをブロガーが囲む会」が開催されたりしました。自分も参加させて頂いたので良く覚えています。
実際には、すでに広瀬香美さんも勝間和代さんと共著で「つぶやく力」なる本を出したりする予定があるみたいですが、将来的には広瀬香美さんのTwitter上の面白い発言をまとめたつぶやき本が出る可能性があったりするんじゃないかと思ったりします。
(ひょっとしたら勝間和代さんが出す方が現実的かもしれませんが。)
■Twitter本のドラマ化?
2005年のブログブームの際に、非常に象徴的な出来事となったのが2005年10月に開始された「鬼嫁日記」のテレビドラマ化です。
Twitterの文字数制限を考えると、ドラマの素材にはなりにくいと思われる方もいるかもしれませんが、実際には鬼嫁日記の前に、2ちゃんねる掲示板を素材にした「電車男」が実例としてあるわけで、同じような企画がTwitter上で繰り広げられて書籍化経由でドラマ化、という可能性は十分にあるのではないかと思っています。
特に鬼嫁日記が、アメブロの人気ランキングから、人気ブログ認識→書籍化→テレビドラマ化というパターンで展開されたことを考えると、当然、サイバーエージェントさんからしたら、同じことを「Amebaなう」で仕掛けるべきでしょう。
■「ツイッター」が流行語大賞に?
上記のような流れから、「ブログ」は2005年に流行語大賞に輝いています。
代表して授賞式で受賞したのは鬼嫁日記の運営者カズマ氏でした。
今の日本におけるTwitterの現状からすると、さすがに流行語大賞受賞を想像できる人は少ないかもしれませんが、アメリカのように俳優や歌手が猫も杓子もTwitterという状況になれば、十分流行語大賞を取る可能性はあります。
ただ、Twitterの場合の問題は、ブログのときのように複数事業者が同じジャンルとしてサービスを提供しておらず、「Amebaなう」「mixiボイス」「GREEひとこと」に「リアル」まで、マイクロブログサービス名が乱立していることでしょうか。
■Twitterからツイッターへ。
まぁ、細々と妄想を書かせて頂きましたが、最も確かなことは、Twitterが日本でブレイクするためには、ブログが「Weblog」や「blog」から「ブログ」と変化して土着化したように、「Twitter」が「ツイッター」と呼ばれて土着化するようになることだと思います。
そう言う意味でも、コグレさんといしたにさんのツイッター本が、「Twitter」というタイトルではなく「ツイッター」というタイトルになっているのは、1つの象徴的な出来事なのではないかと思ったりします。
そんな風にいろいろ考えていくと、仮に現時点での日本におけるTwitterの盛り上がりにバブル的な側面があったとしても、最終的にはTwitter的なマイクロブログサービスが、ブログのように日本に定着していく過程が今始まろうとしているのかもしれないな、と思えてきます。
実際、2005年のブログブームも、バブル的な側面は多々ありましたが、その後ここまで普通な存在になるようになっているわけで。
新しいテクノロジーというのは、かならず一度は実体よりも期待が先行して盛り上がり、その後バブルが落ち着いた後に実際の普及が始まるものだったりしますから、Twitter的なサービスについても同じようなルートを辿るのかな、と。
そんなことを感じている今日この頃です。
※ちなみに、私が作ったプレゼンテーションファイルはSlideShareにメンバー登録すると、スライド上部の「Get File」というメニューからPDFでダウンロードすることもできますので、興味がある方は遠慮無くどうぞ。
サイバーエージェントがマイクロブログ(ミニブログ)サービスへの参入を発表して話題になっていたようですね。
(Twitter上で一番盛り上がっていたのは、Amebaなう発表自体よりも、サイバーエージェントの藤田さんが自ら「タイミングがわるい」と認める「オリジナルを創りだす」というタイトルのブログ記事がらみだったみたいですが。)
Twitterでは「Amebaなう」への批判的な意見が多かったような印象もありましたが、個人的には実はサイバーエージェントおよびアメブロが、日本のマイクロブログサービスでの成功に一番近い所にいるんじゃないかと思っています。
