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2010年2月 9日

日本でFacebookの地位を獲得するのは、やっぱりmixiか、それともGREEか。

この記事は、TechCrunch Japanに投稿したものです

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先日、mixiがFacebookのようなタイムラインを導入するべきではないかという記事を書いたが、この視点で日本のSNS市場を見た上で、当然もう一つ忘れてはいけないプレイヤーがいる。それがGREEだ。

mixiとGREEというのは、そのサービスの開始時期や生い立ちが非常に似ていることもあり、サービス開始から6年がたとうしている今でも、直接的なライバルとして比較されることが多い。SNSというサービスのくくりからも、それはある意味当然と言えるだろう。

ただ、現時点においては、mixiとGREEは本質的には全く違うサービスと考えた方が良い。その利用者数こそどちらも1500万を超え、ある意味日本のネットのインフラ的サービスという印象のある数になってきているが、基本的なサービスの使い方を聞く限り、実際の利用者の意識は大きく異なるようだ。

誤解を恐れずに言い切ると、mixiがいわゆる人と人の関係性を表すソーシャルグラフを押さえ、利用者同士のコミュニケーションのインフラとして機能しているサービス。一方、GREEは、グリゲーに代表されるようにソーシャル性をもったアプリやゲームを楽しむためのサービスだ。いわゆるソーシャルグラフを元にしたコミュニケーションサービスとしての競争に、GREEは一度mixiに敗れた経緯がある。(私自身、5年半前のmixiとGREEの激しい利用者数競争においては、GREE派だった過去がある

その後、GREEはモバゲーの成功を参考に、モバイル向けのゲームを中心にしたサービスに大転換を実施。アイテム課金をてこに見事な成功を収めて、一度敗北したmixiを時価総額でも抜き去った。これが、良く語られるmixiとGREEの競争の歴史だが、このように文章で書くと単純に直線での競争でmixiとGREEが競っているように聞こえてしまうだろう。

しかし実はmixiとGREEはこの5年で全く異なる領域に到達しているのが現実だ。イメージとしては下記のような感じだろう。

mixi_gree1


GREEの主戦場は最初のCMにあったように、「金はないけど暇はある」人たちのひまつぶしゲーム市場であり、ライバルは明らかにモバゲーだ。その市場はいわゆる古き良き「SNS」というよりは「モバイルSNSゲーム」とでも呼ぶべき市場であり、mixiは直接のライバルではない。そういう意味では、一年前の段階では私は「もうmixiとGREEを比較するのはやめた方が良い」論者だった。

ただ、その状況がこの半年大きく変わろうとしている。

mixiがmixiアプリ、特にmixiモバイルでのアプリを開始したことにより、明らかにmixiはモバイルSNSゲーム市場に足を踏み入れることになった。現在のmixiモバイルのメニューの並び順を見ると、mixiモバイルアプリのショートカットがmixi日記の上に置いてあるぐらいで、個人的にはmixiアプリに入れ込みすぎてmixi日記閲覧者が減ってしまうのではないかと心配してしまうぐらいの力の入れようだ。

mixi_app

一方、先日のmixiタイムライン記事で書いた、Facebook的なタイムラインのアプローチをmixiに先駆けて実施してきたのがGREEだ。すでに、GREEではPC版もモバイル版も、GREEひとことというタイムライン上に、Twitter的なショートメッセージ機能を取り込み、Twitterの発言の同期を可能にしたほか、GREEのゲームのプレイ情報も、タイムライン上に混ぜて表示するようにしてしまった。

gree_timeline

つまり、両者とも利用者同士のコミュニケーションのタイムラインという機能と、その周辺にあるゲームやソーシャルアプリの組み合わせという、世界市場でFacebookがMyspaceやTwitterを抑えこむのに成功した武器自体は手にしたわけだ。つまり、これからmixiとGREEは再び同じ市場で直接対決をすることになる。

mixi_gree2

個人的な視点から現時点で判断すると、日本でFacebookの地位を手にするのに近いのはmixiだ。利用者数こそ近い両者だが、周辺の話を聞いている限り、GREEを使っている人の目的はあくまでゲーム。ソーシャル性が強いアプリケーションが多いが、基本的には一人でプレイするのが前提で、ソーシャル性はおまけになっている印象が強い。どちらかというと、モバイル版オンラインゲームであり、実際の人間関係はmixiほどには反映されていないように見える。

