« 2009年5月 | メイン | 2009年7月 »

2009年6月30日

Smarter Planet (スマート化する地球)構想に思う、進化したITやネットが実現できること

 3月にIBMさんで開催されたSmarter Planetをテーマにしたブロガーズミーティングにご紹介頂きました。
 実際のイベント開催から大きく日があいてしまったのですが、先月参加してきたTEDx Tokyoや、最近のSmarter Planetに関する特集記事とかを見ていて、ようやく考えがまとまってきたので、メモしておきたいと思います。

smarter_planet2.png

 Smarter Planet(スマート化する地球)というのは、IBMが新たに設定したコーポレートビジョン。
 単純に訳すなら賢くなる地球という所でしょうか。

 IBMのコーポレートビジョンと言えば、これまでにも"e-business"や "on demand"など、時代を代表するキーワードを設定してきたことで非常に有名。
 今回のSmarter Planetもブロガーズミーティングまで開催するぐらいですから、気合いが入っていることは間違いありません。

 ただ、これがなかなか難解なのです。

 まず、ウェブサイトにあるSmarter Planetの解説は以下の通り

smarter_planet1.png

「あらゆるものにトランジスタ、RFIDタグ、センサーなどが組み込まれて機能化される現在、それらを相互に接続することで、全てのモノやプロセス、働き方がインテリジェント化しています。
 これは、さらなる効率化と対応力の強化につながり、ビジネス、社会、ひいては地球に進化をもたらす大きな可能性を秘めています。
 大きな可能性を秘めた新たな動きで実現される世界、これがSmarter Planetです。
 私たちは金融危機、気候変動など、大きな困難に直面しています。「スマート」になることで、新しい可能性を切り拓きませんか?」

 シンプルに読むと、様々なものがインターネットに繋がることで、新しい可能性が拡がるよねという、インターネット黎明期から言われていたことの繰り返しのようにも読めてしまいます。


 ただ、先日のTEDx Tokyoで見た社会企業的なプレゼンのいくつかであったり、IBMの丸山さんのエントリーで「21世紀社会における、競争から協調への価値観の変化を敏感に捉えていると思う」というフレーズを読んだりして、やっぱりSmarter Planetというビジョンはそういうことではないというのが、何となく分かってきた気がします。


 「スマート化する地球」と日本語で書くと、技術の進歩とかいろいろなものが発展したすれば、結果的に地球がスマート化する「だろう」という未来予想風に感じてしまうわけですが。
 今回の「Smarter Planet」というキーワードは、IBMが世界に向けて一緒によりスマートな地球を創ろう、と呼びかけているという自ら作り出すという意思の表れと捉えるべきでしょう。

 もちろん、IBMもあくまで営利企業ですから、社会起業家的に理念だけが先に立ってこういう発言をするわけではないと思いますが、実際に技術の進歩により私たちはより複雑な問題を柔軟に解決できる能力は身につけているはずなのに、様々な無駄や問題がなかなか解決できていないという現実があります。

smarter_planet3.png

 でも、そろそろネットやIT技術は、個人や企業とか小さなレベルの効率化や、改善を強化できるだけでなく、本当はそういった地球規模の根本的な課題に立ち向かうことができるようになっているのではないか?そういう意気込みが含まれているキーワードなのではないかというような気がしてくるわけです。

 ライフハックに見られるように、ITやネットは個人の仕事や生活を効率的にしたり、楽にしてくれたりしてくれますし、当然、同じようなことは企業に対しても言えます。
 Smarter Planetというコンセプトは、言うなればカントリーハックとか、プラネットハックとか、そういう規模で、ITやネットを活用して社会の構造を変えていくというというイメージで考えると少し身近になるのかもしれません。


 日本語でスマートというと、どうしても賢いという側面だけでなく、やせてるとか、かっこいい的な文脈もあるので、なかなかIBMがもともと意図していたキーワードとして伝わるかどうか難しい印象もありますが。
 ITがいよいよそこまで大きなことを捉えるべき時代に来たという意味で、1つチャレンジとしては興味深いキーワードのように思えてきました。


 ちなみに、当日の詳細はIBM広報の栗原さんの記事に掲載されていますので、こちらをご覧下さい。

地球をもっとスマートに:栗坊のマロン通信:ITmedia オルタナティブ・ブログ


 なお、当日のプレゼンの一部をYouTubeにアップしてみましたので、興味のある方はどうぞ。


2009年6月16日

「グーグルの女王」マリッサ・メイヤー氏が語るグーグル検索の進化の方向性

 昨日、光栄なことにグーグルさんの定例説明会に呼んで頂きました。

 通常は、記者の方だけを招待して開催しているものだと思うのですが、今回は本社から検索担当副社長マリッサ・メイヤーさんが来るということで、特別に何名かブロガーも招待して頂いた模様。

marissa_mayer0.png

 個人的にも、以前ロバート・スコーブルか誰かのビデオポッドキャスティングで、マリッサ・メイヤーさんの対談を聞いて、すっかりファンになってしまった人間なので、非常に貴重な機会でした。


