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2009年11月13日

Android採用のデジタルフォトフレーム「光iフレーム」は、第三のネット接続端末となれるか

この記事は、TechCrunch Japanに投稿しています。

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昨日、NTT東日本の「待受情報配信サービス」と「光iフレーム(仮称)」という名称の、ネット対応デジタルフォトフレーム発表会にお邪魔してきました。

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ネット対応のデジタルフォトフレームというと、ソニーが2008年5月に発表したVGF-CP1や、類似のカテゴリーとして米国のChumbyが有名で、NTTグループ自身も既に光フォトフレームなる商品を発売しています。

ただ、今回の光iフレームの注目は、NTT東日本が提供する「待受情報配信サービス」と呼ばれているネットワークサービスの一つの窓として提供されている点でしょう。

誤解を避けずにまとめるなら、デジタルフォトフレーム版i-modeとでも呼ぶべき構想です。
当面は、読売新聞やウェザーニューズ、ジョルダンなど、複数のコンテンツ事業者からニュースや転記、レシピなどの配信を行うようですが、有料コンテンツの情報料回収代行も想定しており、明らかにコンテンツの配信プラットフォームを目指していることが分ります。

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NTT東日本は、過去に高機能電話機をネット端末に進化させようと Lモードという構想を打ち出したことがありますが、Lモード自体は平成22年3月末でサービス終了と失敗に終わったという歴史があります。
今回の光iフレームについては、利用者のネット利用の導線上にない固定電話機をネット端末にしようとしてしまったというLモードの失敗を踏まえ、より利用者がネット環境を必要としている場所にデジタルフォトフレームで出ていこうという姿勢が明確になっているように感じます。

日本はケータイでのネット利用が普及するのが早かったため、米国に比べるとPC普及率のわりに、家庭での固定インターネット利用時間は意外に低いのではないかという印象もあります。そう言う意味では、デジタルフォトフレームのようなシンプルな端末で主婦や高齢者など在宅時間が長い層のネット利用の啓蒙というのは意外に大きな市場の可能性もあります。


また、特に注目されるのは、Androidプラットフォームを採用している点。
日本においては、まだAndroid携帯はNTTドコモのHT-03Aしか発売されていないため、それほど大きく盛り上がってはいませんが、グローバルで見ると着実に伸びが見られているため、Android向けのアプリを開発する企業や開発者が増えることが当然想定されます。

当面は、ウィジェットと呼ぶコンテンツ配信が中心にはなるようですが、今後仕様が広く公開されるようであれば、携帯向けのアプリをこの光iフレーム向けに変更することで多様なアプリケーションを利用できる可能性がありえます。
記者発表会場でも、読売新聞の発言小町対応ウィジェットなどのデモが実施されていましたが、Twitterウィジェットや、mixiウィジェット、YouTubeウィジェットなどがあれば、かなり魅力的なのではないかという議論がなされていました。

個人的には女性がメインターゲットとのことなので、美人時計Amebaピグとの連携も面白そうな気がします。また、将来的には、普段は机の上に置いてあるんだけど、外出時には電子ブックリーダーとしてKindleのように利用できる端末が出てくる可能性もあるかもしれません。

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PCと携帯電話に続く家庭における第三のネット端末としては、これまでネット対応テレビからネット対応冷蔵庫まで、様々な可能性が議論されてきましたが、やはりテレビや冷蔵庫のような大型家電は頻繁に買い換える端末ではないことを考えると、普及速度に限度があります。

そう言う意味では、単価が2~3万円程度で購入できるデジタルフォトフレームサイズの端末というのは、実は第三のネット端末のダークホースになってくるかもしれません。

端末の仕様等についてはネタフルにまとまっていますので、こちらもどうぞ。
[N] 「光iフレーム(仮称)」Android搭載ウィジェット対応デジタルフォトフレーム

2009年11月 5日

「Amebaなう」は、Twitterと直接対決するのではなく、「Amebaリアル」としてサービス展開すれば面白いかも

 先日書いたツイッター本セミナーに参加した際に、一つ印象に残った話があります。

 それは会場からの日本でTwitter類似サービスが増えることによる影響について質問された際のいしたにさんの「ツイッターはユーザが育てた。そうしたユーザが簡単に他に移るとは考えにくい」という回答。
(詳細についてはこちらの記事をご覧下さい


 また、もう一つ話題が関連してて印象的だったのは、先日の私のツイッターとブログの比較記事に対して書かれた小飼弾さんの「#twitter と #blog の一番(大きく|見落とされる)違い」というブログ記事での「blogは引っ越せるが、TL = Timeline は引っ越せないのだ」という発言。


 これらの意見には、個人的にも深く同意です。

twitter_tokuriki_tl.png

 Twitterはよくマイクロブログと表現されますが、正確にはブログのような記事のポスト機能だけでなく、RSSリーダー的なタイムライン機能を内包していて、この二つの組み合わせこそが、強力なネットワーク外部性を生んでいます。
 Twitterにおいては、個人のつぶやき一覧の画面を見ることがほとんどない、という事実こそが、その象徴と言えると思います。


