2010年5月26日

もはや、日本でタイムマシン経営を成立させるのは無理か

この記事は、TechCrunch Japanに投稿したものです

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先日ジオメディアサミットに、急遽パネリストとして参加する機会があった。当日の詳細は、下記のTechWaveのレポートに掲載されていたUstream配信のアーカイブをご覧頂ければと思うが、そのパネルセッションで出たgumiの国光さんの発言で興味深かったのが、「もう日本でタイムマシン経営は無理」という発言だ。

タイムマシン経営というのは、ソフトバンクの孫さんがネットバブルの頃に唱えていたキーワード。アメリカの最先端事例をコピーして日本にすぐに持ってくれば、アメリカと日本には数年の時差があるのでそれによってあたかもタイムマシンで未来からサービスを持ってきたかのごとく、サービスを成功させることができるというコンセプトだった。

ネットバブルの時代には、米国Yahooを参考にしたヤフージャパンの成功を筆頭に、イートレード証券など、複数の米国の成功モデルが日本に持ち込まれたし、実際その後の日本のネットベンチャーの成功には、米国の成功モデルをブランドごと輸入して日本法人を立ち上げるパターンや、米国の成功モデルを日本向けにコピーしたサービスが多い。

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2010年4月 2日

日本でFacebookがブレイクするために必須と思われる5つのポイント

この記事は、TechCrunch Japanに投稿したものです

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先月、日本でFacebookの地位を獲得するのは、mixiかGREEかという記事を書いたが、その記事への反応として想像以上に多かったのは、日本でもFacebookがmixiやGREEを抜いてトップの地位を獲得するのでは?という反応だった。

現在のグローバルでのFacebookの勢いを考えれば、当然そういうシナリオも考えられるが、個人的にはmixiやGREE等の既存の国内SNSがよっぽど展開を失敗しなければ、そのシナリオは難しいのではないかと考えている。

グローバルで圧倒的首位を占めるサービスが、日本において意外に苦戦すると言うのは今に始まった話ではない。世界最大手のオークションサイトであるeBayも、2002年に日本から撤退した過去を持っているし、米国でダントツの検索シェアを誇るGoogleも日本ではヤフージャパンの後塵を排し続けている。

SNSの世界においても、ソフトバンクが出資して鳴り物入りで設立されたMyspace日本版が、現在のところも日本での認知向上に苦しんでいる印象が強い。

特にSNSにおいては、いわゆるネットワーク効果が他のサービスよりも更に強くはたらいてしまうため、すでに特定の世代でコミュニケーションインフラになっている国内のSNSを、これからFacebookがひっくり返すのは容易なことではない。

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2010年2月 9日

日本でFacebookの地位を獲得するのは、やっぱりmixiか、それともGREEか。

この記事は、TechCrunch Japanに投稿したものです

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先日、mixiがFacebookのようなタイムラインを導入するべきではないかという記事を書いたが、この視点で日本のSNS市場を見た上で、当然もう一つ忘れてはいけないプレイヤーがいる。それがGREEだ。

mixiとGREEというのは、そのサービスの開始時期や生い立ちが非常に似ていることもあり、サービス開始から6年がたとうしている今でも、直接的なライバルとして比較されることが多い。SNSというサービスのくくりからも、それはある意味当然と言えるだろう。

ただ、現時点においては、mixiとGREEは本質的には全く違うサービスと考えた方が良い。その利用者数こそどちらも1500万を超え、ある意味日本のネットのインフラ的サービスという印象のある数になってきているが、基本的なサービスの使い方を聞く限り、実際の利用者の意識は大きく異なるようだ。

誤解を恐れずに言い切ると、mixiがいわゆる人と人の関係性を表すソーシャルグラフを押さえ、利用者同士のコミュニケーションのインフラとして機能しているサービス。一方、GREEは、グリゲーに代表されるようにソーシャル性をもったアプリやゲームを楽しむためのサービスだ。いわゆるソーシャルグラフを元にしたコミュニケーションサービスとしての競争に、GREEは一度mixiに敗れた経緯がある。(私自身、5年半前のmixiとGREEの激しい利用者数競争においては、GREE派だった過去がある

その後、GREEはモバゲーの成功を参考に、モバイル向けのゲームを中心にしたサービスに大転換を実施。アイテム課金をてこに見事な成功を収めて、一度敗北したmixiを時価総額でも抜き去った。これが、良く語られるmixiとGREEの競争の歴史だが、このように文章で書くと単純に直線での競争でmixiとGREEが競っているように聞こえてしまうだろう。