 なにしろ、マリッサ・メイヤーといえば、グーグルに入社した最初の女性エンジニアであり、現在は検索製品とユーザーエクスペリエンス担当の副社長。
 「グーグルの女王」とか、「製品帝王」とか、といったニックネームで呼ばれることも多いほどで、勝手にグーグルでも5本の指に入る有名人ではないかと想像しています。
(詳細についてはこちらの記事に詳しいです。)

 しかも、これだけの肩書きを並べると、さぞかし皆さんはカーリー・フィオリナ的な男性社会で百戦錬磨の女性を思いうかべてしまうと思いますが、実はマリッサ・メイヤーさんの生まれ年は1975年。
 グーグルイメージサーチの結果を見て頂ければ分かるように、実にチャーミングな女性だったりします。

marissa_mayer1.png

 「天は二物を与えず」というのはウソっぱちだなと思ってしまう瞬間です。


 とまぁ、そんな話はおいといて。
 今回は、そのマリッサ・メイヤーさんがグーグルの検索の方向性を語ってくれたわけです。

 全体の流れについては既に、各所で記事になっていますのでそちらを見て頂ければと思いますが。

「つぶやき検索もユニバーサル検索の中に」グーグル本社VP マリッサ・メイヤー氏:ニュース - CNET Japan
グーグルが目指す検索の進化は「簡単な入力」と「パーソナライズ」、Twitter検索も対応へ:日経ビジネスオンライン
[N] Google検索担当副社長マリッサ・メイヤー定例説明会【リアルタイム更新】
[N] Google検索担当副社長マリッサ・メイヤー定例説明会【まとめ】

 率直な印象としては、それほど派手さのあるアピールはなく、1つ1つは比較的小粒なサービスを着々と機能強化している印象が強くあります。

 ただ、個人的に感じたのは、それこそ現在のグーグルだからこそ取れる戦略なんだろうな、ということ。

 特にプレゼンのなかでもユニバーサル検索が強調されている印象がありましたが、グーグルとしてはとにかくこれまで通りシンプルな検索ボックスから検索を始めてもらうことこそが重要で、そこから全てのコンテンツに到着してもらう、ということがシンプルに戦略として共有されている印象があります。
 
 例えば、個人的に感心したのがGoogle Suggest2.0。

marissa_mayer_suggest.png

 要は候補リストのなかに、候補サイトのURLを表示してそのまま直接そのサイトに飛ばしてしまうと言うシンプルなモノですが、検索クエリーの多くがいわゆるデスティネーションクエリーというウェブサイト自体を探しているものであることを考えると、これは案外便利な気がします。

 他にも音声検索だったり、関連画像検索だったりと、単体で見ると地味なようですが、真面目に利用シーンを考えると結構便利そうな機能が多いのが、個人的には特に印象的でした。


 確かに最近はMicrosoftのBingのリリースとか、Twitterのリアルタイム検索の話題もあり、検索シェア争いにちょっとした刺激が投下されている感じはありますが、利用者からすると検索エンジンを乗り換える行為というのは意外に敷居が高い行為なので、Googleが着実に検索結果を改良してくれていっているという安心感があれば、ほとんどの人はなかなかBingのような新興の検索エンジンには乗り換えないでしょう。

 もちろん、だからといって、そこにあぐらをかいていたら、いつの間にか他社に抜かれているという可能性はあるわけですが、今回見せて頂いたプレゼンを見る限り、検索の機能のさまざまな方向性に対し、着実に手を打っているグーグルの姿が見て取れる気がします。

 ということで、当日のプレゼンの様子を動画に撮ってみましたので、興味のある方は是非ご覧下さい。

■Part1

■Part2

 グーグルジャパンの製品開発本部長である徳生さんによる逐次通訳になっているので、英語の苦手な方も大丈夫です。


 ちなみに、個人的に気になるのはやはりグーグルの日本における今後の展開の方向性。
 米国における検索のシェアで見ると、グーグルはダントツのトップですから、上記の通りの着実なサービス展開で良いわけですが。
 日本においては、グーグルがヤフーとの対決に苦戦しているのもこれまた事実。
 
 現在のシェアの膠着状態を見ている限り、単純な機能強化ではこの差を縮めるのはなかなか難しい印象もありますので、日本では何かしらグーグルの検索ボックスを普段使っていない人に使ってもらうための手が必要な気がします。
 最近は、特に学生層においてはグーグルが猛追しているという噂もあるので、そのあたりも含めて、グーグルが今後どのような手を打ってくるのかというのは是非注目したいところです。

※ちょうどGoogle Japan Blogで、フィードバックの機能をアピールするエントリーもアップされていましたので、グーグルの日本展開にアドバイスしたいという人はこちらから投稿してみるのもありかも?