以前、「twitter night vol.3のプレゼン資料を間違えて作ってしまったので(涙)公開します。」という記事で紹介した、プレゼン資料を作っていたときにも思ったのですが。
アメブロは、Twitterが日本でカバーすべき二つの領域でバッティングします。
一つ目が下記の図で強調したかった、モバイルによるリアルタイムなコミュニケーションプラットフォームとしての陣取り合戦。
米国では、TwitterはiPhoneのブレイクと共に、モバイルで利用するメインのコミュニケーションプラットフォームの座を見事に射止めたわけですが。
実は、日本ではアメブロのような日記系ブログであったり、mixi日記であったり、いわゆるケータイで利用できるモバイルのプラットフォームがすでに普及しています。
この辺は、以前に「日本のウェブは遅れているのではなく、急速に進みすぎたのではないかという仮説」という記事でも書いたのと同じ話です。
mixi日記はクローズドという性質があるため、米国のFacebookとTwitterのように、ある程度マイクロブログとSNSで棲み分けが為される可能性はあると思います。
ただ、アメブロはTwitterと同じくオープンなコミュニケーションなプラットフォームですし、お互い主戦場はケータイでありモバイル。
間違いなく両社は正面衝突するコースの上に乗っているわけです。
メディアパブの下記の一連の記事を見ると分りますが、実は2009年初めのTwitterの米国でのブレイクは、ブリトニー・スピアーズのような著名人と、CNNなどのテレビ局がこぞってTwitterに力をいれ始めるのと、シンクロしています。
・メディア・パブ: Twitterが強力なニュースメディアに(その2)
・メディア・パブ: Twitterの異常なまでの成長、まだ続いている
・メディア・パブ: 100万フォロワー競争で一段と過熱化するTwitterブーム
これらの一連のブームの一つのピークとなるのが、上記の最後にある、俳優のアシュトン・カッチャーによる100万フォロワー獲得競争。
アシュトン・カッチャーというと、日本ではなじみがないかもしれませんが、あの「ゴースト」のデミ・ムーアの旦那と言えば、認知度の高さは伝わるでしょうか。
彼が「CNNのTwitterアカウントのフォロワーより先にフォロワー100万超えを達成したら、アトランタに住む(CNN創立者の)テッド・ターナーの豪邸に行って、ピンポンダッシュしてやる!」と宣言して、100万フォロワー獲得競争を実施したことで、Twitterは注目のピークをかざるわけです。
米国において、その後の「Twitter」というキーワードの検索数が、ほぼ横ばいになっていることからも、ここがいかに大きなピークであったかというのは良くわかると思います。
プレゼン資料でも、下記のようなスライドを作りましたが。
いまや、米国ではTwitterとテレビの連携も結構出てきているそうで。
結果的に、Twitterのグローバルのフォロワー数ランキングのトップは、ほとんど俳優や歌手が独占しているわけです。
で、実は日本でここが得意なのが、当然、6000人もの芸能人ブログを有するアメブロです。
米国の著名人は、いきなりTwitterがネットでの情報発信の入り口になっていた印象がありますが。
日本の芸能人は、すでにアメブロを中心とした芸能人ブログで、ケータイからの情報発信を実践しています。
おまけに、アメブロには「記事マッチ」のような芸能人ブログ向けの記事広告メニューもあり、いまや芸能人ブログ自体が一つの収入源の可能性として見えてきているのも事実。
アメブロのランキングの順位獲得自体が一つのテレビの番組の企画になってしまっていたりもしていますから、ある意味アシュトン・カッチャーのフォロワー獲得競争や、Twitterのテレビ番組連動みたいなものが、徐々にアメブロでも実施されていたりします。
Twitterが盛り上がっているからと言って、芸能人がいますぐTwitterに移るのは、実は結構ハードル高いんじゃないかと思うわけです。
で、今日の「Amebaなう」の発表になるわけですが。
shikeさんが「この発表のタイミングは、アメブロ芸能人Twitter流出へのをカウンターなのかな。」と言っていたので、なるほどなーと思ったのですが。
「Twitter流行ってるから、やった方が良いのかな」と浮き足立ち始めた芸能人を、
「アメブロでも、ちゃんと類似のサービスやりますから大丈夫ですよ」と引き留めるには、確かにこれで十分なように思います。
