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2009年10月30日

日本のツイッターの未来予想図は、2004年のブログブームを振返れば見えてくるかも。

 昨日、ツイッター本出版記念セミナーでプレゼンさせて頂きました。
 もともと、twitter night vol.3の際に間違って作ってしまったプレゼン資料だったのを、今回、ツイッター本著者のいしたにさんとコグレさんが、可哀想に思ってくれてプレゼンの機会を頂いた次第なのですが。

 全く同じ資料でプレゼンするのも問題ですし、実は資料を作ったときに力尽きて入れられなかったメッセージがあったので、今回の資料にいくつかスライドを追加してみました。

 追加したのは「現在の日本のツイッターを巡る状況は、2004~2005年にかけてのブログブーム前の状況に似ているんじゃ無かろうか?」という話です。

 
 プレゼン資料の前半に入れたように、現在の日本のTwitterは現状としては、まだ米国に比べると利用者数が圧倒的に違うので、現在の盛り上がり、特に日本のマーケティング業界界隈でのTwitterに対する期待感はちょっと現実と乖離しているとを感じることもたまにあります。
 実際、人によっては、セカンドライフバブルに似ていると感じる方もいたりするようです。

 ただ、2007年3月に私が初めてTwitterをレビューしてから今日まで日本のTwitterをみてきて最近感じるのは、Twitter界隈で始まっているいろんな出来事が、何となく2004年頃のブログブーム黎明期の出来事とシンクロしてきはじめているのではないかと言うこと。


 例えば、Twitterに広瀬香美さんが参入して、3日も経たないうちに発生した「ヒウィッヒヒー」祭りは、眞鍋かをりさんが2004年6月にココログをはじめてから2週間ぐらいで巻き起こした「メガネっ娘」祭りを彷彿とさせます。

twitter_slide19.png

 どちらも、一般ユーザーが中心だったコミュニティに、初めて芸能人が入ってきてくれて、直後に大きな話題を集めた出来事ということができると思います。


 また、最近の日本企業のTwitterアカウント開設ラッシュは、2004年9月頃に始まった企業のブログ開設の流れを彷彿とさせます。

twitter_slide20.png

 特に先日2004年9月のブログ開設から5周年を迎えたばかりのTIIDA Blogを運営している日産自動車が、東京モーターショーに期間限定で公式Twitterを活用しはじめたというのは、個人的には何か象徴的な出来事のような気がしてなりません。
 (私の記憶が正しければ、TIIDA Blogも2004年当初は期間限定のプロジェクトとして始まったはずです)

 もちろん、セカンドライフにおいても似たような企業の参入ラッシュはあったのですが、NAVERのおまとめマンとか、機能プレゼンされたYahoo!ショッピングのように、一定の利用者がついてきているのが1つの違いのように思います。


 さらに、ツイッター本を初めとする最近の主にマーケティング向けのTwitter関連本の出版ラッシュも、2004年から2005年にかけておこったブログ本の出版ラッシュを思い出させるものがあります。

twitter_slide21.png

 コグレさんといしたにさんのツイッター本は、なんと発売日から10日もたたないうちに3刷りが決まっているそうですし。
 11月に出版されるらしいTwitter小説なんていうのを見ていると、Twitter版鬼嫁日記のようなエンタメ本が出てくるのも時間の問題ではないかと思ってしまったりします。


 実際、こうやってTwitterとブログの日本における歴史を、順を追ってみていくと、意外なほどに日本へのTwitterの浸透の展開が、初期のブログのころと非常に似ていることが良くわかります。

twitter_slide22.png

 どちらかというと、ブログで起こった出来事が、Twitterにおいてはかなり速いテンポで展開されているような印象です。
 そうなってくると、気になってくるのは、当然、これから日本のTwitterにどういう出来事が起こるのかと言うことでしょう。


 2004~2005年のブログの展開から、いくつか日本のTwitterで今後予想される出来事を書き出してみましょう。

■テレビ番組「ツイッター**」開始?
 ブログの時には、2004年6月頃から芸能人がこぞってブログを書き始め、翌年の2005年4月に、フジテレビが「ブログタイプ」なるテレビ番組を開始しています。