2009年6月 1日

Oracle OpenWorld Tokyoに見る、企業のソーシャルメディア活用の形

 先日開催されたOracle OpenWorld Tokyoにブロガー枠でご招待いただきました。
 すっかりレポートが遅くなってしまいましたが、当日の感想をご紹介しておきたいと思います。

oracle_open_world3.png

 正直なところ、私自身はエンタープライズシステム分野は素人に近いですので、Oracle Open Worldの細かい講演自体は完全に対象外の人間です。
 ということで、参加させて頂いたのはオラクル・コーポレーション社長のチャールズ・フィリップス氏による基調講演。

 もともとは、ラリーエリソン氏の講演枠だったのが残念ながら変わってしまったのですが、先日のサンマイクロシステムズ買収の影響だったようですね。

oracle_open_world4.png

 当日の講演内容自体はこちらの記事に詳しく出ているので、そちらを見て頂くとして。


 今回参加させて頂いて非常に印象的だったのは、Oracle Open World自体のソーシャルメディア活用の充実ぶり。
 ざっと並べて見るとこんな感じ。

Oracle OpenWorld Tokyo Blog (公式ブログ)
Oracle OpenWorld Tokyo 2009 - Oracle Wiki (Wetpaitを使った公式Wiki)
Flickr: Oracle Technology Network Japan's stuff  (Flickrによるフォトアルバム)
YouTube - OpenWorldTokyo2009 さんのチャンネル (YouTubeの公式チャネル)
OpenWorldTokyo (OpenWorldTokyo) on Twitter (公式Twitterアカウント)

 公式ブログがあるだけでも珍しいと思いますが、YouTubeやTwitterまで活用されるというのは、手間とかいろんなことを考えると、本当によくぞここまで、と感心したくなりますね。
 
 さらには、ちょっとアカウントが見つけられないのですが、当日の基調講演も広報の方がUstreamでライブ中継されていましたし、各種講演資料を公式サイトからダウンロードすることもできるようになっており、まさにOracle OpenWorldというタイトル通り、これ以上ないぐらい「オープン」なイベントになっていました。


 また、今回私がブロガーとして招待されていたように、ブロガーに対する扱いも破格。

oracle_open_world2.png
 
 ご覧の通り、プレスルームまで用意して頂ける上に、専用のプレス/ブロガー席が用意して頂けていたり、講演中に特別に撮影が許可されていたりという厚遇ぶりで、ブロガーもすっかりプレスと同様の扱いをして頂けるという状態でした。

 日本の大企業で、ここまで組織だったソーシャルメディア活用の対応をしている会社には、なかなか出会うことが難しいのではないかと思います。


 オラクルというとデータベースとか、エンタープライズというイメージが強く、ビジネスマンであっても一般の利用者からするとちょっと遠い存在だったりします。

 ニュースとして取り上げられるのも、専門の媒体が中心で一般の媒体に取り上げられる機会が少ないという印象もありますし、特に日本においては一般の認知度は低いイメージがありますから、そのあたりに対する危機意識も、今回の取り組みに強く反映されているような印象です。

oracle_open_world5.png↑なんとOracleストアでオラクル犬のぬいぐるみまで発売されていたり・・・

 ちょうど先日News2uさんのネットPR実態調査のリサーチ結果が出ていて、下記のようなアンケート結果も公表されていましたが。

2008_34.gif

 オラクルさんは、このブログ読者を重視している16%の少数派の、先陣を切っている会社の一つと言って間違いないでしょう。


 オラクルというと、何と言っても次々に実施される買収戦略という意味で目を離せない会社ではありますが。
 今回のようなソーシャルメディアの活用術という意味でも、目が離せない会社と言えそうです。

 イベントの講演資料等はサイトからダウンロードができるようですので、ご興味がある方は是非どうぞ。
oracle_open_world1.png

   

mini-banner-fix.gif

プロフィール


アリエル・ネットワーク
ブロガー 徳力基彦

Lijit Search

アーカイブ

   
Notes移行に
アリエル・エンタープライズ

スケジュール管理・
プロジェクト管理に

アリエル・マルチスケジューラ

 
Loading...