実際、すでに1割に当たる600人が参加表明をしているようですし、今回のリークで、さらに手を挙げる人は増えるでしょう。
日本のTwitter側も、当然芸能人のスカウトは強化してくるはずですから、どうなるかは分りませんが、現時点での利用者数とかいろいろ考えると、なかなか厳しい闘いになるはずです。
つまり、アメブロは、すでに「モバイル(ケータイユーザー)」と「芸能人(及びテレビ)」という、米国でTwitterが開拓した二つの分野を既に抑えているわけで。
グローバルで成功しているTwitterと、互角に戦いうる土俵にいるということもできるわけです。
まぁ、個人的にはTwitterユーザーなので、日本がマイクロブログでもガラパゴスにならないように、Twitterに頑張って欲しいですし。
「Amebaなう」というネーミングはいくら何でも無いだろとか(仮称なので変わると思いますが)。
Twitterのようにオープンに外部プレイヤーに公開してエコシステムを作るアプローチは取らないだろうAmebaで、総合的な使いやすさとか、コミュニティの盛り上がりは可能なのかとか。
実はTwitterのようなシステムは技術者にとって悪夢のような難しいシステムらしい(shikeさん経由モダシンさん談話)ので、本当に芸能人で大量にトラフィックが集まってしまった際に、サイバーエージェントさんの技術陣でしのぎきれるのかとか。
いろいろ疑問もありますし。
「Amebaなう」がどんな形のシステムとして出てくるのか。
単なるインスパイアなのか、二番煎じではない形になるのかも分りませんし。
そもそも本当に12月にリリースされるのかも、現時点では分らないわけですが。
この両社の闘いは、なかなか興味深いものになりそうな予感がします。
追伸
twitter night vol.3のセッション用に間違えて作ってしまったプレゼン資料ですが、いしたにさんとコグレさんのご厚意で「ネットPR大学「ツイッター 140文字が世界を変える」出版記念講座」でプレゼンさせて頂けることになりました。
プレゼン資料を既に公開してしまっていてネタバレしてしまってるので、今更プレゼンするのも恥ずかしいのですが。
メインプログラムで、Twitterを利用してる企業の事例とか、今回のツイッター本の裏話とかいろいろ聞けるみたいですので、ご興味のある方は是非どうぞ。
■お申し込みはこちら
ネットPR大学「ツイッター 140文字が世界を変える」出版記念講座
以前にもご紹介しましたが、IVSは、ベンチャーキャピタリストの方々や、様々なベンチャー企業の経営者の方々も来られていますので、そういう人たちにサービスを知ってもらいたい人には、特に投資を受けたいという人には、潜在投資化の人たちにまとめてプレゼンできる非常に良い機会になると思います。
申込は10月23日までになっていますが、定数に達し次第打ち切られる可能性がありますので、ご興味のある方はお早めにどうぞ。
なお、開催概要は下記の通りです。
名称:Infinity Ventures Summit 2009 Fall
開催日程:2009年11月中旬(非公開)
場所:フェニックス・シーガイア・リゾート
募集方法:招待制
参加予定人数:300-350名
主催:インフィニティ・ベンチャーズLLP
当日プレゼンをされる14名をご紹介しておきたいと思います。
■慶應義塾大学 ユビキタスコンテンツ・プロジェクト
■株式会社コニット
■サイドフィード株式会社
■三三株式会社
■ソニー銀行株式会社
■田口元
■株式会社ドレスファイル
■日産自動車株式会社
■株式会社ユーザーローカル
■ランゲート株式会社
■Akky AKIMOTO
■株式会社サンゼロミニッツ
■株式会社Cerevo
大学生などの個人やベンチャー企業からから大企業の担当者まで、非常に個性的なメンバーが揃っていますので、きっと皆さんの参考になるアプローチや視点が得られるのではないかと思います。
当日は、下記のUstreamでも中継される予定ですので、会場に来れないという方も是非ご覧下さい。
Live Video streaming by Ustream
開場後の18時半頃から中継が開始される予定です。
]]>WISH とは 「Web Innovation Share」の3つのキーワードから来ていて、