 米国でもTwitterとテレビの連携は進みつつあるようですが、Twitterのテレビとの相性の良さを考えたら、当然日本のどこかの局がTwitter連携企画を考えはじめても不思議ではないでしょう。
 はたしてそれがTBSになるのか、昔のBlogTVの流れで東京MXだったりするのか・・・はたまた、サイバーエージェントさんが「Amebaなう」連携テレビ番組を企画する方が早かったりするかもしれません。


■広瀬香美 Twitter本(歌?)発売?
 ブログの際にも、2005年8月に、ブログ開始から約1年経った眞鍋かをりさんが、自身のブログ記事をまとめた本を出版し、出版記念を兼ねて「眞鍋かをりさんをブロガーが囲む会」が開催されたりしました。自分も参加させて頂いたので良く覚えています。

 実際には、すでに広瀬香美さんも勝間和代さんと共著で「つぶやく力」なる本を出したりする予定があるみたいですが、将来的には広瀬香美さんのTwitter上の面白い発言をまとめたつぶやき本が出る可能性があったりするんじゃないかと思ったりします。 
 (ひょっとしたら勝間和代さんが出す方が現実的かもしれませんが。)


■Twitter本のドラマ化?
 2005年のブログブームの際に、非常に象徴的な出来事となったのが2005年10月に開始された「鬼嫁日記」のテレビドラマ化です。

 Twitterの文字数制限を考えると、ドラマの素材にはなりにくいと思われる方もいるかもしれませんが、実際には鬼嫁日記の前に、2ちゃんねる掲示板を素材にした「電車男」が実例としてあるわけで、同じような企画がTwitter上で繰り広げられて書籍化経由でドラマ化、という可能性は十分にあるのではないかと思っています。
 特に鬼嫁日記が、アメブロの人気ランキングから、人気ブログ認識→書籍化→テレビドラマ化というパターンで展開されたことを考えると、当然、サイバーエージェントさんからしたら、同じことを「Amebaなう」で仕掛けるべきでしょう。


■「ツイッター」が流行語大賞に?
 上記のような流れから、「ブログ」は2005年に流行語大賞に輝いています。
 代表して授賞式で受賞したのは鬼嫁日記の運営者カズマ氏でした。

 今の日本におけるTwitterの現状からすると、さすがに流行語大賞受賞を想像できる人は少ないかもしれませんが、アメリカのように俳優や歌手が猫も杓子もTwitterという状況になれば、十分流行語大賞を取る可能性はあります。
 ただ、Twitterの場合の問題は、ブログのときのように複数事業者が同じジャンルとしてサービスを提供しておらず、「Amebaなう」「mixiボイス」「GREEひとこと」に「リアル」まで、マイクロブログサービス名が乱立していることでしょうか。
 


■Twitterからツイッターへ。
 まぁ、細々と妄想を書かせて頂きましたが、最も確かなことは、Twitterが日本でブレイクするためには、ブログが「Weblog」や「blog」から「ブログ」と変化して土着化したように、「Twitter」が「ツイッター」と呼ばれて土着化するようになることだと思います。

 そう言う意味でも、コグレさんといしたにさんのツイッター本が、「Twitter」というタイトルではなく「ツイッター」というタイトルになっているのは、1つの象徴的な出来事なのではないかと思ったりします。


 そんな風にいろいろ考えていくと、仮に現時点での日本におけるTwitterの盛り上がりにバブル的な側面があったとしても、最終的にはTwitter的なマイクロブログサービスが、ブログのように日本に定着していく過程が今始まろうとしているのかもしれないな、と思えてきます。

twitter_slide18.png

 実際、2005年のブログブームも、バブル的な側面は多々ありましたが、その後ここまで普通な存在になるようになっているわけで。

 新しいテクノロジーというのは、かならず一度は実体よりも期待が先行して盛り上がり、その後バブルが落ち着いた後に実際の普及が始まるものだったりしますから、Twitter的なサービスについても同じようなルートを辿るのかな、と。

