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2009年12月25日

「Amebaなう」の真のライバルは、Twitterではなくアメブロだ

この記事は、TechCrunch Japanに投稿したものです

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10月にサービス開始を明言して話題になったサイバーエージェントのTwitterクローンである「Amebaなう」が、12月8日に携帯版、12月10日にPC版と続いてリリースされた。

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私自身、過去に個人ブログで「AmebaなうはTwitterにとって、かなりの強敵になり得るんではなかろうか」という記事を書いた経緯もあるし、この2社の今後の戦いはグローバルのデファクトスタンダードになっているサービスと、日本のネット事業者のサービスの戦いという意味でも興味深いので、実際にサービスを使っての感想をまとめてみたい。

Amebaなうの機能自体は、APIが公開されていないために外部アプリが全く存在しないことを差し引いても、メッセージの保存期限が1ヶ月だったり、フォロー数が500人で制限されていたり、一つ一つのメッセージのPermalinkが存在していなかったりと、正直Twitterとは比べるべくもない。

サービス開始初期に、かなり基本的なセキュリティのトラブルも発生するなど、システム面でのスケーラビリティだけでなく、セキュリティ面で懸念する声もある模様。現状においては、地球の神経システムを目指しているTwitterとは、ビジョンも思想も全く違うサービスだといえるだろう。

ただ、この点は開始してからまだ2週間もたっていないことだし、今後変更される可能性はあるので、現時点で評価するのは酷というものだ。

逆に、細かいAmebaなうの機能自体を見ると、日本人向けにTwitterの分かりづらい点をうまく修正してきている印象を受ける。@によるコミュニケーションを、Reというよりメールの返信に近い形にし、コメント一覧を手軽に表示できるようにしているし、投稿方法は面倒な印象があるものの画像添付ができるようになっているのも興味深い。日本のケータイ文化向けに絵文字に対応しているのも地味に重要なポイントだろう。

ただ、気をつけなければいけないのは、Twitterとの戦いにおいては、機能差というのは実はほとんど意味を持たないということだ。過去を振り返ってみると、「Twitterクローン」と言うのは、カテゴリとしての名称が存在する割には、完璧というほど類似サービスが駆逐されてきた歴史を持っている。

例えば、JaikuというTwitter類似サービスがあり、Googleに買収されて話題になった2009年1月には開発を打ち切られているし、Diggの創業者であるKevin Roseが招待制で開始して話題をさらったPownce2008年末に終了している。2008年の春にTwitterの再来と期待されたFriendFeedをもってしても、Googleトレンドの検索数は誤差に過ぎない。

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日本においても、TimelogやWassr、もごもご、Haru.fmなど多数のTwitterクローンが存在するが、Twitterに圧倒的な差をつけられてしまっているのが現状だ。

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ブログサービスが複数乱立する状況になったのとは、全く違う。Twitterのタイムラインは、非常に排他的なネットワーク効果を持つハブページとなっており、Twitterに人が集まれば集まるほど、他のサービスとの両立や、共存を難しくするのだろう。結局、Twitter的なタイムラインを持つサービスは、一人に一つで十分なのだ。

単純にサービス単体での機能を比較すると、Twitterに敗北したサービスは明らかにTwitterに機能で優っているようにみえる。だが、Twitterは早期にプラットフォームをオープンにすることで、サービスの魅力は外部の協力者のツールで補い、多様な利用者を早期に獲得してネットワーク効果を確立し、他者が追いつけない状況をつくりあげることで勝利を収めてきたのだ。

その視点で日本市場を振り返ると興味深いのは、実はAmebaなうを提供しているアメブロこそが、現在はブログ、特に携帯で閲覧し、更新するブログの分野でネットワーク効果を発揮しているサービスだという点だろう。当然、多数の芸能人ネットワークを保有するAmebaなうが、芸能人の間でネットワーク効果を発揮できる可能性も高い。

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ただ、現時点では、話はそう簡単ではない。

ITmediaの記事によると、「Amebaブログを利用する著名人のうち200人以上がすでに利用しており、開始から1時間で1万人にフォローされた人もいる」とのことだが、実際にそれらの芸能人のAmebaなうを見ると、1時間で1万人にフォローされたらしいマオさんが記事執筆時点で15638人のフォロワーで、アメブロで殿堂入りしている辻希美さんでも8000人弱。現在、Amebaブログの芸能人・有名人総合ランキング1位の北斗晶さんも5000人台という状況。開始直後の勢いと比較すると、落ち着いてきている印象も強い。