 ちなみに、このポスト機能とタイムライン機能の組み合わせというのは、実はmixi日記も同じです。

 SNSの黎明期、日記SNSとしてライバルだったはずのGREEや、キヌガサ、Yahoo Days等が、mixiと比較するとたいした数のユーザーを確保することができなかったのは、やはりこのネットワーク外部性により、コミュニケーションの場という存在をmixiに取られてしまったのが最大のポイントということができるでしょう。
 だから、ブログのように事業者が乱立するのではなく、「SNS」というサービス総称よりも「mixi」という個別のサービス名称の方が有名という結果になるわけです。

mixi_tokuriki_tl.png

 自分が発言を書き込む画面に、相手の発言も出てくるからこそ、相手の発言を読む機会が増え、相手の発言を読む機会が増えるからこそ、お互いのコミュニケーションが活性化する。この組み合わせは、ネット上のコミュニケーションツールにおいて、かなり重要なポイントのように感じています。

 Twitterは、まさにこのポスト機能とタイムライン機能がシンプルに結合した見本のようなサービス。
 そう言う意味では、先日「「Amebaなう」はTwitterにとって、かなりの強敵になり得るんではなかろうか」という記事で言及した「Amebaなう」についても、いくら芸能人ネットワークを持っているとはいえ、既存のTwitterユーザーを奪うことが難しいのは、間違いないと言えるでしょう。


 ただ、個人的に気になるのは、実はアメブロ自体が、このポスト機能とタイムライン機能をすでに内包しているという点。

 実は外部から見ていると分りづらいですが、Amebaにログインすると、トップページに「チェックリスト」という項目で自分が講読しているブログの更新情報を教えてくれる機能があります。

ameba_tokuriki.png

 つまりmixiのマイミク最新日記欄。
 

 これは、昨年何人かの大学生に聞いたときに何となく感じた話ですが、一部の学生は明らかに、Amebaのログイン画面を芸能人ブログをチェックするためのリーダーとして使っているそうで。
 暇なときに見に行くサイトの一つとして個別の芸能人ブログではなく、Amebaのトップページが選択されているようです。

 アメブロでブログを書いている芸能人の最新情報を知りたければ、アメブロにID登録してトップページでチェックするのが楽なわけで、そこに人が集まっているからこそ、芸能人好きの読者に自分のブログを読んでもらいたい芸能人がアメブロにますます集中するわけで。

 これまた、ここにもネットワーク外部性が明らかに働いているわけです。


 個人的に、アメブロはもはや一般的な「ブログ」サービスではなく、MySpaceのようなオープンなSNSだと考えている理由がここにあります。

 つまり、Amebaはやり方によっては、Twitterコミュニティとは異なるマイクロブログコミュニティを形成するポテンシャルは十分あると思うわけです。
 特に既存のAmebaトップページに、Amebaなうの機能をFacebookのように組み込んでしまうと言うやり方は、シンプルに機能するように思います。


 そう言う意味で、個人的に「Amebaなう」が、日本でTwitterと正面から対抗できる規模のサービスになりうる可能性として重要になるのではないかと思うのが、いわゆる「リアル」の利用者層の取り込み。

0910twitter_slide11.png 

 上記の図にも書きましたが、実は日本では「リアル」と呼ばれるマイクロブログが女子高生の間で普及しているらしく。

『mixi』って何? 女子高生は『リアル』でSNSするのが常識 ? ロケットニュース24(β)
女子高生がなかなかリアルからTwitterに移行しない理由
 
 ようやく先日モバイル版をリリースしたものの、日本のケータイ対応が出遅れたTwitterはこのターゲット層で、リアルに大きく差を広げられているように見えます。
 実際のユーザー層を考えれば、まぁ当然の結果と言えるでしょう。

 ただ、このリアルの分野は、聞くところによるとCROOZリアルという事業者が強いものの、それほど明らかにカテゴリーキラーと言えるプレイヤーはまだ存在しない模様。

 後発にも関わらず、ブログ事業者のトップを獲得することができたAmebaであれば、利用者の属性も結構重なりそうな印象もありますし、リアル事業者のトップを獲得するのは、かなり確率の高いことのように思えます。


 ちなみに、メディアパブの先日の記事に出ていたデータでは、なんとグローバルのTwitterユーザーの66%が25歳以下の若年層だったりするそうなので。

*Twitterユーザーの年齢(ソース:Sysomos)
TwitterUser.jpg

 やはり、Twitterのような新しいコミュニケーションで重要なのは、こうした若い層を確保することのように思います。

 もし「Amebaなう」が「Amebaリアル」的なサービスとしてリリースされて、多数の芸能人をてこに、この女子高生層を巻き取ってしまうことができたら、これからTwitterのユーザーになるはずの若い世代を抑えられてしまうわけです。

  
 そもそも「Amebaなう」の「なう」って、もはやTwitterコミュニティにおける方言みたいなものだと思うのですが。
 そうやって、あえてサービス名称に方言を入れてTwitterコミュニティに媚びを売ってみたところで、現在の友人とのコミュニケーションを中心にしたTwitterコミュニティに満足している層はわざわざ移転してきたりしないでしょうから。

 芸能人の発言もまとめて読める「Amebaリアル」として、既存のTwitterコミュニティから縁遠い若年層を根こそぎ持って行く方に注力するのが、Amebaとしては確実な策のように思えたりします。


 まぁ、湯川さんがこちらの記事に書かれているように「いずれツイッターやAmebaなうの「池」の中の魚も「海」に泳ぎ出ようとするだろうし、それを引き止める力はどんな大手ネット企業にもない。」と考えることもできますから、利用者としては何が流行ってくれても楽しくなれば一向に構わないわけですが。

 この半年~1年のマイクロブログ界隈の動向は、将来の日本のマイクロブログ系サービスの展開を見る上で、かなり重要な期間になりそうです。

   

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