Web : ウェブに関連したサービスや端末で
Innovation : イノベーションを生み出してくれそうなものを
Share : 参加者全員でシェアする
というコンセプトのイベントになる予定です。
こちらのブログを読んでいただいているような方の中には、きっと面白いサービスや製品を開発されている方も多いと思いますので、ぜひ当日のプレゼンに応募頂ければ幸いです。
また、自分が開発しているサービスではないが、このサービスや製品にプレゼンしてもらえば盛り上がると思うというものがありましたら、下記のフォームからぜひ推薦してください。
■WISH2009プレゼン企業推薦フォーム
よろしくお願いします。
Smarter Planet(スマート化する地球)というのは、IBMが新たに設定したコーポレートビジョン。
単純に訳すなら賢くなる地球という所でしょうか。
IBMのコーポレートビジョンと言えば、これまでにも"e-business"や "on demand"など、時代を代表するキーワードを設定してきたことで非常に有名。
今回のSmarter Planetもブロガーズミーティングまで開催するぐらいですから、気合いが入っていることは間違いありません。
ただ、これがなかなか難解なのです。
まず、ウェブサイトにあるSmarter Planetの解説は以下の通り
「あらゆるものにトランジスタ、RFIDタグ、センサーなどが組み込まれて機能化される現在、それらを相互に接続することで、全てのモノやプロセス、働き方がインテリジェント化しています。
これは、さらなる効率化と対応力の強化につながり、ビジネス、社会、ひいては地球に進化をもたらす大きな可能性を秘めています。
大きな可能性を秘めた新たな動きで実現される世界、これがSmarter Planetです。
私たちは金融危機、気候変動など、大きな困難に直面しています。「スマート」になることで、新しい可能性を切り拓きませんか?」
シンプルに読むと、様々なものがインターネットに繋がることで、新しい可能性が拡がるよねという、インターネット黎明期から言われていたことの繰り返しのようにも読めてしまいます。
ただ、先日のTEDx Tokyoで見た社会企業的なプレゼンのいくつかであったり、IBMの丸山さんのエントリーで「21世紀社会における、競争から協調への価値観の変化を敏感に捉えていると思う」というフレーズを読んだりして、やっぱりSmarter Planetというビジョンはそういうことではないというのが、何となく分かってきた気がします。
もちろん、IBMもあくまで営利企業ですから、社会起業家的に理念だけが先に立ってこういう発言をするわけではないと思いますが、実際に技術の進歩により私たちはより複雑な問題を柔軟に解決できる能力は身につけているはずなのに、様々な無駄や問題がなかなか解決できていないという現実があります。
でも、そろそろネットやIT技術は、個人や企業とか小さなレベルの効率化や、改善を強化できるだけでなく、本当はそういった地球規模の根本的な課題に立ち向かうことができるようになっているのではないか?そういう意気込みが含まれているキーワードなのではないかというような気がしてくるわけです。
ライフハックに見られるように、ITやネットは個人の仕事や生活を効率的にしたり、楽にしてくれたりしてくれますし、当然、同じようなことは企業に対しても言えます。
Smarter Planetというコンセプトは、言うなればカントリーハックとか、プラネットハックとか、そういう規模で、ITやネットを活用して社会の構造を変えていくというというイメージで考えると少し身近になるのかもしれません。
日本語でスマートというと、どうしても賢いという側面だけでなく、やせてるとか、かっこいい的な文脈もあるので、なかなかIBMがもともと意図していたキーワードとして伝わるかどうか難しい印象もありますが。
ITがいよいよそこまで大きなことを捉えるべき時代に来たという意味で、1つチャレンジとしては興味深いキーワードのように思えてきました。
ちなみに、当日の詳細はIBM広報の栗原さんの記事に掲載されていますので、こちらをご覧下さい。
・地球をもっとスマートに:栗坊のマロン通信:ITmedia オルタナティブ・ブログ
なお、当日のプレゼンの一部をYouTubeにアップしてみましたので、興味のある方はどうぞ。