しかし実はmixiとGREEはこの5年で全く異なる領域に到達しているのが現実だ。イメージとしては下記のような感じだろう。

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2010年2月 1日

mixiは、mixi日記成功の呪縛から解き放たれることはできるか。

この記事は、TechCrunch Japanに投稿したものです

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最近は、すっかりネット界の話題がTwitterに独占されている印象もあるが、個人的に日本のネットの今後を占う上で、特に注目しているのがmixiの動向だ。昨今のTwitterの盛り上がりもあり、あまりネットのイノベーター層の会話で取り上げられることが少なくなった印象もあるSNSだが、世界的にはとにかくFacebookの伸びが凄い。

あれだけTwitterが盛り上がっていると言われる米国の動向をGoogleトレンドで見てみると、実はTwitterの伸びは頭打ちになっていると言われる一方、Facebookは着実な伸びを示しているのだ。(もちろんTwitterはより携帯経由のアクセスが多いと思われるので、Googleトレンドの検索数だけでは一概に言えないが)

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当然、日本においてこのFacebookの地位を確保するのに一番近いのはmixiということになが、Googleトレンドで検索数の推移を見る限り、話はそう単純ではない。

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日本ではYahoo!が検索のシェアトップであることを考えれば、GoogleトレンドのデータはITリテラシーが高いTwitterと相性の良い層に偏っているとは思われるので、実際にはここまで接近していないと考えられるが、そのトレンドの違いは一目瞭然。いかに日本のmixi利用が携帯にシフトしていると言っても、mixiの今後に黄色信号が点灯していると考えられても仕方がないグラフだろう。

ただ、mixiに打つ手が無いわけではない。当然参考にすべきは、Twitterの勢いを押さえ込んでいるように見えるFacebookのTwitter対策だ。

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2009年12月25日

「Amebaなう」の真のライバルは、Twitterではなくアメブロだ

この記事は、TechCrunch Japanに投稿したものです

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10月にサービス開始を明言して話題になったサイバーエージェントのTwitterクローンである「Amebaなう」が、12月8日に携帯版、12月10日にPC版と続いてリリースされた。

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私自身、過去に個人ブログで「AmebaなうはTwitterにとって、かなりの強敵になり得るんではなかろうか」という記事を書いた経緯もあるし、この2社の今後の戦いはグローバルのデファクトスタンダードになっているサービスと、日本のネット事業者のサービスの戦いという意味でも興味深いので、実際にサービスを使っての感想をまとめてみたい。

Amebaなうの機能自体は、APIが公開されていないために外部アプリが全く存在しないことを差し引いても、メッセージの保存期限が1ヶ月だったり、フォロー数が500人で制限されていたり、一つ一つのメッセージのPermalinkが存在していなかったりと、正直Twitterとは比べるべくもない。

サービス開始初期に、かなり基本的なセキュリティのトラブルも発生するなど、システム面でのスケーラビリティだけでなく、セキュリティ面で懸念する声もある模様。現状においては、地球の神経システムを目指しているTwitterとは、ビジョンも思想も全く違うサービスだといえるだろう。

ただ、この点は開始してからまだ2週間もたっていないことだし、今後変更される可能性はあるので、現時点で評価するのは酷というものだ。

逆に、細かいAmebaなうの機能自体を見ると、日本人向けにTwitterの分かりづらい点をうまく修正してきている印象を受ける。@によるコミュニケーションを、Reというよりメールの返信に近い形にし、コメント一覧を手軽に表示できるようにしているし、投稿方法は面倒な印象があるものの画像添付ができるようになっているのも興味深い。日本のケータイ文化向けに絵文字に対応しているのも地味に重要なポイントだろう。

ただ、気をつけなければいけないのは、Twitterとの戦いにおいては、機能差というのは実はほとんど意味を持たないということだ。過去を振り返ってみると、「Twitterクローン」と言うのは、カテゴリとしての名称が存在する割には、完璧というほど類似サービスが駆逐されてきた歴史を持っている。

例えば、JaikuというTwitter類似サービスがあり、Googleに買収されて話題になった2009年1月には開発を打ち切られているし、Diggの創業者であるKevin Roseが招待制で開始して話題をさらったPownce2008年末に終了している。2008年の春にTwitterの再来と期待されたFriendFeedをもってしても、Googleトレンドの検索数は誤差に過ぎない。

