課題解決

BCP(事業継続計画)

多くの企業が1時間以内に安否確認できないという現実

阪神淡路大震災や米同時多発テロを契機に、多くの企業はBCPの策定を進めてきました。しかし、大手外資系リサーチ会社が行った「東日本大震災における事業継続管理に関する調査」によると、首都圏にオフィスがある企業数社をサンプルとして、「自分の部署あるいはチームの社員に対する安否確認を1時間以内で済ませることができたかどうか」を聞き取り調査した結果、ほとんどの企業・部門では1時間以内の安否確認が取れなかったのが実情であったなど、BCPが機能しなかったケースも多いといいます。

ここでは緊急時に機能不全を起こさないBCPを策定するために重視すべき点を、フェーズごとに見ていきます。

復旧グラフイメージ

【Phase 1:BCP発動】 通常利用しているコミュニケーション手段を有効活用

災害や事故の発生を検知してから、初期対応を実施し、BCP発動に至るまでのフェーズです。発生事象の確認、対策本部の立ち上げ、情報収集、基本方針の確認などを迅速に実施する必要があります。特に、社員の安否情報や遠方拠点の状況など、その後の復旧フェーズにおいて的確な判断を下すために必要な情報の収集は欠かせません。
緊急時の安否確認システムなど、BCP専用のツールを用いて対策を講じている企業も多いですが、緊急時、通常は利用していないシステムを立ち上げるなど、通常行わないオペレーションを実施するとミスが生じるケースが多くなります。また、前述の調査によると、「震災時の手順や対応策を記したマニュアルは機能しなかった」という指摘もあり、詳細なマニュアルを整備しても、平時に実施していない手順を踏むことは困難であることが分かります。
このことから、緊急時の情報把握を円滑に行うためには、平時に利用しているシステムや情報共有手段を上手く活用することが適当であることが分かります。グループウェアやポータルなど、平時に利用している情報共有システムのUIや利用手順を踏襲し、利用者が平時の情報共有手段の延長線上に緊急時の情報共有を位置づけることができる体制を整備することが、混乱防止につながります。

【Phase 2:業務再開】 ホームオフィス、拠点分散だけでは不十分

ここでは、最も緊急度の高い業務を再開します。事務所の倒壊や交通網の寸断、パンデミックなどにより本社や生産拠点などがその機能を失う場合があるため、在宅勤務や拠点分散などの代替手段を準備しておくことが必要です。しかし、単純に自宅や他拠点に業務環境を整備するだけでは、不十分です。ネットワーク環境やセキュリティ設定の違いなどにより、うまくつながらないなど、想定外の事態が生じるケースが多いからです。平時から代替手段を積極的に活用し、その利用に慣れておくことが、万全な対策と言えます。
また、想定外の事態に対し、経営陣がどこからでも迅速に判断を下すことができるフローの整備、組織に指示命令を行き渡らせるコミュニケーション手段の確保までを総合的に準備することが重要です。

【Phase 3:業務回復・復旧】 現場の混乱に配慮した慎重な判断が必要

最も緊急度の高い業務や機能が再開された後は、さらに業務の範囲を拡大するフェーズに入ります。代替設備や手段を継続して利用しながら業務範囲を拡大するため、現場の混乱に配慮した慎重な判断が必要とされます。
その後、代替設備・手段から平常運用への切り替えが完了した段階では、社員のメンタルケアや、ボランティア派遣・支援物資送付・義援金などの社会貢献に関する動きを検討する必要があります。これらの効率的な実施についても、BCPの一環として考慮しておくことが重要となります。

【Phase 4:継続的な改善】 制度の形骸化防止こそが、最重要課題

BCPの目的は、言うまでもなく通常業務への早期復旧です。しかし、そこで終わりにせず、制度の形骸化を防ぐため、継続的な改善を実施することこそが重要です。この復旧後の改善までを含む全フェーズが円滑に行われるような人員体制・マニュアル・情報システムが、機能不全を起こさないBCPの実現には必要不可欠です。しかし、BCPを策定したきり、まったく改善を実施していないケースも少なくありません。特にシステムは、製品によっては継続的な改善が困難なケースも多く、課題が浮上しているにもかかわらず、改善されないまま放置されてしまうことも多いです。このようなことを防ぐため、システム選定時においては、緊急時の利用シーンだけでなく、その後の継続的な改善を想定することが重要となります。

BCPの形骸化