 そんなことを感じている今日この頃です。


※ちなみに、私が作ったプレゼンテーションファイルはSlideShareにメンバー登録すると、スライド上部の「Get File」というメニューからPDFでダウンロードすることもできますので、興味がある方は遠慮無くどうぞ。

2009年10月23日

「Amebaなう」はTwitterにとって、かなりの強敵になり得るんではなかろうか

 サイバーエージェント、ミニブログ「Amebaなう」開始へを読んで。

 サイバーエージェントがマイクロブログ(ミニブログ)サービスへの参入を発表して話題になっていたようですね。
(Twitter上で一番盛り上がっていたのは、Amebaなう発表自体よりも、サイバーエージェントの藤田さんが自ら「タイミングがわるい」と認める「オリジナルを創りだす」というタイトルのブログ記事がらみだったみたいですが。)
 
 
 Twitterでは「Amebaなう」への批判的な意見が多かったような印象もありましたが、個人的には実はサイバーエージェントおよびアメブロが、日本のマイクロブログサービスでの成功に一番近い所にいるんじゃないかと思っています。

 以前、「twitter night vol.3のプレゼン資料を間違えて作ってしまったので(涙)公開します。」という記事で紹介した、プレゼン資料を作っていたときにも思ったのですが。

 アメブロは、Twitterが日本でカバーすべき二つの領域でバッティングします。


 一つ目が下記の図で強調したかった、モバイルによるリアルタイムなコミュニケーションプラットフォームとしての陣取り合戦。

0910twitter_slide11.png

 米国では、TwitterはiPhoneのブレイクと共に、モバイルで利用するメインのコミュニケーションプラットフォームの座を見事に射止めたわけですが。
 実は、日本ではアメブロのような日記系ブログであったり、mixi日記であったり、いわゆるケータイで利用できるモバイルのプラットフォームがすでに普及しています。

 この辺は、以前に「日本のウェブは遅れているのではなく、急速に進みすぎたのではないかという仮説」という記事でも書いたのと同じ話です。

 mixi日記はクローズドという性質があるため、米国のFacebookとTwitterのように、ある程度マイクロブログとSNSで棲み分けが為される可能性はあると思います。
 ただ、アメブロはTwitterと同じくオープンなコミュニケーションなプラットフォームですし、お互い主戦場はケータイでありモバイル。
 間違いなく両社は正面衝突するコースの上に乗っているわけです。


 で、もう一つ重要な要素になると思われるのが、芸能人とテレビ。

 メディアパブの下記の一連の記事を見ると分りますが、実は2009年初めのTwitterの米国でのブレイクは、ブリトニー・スピアーズのような著名人と、CNNなどのテレビ局がこぞってTwitterに力をいれ始めるのと、シンクロしています。

メディア・パブ: Twitterが強力なニュースメディアに(その2)
メディア・パブ: Twitterの異常なまでの成長、まだ続いている
メディア・パブ: 100万フォロワー競争で一段と過熱化するTwitterブーム

 これらの一連のブームの一つのピークとなるのが、上記の最後にある、俳優のアシュトン・カッチャーによる100万フォロワー獲得競争。
 アシュトン・カッチャーというと、日本ではなじみがないかもしれませんが、あの「ゴースト」のデミ・ムーアの旦那と言えば、認知度の高さは伝わるでしょうか。

 彼が「CNNのTwitterアカウントのフォロワーより先にフォロワー100万超えを達成したら、アトランタに住む(CNN創立者の)テッド・ターナーの豪邸に行って、ピンポンダッシュしてやる!」と宣言して、100万フォロワー獲得競争を実施したことで、Twitterは注目のピークをかざるわけです。

twitter_trend_ashton.png

 米国において、その後の「Twitter」というキーワードの検索数が、ほぼ横ばいになっていることからも、ここがいかに大きなピークであったかというのは良くわかると思います。