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2009年12月21日

2009年の究極のウェブは「モバツイッター」。忘年会議2009で究極のウェブトップ10が発表に。

この記事は、TechCrunch Japanに投稿したものです

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bounenkaigi先週末の12月12日に、日本のネットコミュニティの恒例行事とも言える忘年会議2009が開催された。

忘年会議では毎年「究極のウェブ」を読者投稿から選んでいる。
過去の究極のウェブランキングでは、2004年の段階でmixiが1位に選ばれるなど、一般的な投票企画とは異なった一足先の未来を感じさせるツールがピックアップされるので有名だ。

残念ながら、忘年会議の開催は今年で最後になるため、究極のウェブランキングの発表も今年が最後になるようだが、最後にふさわしい独特のトップ10が発表されたので、ここで紹介しておこう。

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(Photo by masakiishitani

■2009年「究極のウェブ」ランキング

10位 Twitter
完全に2009年の顔となった印象もあるTwitterだが、あまりに当たり前ということでこの究極のウェブランキングでは10位に。当たり前になったサービスは上位に入れないのが、究極のウェブランキングのひとつの特徴というのがよくわかる結果に。とはいえ、日本においてもTwitterが今年の話題の中心だったことは間違いない。

9位 nanapi
7分以内でデキル!をキャッチフレーズに、生活をもっとハッピーにするテクニックを共有するライフレシピ共有サイト。ネットコミュニティで有名なけんすう氏が運営するロケットスタートが今年開始したばかりのサイトで、日本版Mahaloとでもいうべき雰囲気のあるサイトだ。

8位 テレビジン
2ちゃんねるのスレッドやブログ、Twitterなどの情報をもとに、現在進行形でテレビ番組の盛り上がりを可視化しているサイト。アジャイルメディア・ネットワークのエンジニアで、Twitterのつぶやきランキングサイト「Twitty」などのサービスも開発している福田一行氏が、個人で運営している。

7位 AppBank
大量のiPhoneのアプリケーションをレビューしているサイト。複数人で運営するグループブログ的な携帯で運営されており、個人で運営されているライバルブログに差をつけ始めている模様。今年のiPhoneアプリの盛り上がりを象徴させる受賞といえる。

6位 美人時計
360人の日本美人が手書きボードで現在時刻をお知らせする「1min自動更新時計サイト」。ウェブサイトだけでなく、iPhone版やiGooeleやMy Yahoo用のウィジェットなども提供されており、美男時計をはじめ、フランス・パリ版や美声時計等が計画されたり、企業とのタイアップも始まっている。月間PVは2億4000万を突破。

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2009年12月14日

Google日本語入力は、日本におけるGoogleの存在感上昇のきっかけになるか

この記事は、TechCrunch Japanに投稿したものです

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すでに先週木曜日に発表され、話題が一巡した感もあるGoogle日本語入力
本日、記者向けの説明会が行われ、詳細の説明が実施されたのでレポートしておこう。

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記者発表会の様子は下記の動画にまとめてみたが、20%プロジェクトからスタートしたことやベータ版であることを強く強調しているのが特に印象的で、現在のところはGoogle Chrome OSとの連携や、Google Adsense等の広告ツールとの連携の話は全くなし。

対マイクロソフトの戦略的なツールと言う印象は、ほとんど受けなかった。実際、20%プロジェクトから始まったことを考えれば、そういう位置付けのサービスなのだろう。(もちろんGoogleのことだから、現在のところは、という注記つきではあるが)

Google日本語入力 記者発表会の様子

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2009年11月13日

Android採用のデジタルフォトフレーム「光iフレーム」は、第三のネット接続端末となれるか

この記事は、TechCrunch Japanに投稿しています。

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昨日、NTT東日本の「待受情報配信サービス」と「光iフレーム(仮称)」という名称の、ネット対応デジタルフォトフレーム発表会にお邪魔してきました。

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ネット対応のデジタルフォトフレームというと、ソニーが2008年5月に発表したVGF-CP1や、類似のカテゴリーとして米国のChumbyが有名で、NTTグループ自身も既に光フォトフレームなる商品を発売しています。