ただ一方でいろいろ話を聞くと、学校のクラスではお互いにGREEでつながっているようだし、職場の同僚と釣りゲームをやっていたり、お互いにクリノッペをつっつきあったりというシーンもあるらしい。もしGREEが、これから再びリアルなソーシャルグラフをつなげるようなアプリケーションを出してきたら、現在のmixiの地位が安泰とはとても言えないのも事実。

mixiアプリの盛り上がりを見れば分かるように、一人でやっていてもつまらないアプリが、リアルのソーシャルグラフとつながると途端に盛り上がってしまうことがある。単純なゲームは、常に飽きられるリスクと背中合わせだが、ソーシャルグラフを制していれば、実はその上で流行るアプリは何でも良い。

大事なことは利用者のコミュニケーションのハブになっていることであり、Facebookの強さはここにあるといえる。現在のGREEの勢いを考えれば、当然このFacebook的ポジションを得るためにリアルのソーシャルグラフの取り組みは強化してくるはずで、mixiも黙ってはいないだろう。

いずれにしても、今年は日本のSNSの将来を占う上で、興味深い年になりそうだ。

2010年2月 1日

mixiは、mixi日記成功の呪縛から解き放たれることはできるか。

この記事は、TechCrunch Japanに投稿したものです

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最近は、すっかりネット界の話題がTwitterに独占されている印象もあるが、個人的に日本のネットの今後を占う上で、特に注目しているのがmixiの動向だ。昨今のTwitterの盛り上がりもあり、あまりネットのイノベーター層の会話で取り上げられることが少なくなった印象もあるSNSだが、世界的にはとにかくFacebookの伸びが凄い。

あれだけTwitterが盛り上がっていると言われる米国の動向をGoogleトレンドで見てみると、実はTwitterの伸びは頭打ちになっていると言われる一方、Facebookは着実な伸びを示しているのだ。(もちろんTwitterはより携帯経由のアクセスが多いと思われるので、Googleトレンドの検索数だけでは一概に言えないが)

twitter_facebook

当然、日本においてこのFacebookの地位を確保するのに一番近いのはmixiということになが、Googleトレンドで検索数の推移を見る限り、話はそう単純ではない。

twitter_mixi

日本ではYahoo!が検索のシェアトップであることを考えれば、GoogleトレンドのデータはITリテラシーが高いTwitterと相性の良い層に偏っているとは思われるので、実際にはここまで接近していないと考えられるが、そのトレンドの違いは一目瞭然。いかに日本のmixi利用が携帯にシフトしていると言っても、mixiの今後に黄色信号が点灯していると考えられても仕方がないグラフだろう。

ただ、mixiに打つ手が無いわけではない。当然参考にすべきは、Twitterの勢いを押さえ込んでいるように見えるFacebookのTwitter対策だ。


もともとFacebookのCEOであるMark Zuckerbergが、Twitterを買収しようとしていたのは有名な話。ただ、最終的にその買収話が頓挫すると、Facebookは一転して方針変更。自らのNews Feed一覧をTwitterそっくりにしてしまい、さらにはFriendFeedを買収するなど、Twitterよりもリッチなタイムラインの生成に力を入れているのだ。

Facebook_feed

例えば、FacebookにTwitterのフィードを転送しておくと、Facebookではコメントがつくとメールが来るため、自然とFacebookにログインする羽目になる。また、ひとつの発言へのコメントを他の人もまとめて見ることができるため、Facebook上の方がTwitterより議論が盛り上がることも少なくない。また、写真共有についてもFacebook上ではサムネイルがそのままタイムラインで見えるせいか、Likeによるリアクションが多いこともある。FacebookはTwitterとは異なる位置づけのタイムラインとして機能しているのだ。

