

新たな組織に不可欠となったのは、改革を後押しするための「情報共有」
地方独立行政法人静岡県立病院機構(以下「静岡県立病院機構」という。)は、平成21年4月に発足した。法人化以前は静岡県庁内にあった病院局を本部に、静岡県立総合病院・静岡県立こころの医療センター・静岡県立こども病院の3病院で構成され、県から独立法人化した団体だ。医療崩壊や医師不足など、日々変化している環境の中で、より迅速かつ柔軟に適応していくために自立性や権限強化を図る必要から、静岡県立病院機構という新たな団体が築かれたのである。
「世の中の環境の変化に対応するため、できるだけ自立的にいろいろなことに取り組みやすい、そういう組織にするために、地方独立行政法人にしたという経緯が背景にはあります。」と本部事務部経営戦略室長貫奈秀明氏。
その組織を支えるうえで必要となったのが、新たなグループウェア。
従来は各病院が個別にNotesを導入、利用していた。しかし、病院をまたいだ情報共有に、Notesは利用されていなかった。なぜなら、電話や定例会で最低限の連絡事項を各病院間で共有することで事足りていたからである。だが新たな組織では、機動性・柔軟性・業務の改善が必要とされる。それに伴い、組織内での情報共有の推進は大きな課題となり、その認識は大きく変わる。
病院での利用に必要だったのは、セキュリティと多彩な職員が使えること
選定の選択肢の中には、使い慣れたNotesという選択肢もあった。だが、サーバークライアント方式のために使用できるパソコンが限られており利用ユーザーを一部限定せざるを得なくなると判断し、断念した。Web型システムであれば、共有パソコンであっても、また、どこからであっても、ネットワーク内であれば手軽にアクセスできる。

Notesからアリエル・エンタープライズに移行することで、手軽なアクセスと堅固なセキュリティの両立が実現した。
「緊急連絡も、掲示板ですぐに一斉にできる。今まではほとんど紙ベースで連絡していたので、かなりのペーパーレスと事務量の削減です。経費ももちろん削減されることになりました。」と本部事務部経営戦略室参事大石裕章氏(以下「大石氏」)。
静岡県立病院機構は、医師・看護師・薬剤師・その他医療技術職員・事務職員など、様々な立場と就業形態の関係者を抱える。それぞれにとって必要な情報や機能の優先度、利用頻度は大きく異なる。その中で、静岡県立病院機構はアリエル・エンタープライズを選んだ。最も重要視する「より迅速に、必要な情報を集約でき、さらに使いやすいこと」、そのすべてを兼ね備えていたからだ。
病院というその性格上、果たすべき役割や遵守しなければならない制約もある。その大きなものが、セキュリティだ。病院外にメールを送信できる職員も、ごく一部に限られるなど、細かな規定に基づいてシステムも運営されることとなる。
「病院ですから、当然、個人情報やカルテや写真など、きちんと管理・制御しないといけないものがあります。」(大石氏)
そこで、個人情報に関わるデータについては、アクセス権設定を細かくすることで、その安全性を担保した。たとえば、あるデータを媒体で持ち出す場合には、事前の申請が必要だ。その際、申請内容についても、申請者本人と許可を出す側でしか、見られないように設定をしている。
「重要な情報が外に漏れてはいけませんから、たとえばUSBメモリを抜き差しすることにも許可がいるなど、しっかりと決めていることもあります。かなりセキュリティは厳しくしている状況です。」(大石氏)
人事給与システムとの連携が、効率化と利用度促進を生みだす
企業であれば、年2回程度に集約される人事異動が、静岡県立病院機構の場合、毎月相当数起きる。通常であれば、個々のシステムそれぞれでマスタの変更や更新を行うことが必要となるため、その手間は二重にも三重にもなる。そこで静岡県立病院機構は、人事給与システムとアリエル・エンタープライズを連携。人事給与システム上で人事情報をメンテナンスすれば、簡易な操作でアリエルにも反映されるようになった。これが管理負荷の軽減に大きく寄与している。
さらに、全職員が自分自身の給与明細をアリエル・エンタープライズから確認するしくみを整備。大幅なペーパーレス化につながった。
「人事給与と連携したことにより、共有パソコンでも自分のIDでログインして自分の給与明細を見ることができるようになった。それまでは、紙で全員に総務課の担当が配布していました。」と本部事務部経営戦略室杉山秀樹氏。
さらなる活用のため、アリエルに望むこと
まだ、情報共有へのとりくみは、始まったばかりだ。
だが、たとえば当初は院内でのやりとりもメールで行っていたものが、伝言メモ機能の利便性に着目したことにより、現在はその多くが伝言メモで行われているなど、着実に利用を進めている。
さらには、利用者の意見を吸い上げる体制も築きつつある。たとえば、各病院には、医師や看護師、メディカルスタッフや事務職員が集まる医療情報委員会が設置されている。「今まではこうなっていたが、このほうがいい」「他ではこうやってるみたいだけど、アリエルでこんなことできないか」など、討論がなされるという。
そんな要望を元にして、毎週、3病院と本部の担当者が集まる情報システム担当者会議で、あがってきた要望や内容を検討して、実現可能性を探っている。
今後、その風土や組織が変化していくにつれ、情報共有の意識も活発になる。 一方で、そういったしくみやしかけが、新たな静岡県立病院機構の色も生み出していくことだろう。

本部と3病院を結ぶ情報共有ネットワークは、これからも進化を続けていく。
