この記事は、TechCrunch Japanに投稿したものです。
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先日、mixiがFacebookのようなタイムラインを導入するべきではないかという記事を書いたが、この視点で日本のSNS市場を見た上で、当然もう一つ忘れてはいけないプレイヤーがいる。それがGREEだ。
mixiとGREEというのは、そのサービスの開始時期や生い立ちが非常に似ていることもあり、サービス開始から6年がたとうしている今でも、直接的なライバルとして比較されることが多い。SNSというサービスのくくりからも、それはある意味当然と言えるだろう。
ただ、現時点においては、mixiとGREEは本質的には全く違うサービスと考えた方が良い。その利用者数こそどちらも1500万を超え、ある意味日本のネットのインフラ的サービスという印象のある数になってきているが、基本的なサービスの使い方を聞く限り、実際の利用者の意識は大きく異なるようだ。
誤解を恐れずに言い切ると、mixiがいわゆる人と人の関係性を表すソーシャルグラフを押さえ、利用者同士のコミュニケーションのインフラとして機能しているサービス。一方、GREEは、グリゲーに代表されるようにソーシャル性をもったアプリやゲームを楽しむためのサービスだ。いわゆるソーシャルグラフを元にしたコミュニケーションサービスとしての競争に、GREEは一度mixiに敗れた経緯がある。(私自身、5年半前のmixiとGREEの激しい利用者数競争においては、GREE派だった過去がある)
その後、GREEはモバゲーの成功を参考に、モバイル向けのゲームを中心にしたサービスに大転換を実施。アイテム課金をてこに見事な成功を収めて、一度敗北したmixiを時価総額でも抜き去った。これが、良く語られるmixiとGREEの競争の歴史だが、このように文章で書くと単純に直線での競争でmixiとGREEが競っているように聞こえてしまうだろう。
しかし実はmixiとGREEはこの5年で全く異なる領域に到達しているのが現実だ。イメージとしては下記のような感じだろう。
GREEの主戦場は最初のCMにあったように、「金はないけど暇はある」人たちのひまつぶしゲーム市場であり、ライバルは明らかにモバゲーだ。その市場はいわゆる古き良き「SNS」というよりは「モバイルSNSゲーム」とでも呼ぶべき市場であり、mixiは直接のライバルではない。そういう意味では、一年前の段階では私は「もうmixiとGREEを比較するのはやめた方が良い」論者だった。
ただ、その状況がこの半年大きく変わろうとしている。
mixiがmixiアプリ、特にmixiモバイルでのアプリを開始したことにより、明らかにmixiはモバイルSNSゲーム市場に足を踏み入れることになった。現在のmixiモバイルのメニューの並び順を見ると、mixiモバイルアプリのショートカットがmixi日記の上に置いてあるぐらいで、個人的にはmixiアプリに入れ込みすぎてmixi日記閲覧者が減ってしまうのではないかと心配してしまうぐらいの力の入れようだ。
一方、先日のmixiタイムライン記事で書いた、Facebook的なタイムラインのアプローチをmixiに先駆けて実施してきたのがGREEだ。すでに、GREEではPC版もモバイル版も、GREEひとことというタイムライン上に、Twitter的なショートメッセージ機能を取り込み、Twitterの発言の同期を可能にしたほか、GREEのゲームのプレイ情報も、タイムライン上に混ぜて表示するようにしてしまった。
つまり、両者とも利用者同士のコミュニケーションのタイムラインという機能と、その周辺にあるゲームやソーシャルアプリの組み合わせという、世界市場でFacebookがMyspaceやTwitterを抑えこむのに成功した武器自体は手にしたわけだ。つまり、これからmixiとGREEは再び同じ市場で直接対決をすることになる。
個人的な視点から現時点で判断すると、日本でFacebookの地位を手にするのに近いのはmixiだ。利用者数こそ近い両者だが、周辺の話を聞いている限り、GREEを使っている人の目的はあくまでゲーム。ソーシャル性が強いアプリケーションが多いが、基本的には一人でプレイするのが前提で、ソーシャル性はおまけになっている印象が強い。どちらかというと、モバイル版オンラインゲームであり、実際の人間関係はmixiほどには反映されていないように見える。
ただ一方でいろいろ話を聞くと、学校のクラスではお互いにGREEでつながっているようだし、職場の同僚と釣りゲームをやっていたり、お互いにクリノッペをつっつきあったりというシーンもあるらしい。もしGREEが、これから再びリアルなソーシャルグラフをつなげるようなアプリケーションを出してきたら、現在のmixiの地位が安泰とはとても言えないのも事実。
mixiアプリの盛り上がりを見れば分かるように、一人でやっていてもつまらないアプリが、リアルのソーシャルグラフとつながると途端に盛り上がってしまうことがある。単純なゲームは、常に飽きられるリスクと背中合わせだが、ソーシャルグラフを制していれば、実はその上で流行るアプリは何でも良い。
大事なことは利用者のコミュニケーションのハブになっていることであり、Facebookの強さはここにあるといえる。現在のGREEの勢いを考えれば、当然このFacebook的ポジションを得るためにリアルのソーシャルグラフの取り組みは強化してくるはずで、mixiも黙ってはいないだろう。
いずれにしても、今年は日本のSNSの将来を占う上で、興味深い年になりそうだ。