日本のmixiとTwitterを比較して、「クローズドのSNSはダメ」とか「双方向の承認システムはだめ、Twitterの片方向のフォローの仕組みが良かった」と評する人もいるが、実際にはFacebookの順調な展開を見る限り、クローズドのSNSも双方向の承認システムもmixiの根本的な問題ではない。mixiがもともと持っていたはずの、友人の最新情報を知ることができるというパーソナライズポータル的なタイムラインの役割を、Twitterに奪われ始めているというのが問題なのだ。

mixi日記が登場した当時、ブログ的な日記を書くという機能と、友達の最新日記が見れるというRSSリーダー的な機能、さらに足跡機能で「日記」を見たという確認機能をひとつのサービスに統合していたのは実に革新的なアプローチだった。ただ、時代の中心がモバイルからの投稿に移るに従い、件名と本文という形式で日に1~2回更新される日記から、分単位で投稿するショートメッセージのマイクロブログ形式に世の中がシフトしつつある。日記を中心としたmixiのタイムラインは、更新速度の面でTwitter的なタイムラインにその地位を奪われつつあるのだ。

つまりmixiがFacebookのように、自らをTwitter並みのタイムラインシステムに変えることができるかどうか、というのが今後mixiがTwitterの勢いに対向できるかどうかのポイントになる。そういう意味で個人的に注目していたのが、1月6日にロゴも含めて実施されたmixiの大幅なリニューアルだった。ただ、現時点で見る限りmixiはまだFacebookほど大胆な方針変更には踏みきれていないようだ。

昨年12月10日に公開されたプレスリリース上では、「従来の、「日記」、「mixiアプリ」、ユーザーが参加している「コミュニティ」など、コンテンツごとに分類した更新情報に加え、「新着順」「マイミク別」の分類でも更新情報を見ることが可能となります。」と書かれていたため、いよいよmixiもFacebook的なタイムライン化を実施するのかと期待したのだが。現時点で見る限り、新着順のボックスにまとめられたのは写真程度で、アプリやコミュニティの更新情報はおろか、mixiボイスもあいかわらず別のボックスに表示されたままだ。

しかも更に悪いことに、デフォルトの表示はあいかわらず今まで通りのコンテンツ別の表示のため、おそらく多くの利用者が新着順で表示できる機能に気づいていないと思われる。

mixi_renewal

当然運営側の視点で見ると、アプリの更新情報やmixiボイスに混ぜてしまったり、Facebookのような新着順のフィード形式にすることで、現状の主力機能であるmixi日記ユーザーの混乱を招く恐れがあるというのが、mixi社内において最も議論を呼ぶポイントになるのだろう。

ただ、もしmixiのトップページが、利用者にとってそこさえ見ておけば友達の最新情報を知ることができるというタイムライン機能の優位性を失ってしまったら、結果的にmixi内の日記を読んでくれる人が減り、それに伴いmixi日記を書く人も減ってしまうことになる。

もちろん、Facebookと同じ対応をすることが必ずしも正解とは限らないが、mixiアプリを投入した現在、Twitter的な進行サービスに対抗する上でもmixiが何かしなければならないのは明白だ。

TwitterやFacebookが教えてくれているのは、利用者が見たいのは「日記」や「写真」など特定の機能のコンテンツではなく、自分がフォローしている相手や自分の友人の最新情報や行動だったという事実。実はその表現方法は必ずしも文章でなくとも良く、時には単なる位置情報やアプリの更新情報からコミュニケーションが始まることもある。

mixiにとって重要なのは、日記サービス提供事業者としての立ち位置を堅持することや、140文字のショートメッセージをやり取りする機能だけをコピーすることではない。利用者同士のコミュニケーションのハブとして機能し続けることだ。

是非日本最大のソーシャルグラフを保有しているmixiには、リスクを取って、日本ならではの新しいタイムラインの在り方にチャレンジして欲しい。そんなことを感じてしまうのは私だけだろうか。

   

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