 プレゼン資料でも、下記のようなスライドを作りましたが。

0910twitter_slide15.png

 いまや、米国ではTwitterとテレビの連携も結構出てきているそうで。
 結果的に、Twitterのグローバルのフォロワー数ランキングのトップは、ほとんど俳優や歌手が独占しているわけです。


 で、実は日本でここが得意なのが、当然、6000人もの芸能人ブログを有するアメブロです。

 米国の著名人は、いきなりTwitterがネットでの情報発信の入り口になっていた印象がありますが。
 日本の芸能人は、すでにアメブロを中心とした芸能人ブログで、ケータイからの情報発信を実践しています。

 おまけに、アメブロには「記事マッチ」のような芸能人ブログ向けの記事広告メニューもあり、いまや芸能人ブログ自体が一つの収入源の可能性として見えてきているのも事実。
 アメブロのランキングの順位獲得自体が一つのテレビの番組の企画になってしまっていたりもしていますから、ある意味アシュトン・カッチャーのフォロワー獲得競争や、Twitterのテレビ番組連動みたいなものが、徐々にアメブロでも実施されていたりします。

 Twitterが盛り上がっているからと言って、芸能人がいますぐTwitterに移るのは、実は結構ハードル高いんじゃないかと思うわけです。


 で、今日の「Amebaなう」の発表になるわけですが。
 shikeさんが「この発表のタイミングは、アメブロ芸能人Twitter流出へのをカウンターなのかな。」と言っていたので、なるほどなーと思ったのですが。
 
 「Twitter流行ってるから、やった方が良いのかな」と浮き足立ち始めた芸能人を、
 「アメブロでも、ちゃんと類似のサービスやりますから大丈夫ですよ」と引き留めるには、確かにこれで十分なように思います。

 実際、すでに1割に当たる600人が参加表明をしているようですし、今回のリークで、さらに手を挙げる人は増えるでしょう。
 日本のTwitter側も、当然芸能人のスカウトは強化してくるはずですから、どうなるかは分りませんが、現時点での利用者数とかいろいろ考えると、なかなか厳しい闘いになるはずです。


 つまり、アメブロは、すでに「モバイル(ケータイユーザー)」と「芸能人(及びテレビ)」という、米国でTwitterが開拓した二つの分野を既に抑えているわけで。
 グローバルで成功しているTwitterと、互角に戦いうる土俵にいるということもできるわけです。


 まぁ、個人的にはTwitterユーザーなので、日本がマイクロブログでもガラパゴスにならないように、Twitterに頑張って欲しいですし。

 「Amebaなう」というネーミングはいくら何でも無いだろとか(仮称なので変わると思いますが)。
 Twitterのようにオープンに外部プレイヤーに公開してエコシステムを作るアプローチは取らないだろうAmebaで、総合的な使いやすさとか、コミュニティの盛り上がりは可能なのかとか。
 実はTwitterのようなシステムは技術者にとって悪夢のような難しいシステムらしい(shikeさん経由モダシンさん談話)ので、本当に芸能人で大量にトラフィックが集まってしまった際に、サイバーエージェントさんの技術陣でしのぎきれるのかとか。
 いろいろ疑問もありますし。

 「Amebaなう」がどんな形のシステムとして出てくるのか。
 単なるインスパイアなのか、二番煎じではない形になるのかも分りませんし。
 そもそも本当に12月にリリースされるのかも、現時点では分らないわけですが。

 この両社の闘いは、なかなか興味深いものになりそうな予感がします。

追伸
 twitter night vol.3のセッション用に間違えて作ってしまったプレゼン資料ですが、いしたにさんとコグレさんのご厚意で「ネットPR大学「ツイッター 140文字が世界を変える」出版記念講座」でプレゼンさせて頂けることになりました。

 プレゼン資料を既に公開してしまっていてネタバレしてしまってるので、今更プレゼンするのも恥ずかしいのですが。
 メインプログラムで、Twitterを利用してる企業の事例とか、今回のツイッター本の裏話とかいろいろ聞けるみたいですので、ご興味のある方は是非どうぞ。

■お申し込みはこちら
 ネットPR大学「ツイッター 140文字が世界を変える」出版記念講座

   

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