ただ、今回の光iフレームの注目は、NTT東日本が提供する「待受情報配信サービス」と呼ばれているネットワークサービスの一つの窓として提供されている点でしょう。

誤解を避けずにまとめるなら、デジタルフォトフレーム版i-modeとでも呼ぶべき構想です。
当面は、読売新聞やウェザーニューズ、ジョルダンなど、複数のコンテンツ事業者からニュースや転記、レシピなどの配信を行うようですが、有料コンテンツの情報料回収代行も想定しており、明らかにコンテンツの配信プラットフォームを目指していることが分ります。

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2009年11月 5日

「Amebaなう」は、Twitterと直接対決するのではなく、「Amebaリアル」としてサービス展開すれば面白いかも

 先日書いたツイッター本セミナーに参加した際に、一つ印象に残った話があります。

 それは会場からの日本でTwitter類似サービスが増えることによる影響について質問された際のいしたにさんの「ツイッターはユーザが育てた。そうしたユーザが簡単に他に移るとは考えにくい」という回答。
(詳細についてはこちらの記事をご覧下さい


 また、もう一つ話題が関連してて印象的だったのは、先日の私のツイッターとブログの比較記事に対して書かれた小飼弾さんの「#twitter と #blog の一番(大きく|見落とされる)違い」というブログ記事での「blogは引っ越せるが、TL = Timeline は引っ越せないのだ」という発言。


 これらの意見には、個人的にも深く同意です。

twitter_tokuriki_tl.png

 Twitterはよくマイクロブログと表現されますが、正確にはブログのような記事のポスト機能だけでなく、RSSリーダー的なタイムライン機能を内包していて、この二つの組み合わせこそが、強力なネットワーク外部性を生んでいます。
 Twitterにおいては、個人のつぶやき一覧の画面を見ることがほとんどない、という事実こそが、その象徴と言えると思います。


 ちなみに、このポスト機能とタイムライン機能の組み合わせというのは、実はmixi日記も同じです。

 SNSの黎明期、日記SNSとしてライバルだったはずのGREEや、キヌガサ、Yahoo Days等が、mixiと比較するとたいした数のユーザーを確保することができなかったのは、やはりこのネットワーク外部性により、コミュニケーションの場という存在をmixiに取られてしまったのが最大のポイントということができるでしょう。
 だから、ブログのように事業者が乱立するのではなく、「SNS」というサービス総称よりも「mixi」という個別のサービス名称の方が有名という結果になるわけです。

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2009年10月30日

日本のツイッターの未来予想図は、2004年のブログブームを振返れば見えてくるかも。

 昨日、ツイッター本出版記念セミナーでプレゼンさせて頂きました。
 もともと、twitter night vol.3の際に間違って作ってしまったプレゼン資料だったのを、今回、ツイッター本著者のいしたにさんとコグレさんが、可哀想に思ってくれてプレゼンの機会を頂いた次第なのですが。

 全く同じ資料でプレゼンするのも問題ですし、実は資料を作ったときに力尽きて入れられなかったメッセージがあったので、今回の資料にいくつかスライドを追加してみました。

 追加したのは「現在の日本のツイッターを巡る状況は、2004~2005年にかけてのブログブーム前の状況に似ているんじゃ無かろうか?」という話です。

 
 プレゼン資料の前半に入れたように、現在の日本のTwitterは現状としては、まだ米国に比べると利用者数が圧倒的に違うので、現在の盛り上がり、特に日本のマーケティング業界界隈でのTwitterに対する期待感はちょっと現実と乖離しているとを感じることもたまにあります。
 実際、人によっては、セカンドライフバブルに似ていると感じる方もいたりするようです。

 ただ、2007年3月に私が初めてTwitterをレビューしてから今日まで日本のTwitterをみてきて最近感じるのは、Twitter界隈で始まっているいろんな出来事が、何となく2004年頃のブログブーム黎明期の出来事とシンクロしてきはじめているのではないかと言うこと。


 例えば、Twitterに広瀬香美さんが参入して、3日も経たないうちに発生した「ヒウィッヒヒー」祭りは、眞鍋かをりさんが2004年6月にココログをはじめてから2週間ぐらいで巻き起こした「メガネっ娘」祭りを彷彿とさせます。

twitter_slide19.png

 どちらも、一般ユーザーが中心だったコミュニティに、初めて芸能人が入ってきてくれて、直後に大きな話題を集めた出来事ということができると思います。

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