特に注目したいのが、つぶやきの数だ。

辻希美さんが現時点で4件しかつぶやいていないのは論外としても、比較的つぶやいている北斗晶さんや押切もえさんでも一日1~2件程度。3名ともアメブロの方は、一日平均3~10件はアップしているのに、である。

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ブログの「日」記に対して、Twitterは「分」記と呼ばれることもあるが、現状の芸能人におけるアメブロとAmebaなうに限って言えば、この状況は逆転してしまっているのだ。要するに、Amebaなうに参加している芸能人からすると、まだアメブロとAmebaなうの使い分けのイメージが出来ていないのだろう。

上述の個人ブログに以前書いたように、実はアメブロというのは携帯でいつでもどこでも更新できるというTwitter的なサービスだ。ある意味、日本のマイクロブログの先駆者だったといえる。

そもそもアメブロ自体をそうやってTwitter的に使っていた芸能人からすると、Amebaなうもアメブロも、現時点では利用目的が同じになってしまっている。そうなると、当然アメブロのほうが芸能人ランキングで上位になればメリットも大きいし、記事マッチと言う記事広告サービスで収入も見込めるのだから優先度として高くなってしまうのは当たり前。

つまり、Amebaなうにとって、最大のライバルはアメブロなのだ。

そういう意味で、Amebaなうが今後力をいれるべきは、アメブロと異なるAmebaなうならではの利用シーンを芸能人・有名人に対して強調していくことだろう。おそらく、そのヒントの一つはTwitterで成功している広瀬香美さんにある。広瀬香美さんは19万人以上のフォロワーを獲得しておリ、Twitterの女王の座を手にしたといえるが、すでに7月にTwitterを開始してから5ヶ月で7200以上のツイート数がある。つまり一日平均50回近くつぶやいている計算だ。

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それを引き出しているひとつの要因が、勝間和代さんとの掛け合い。つまり芸能人・有名人同士の掛け合いなのだ。

現在のAmebaなうに登録されている芸能人は、ほとんどの場合数名しかフォローをしておらず、極端な場合はフォロー数が0人という人も多い。これではせっかくAmebaなうにログインしても、自分の発言しか見えないわけで、自分の独り言を不特定多数に向けて一方的に発信する、という芸能人ブログと使い方が全く同じになる。これでは、すべての利用者がフラットにタイムライン上に存在するという、Twitterクローンの特徴を芸能人に理解してもらえないだろう。

そういう意味では、Amebaなうで今後推進するべきは、芸能人に他の芸能人をフォローしてもらい、Amebaなう上で積極的に雑談をしてもらうようにすることだろう。

例えば鈴木杏さんのAmebaなうは、芸能人を中心に20人をフォローしておリ、一日に10件以上投稿している日もある上、他の人と何度かやりとりをしているようだ。鈴木杏さんの場合は、ブログの更新は一日一回程度というペースが決まっているようなので、その隙間のコミュニケーションにうまくAmebaなうがはまっているのだろう。そういう意味では、アメブロの人気ランキングに登場しないような芸能人の中に、Amebaなうの原動力になる芸能人がうもれている可能性が高いともいえる。

こうした芸能人同士のコミュニケーションがAmebaなう上で実施されるようになると、当然その芸能人のファンの人達は芸能人同士の可視化された楽屋トークをみに、Amebaなうに押し寄せることになるはずだ。

当然、Twitter Japan側が今後取り組むべきことは同じ。すでに原田知世さんが12月にTwitterを初めてフォロワーが8000人を超えるなど、Twitterに芸能人が多数流入してきそうな気配もある。そうなったら、Twitterが、アメブロにとっての強力なライバルになるのは間違いない。

そうなる前に、Twitterへの芸能人流入をAmebaなうが阻止できるかどうかは、まずAmebaなう自身が兄弟であるアメブロの影を乗り越えて、独自の存在意義を示せるかどうかがポイントになりそうだ。

2009年12月21日

2009年の究極のウェブは「モバツイッター」。忘年会議2009で究極のウェブトップ10が発表に。

この記事は、TechCrunch Japanに投稿したものです

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bounenkaigi先週末の12月12日に、日本のネットコミュニティの恒例行事とも言える忘年会議2009が開催された。

忘年会議では毎年「究極のウェブ」を読者投稿から選んでいる。
過去の究極のウェブランキングでは、2004年の段階でmixiが1位に選ばれるなど、一般的な投票企画とは異なった一足先の未来を感じさせるツールがピックアップされるので有名だ。

残念ながら、忘年会議の開催は今年で最後になるため、究極のウェブランキングの発表も今年が最後になるようだが、最後にふさわしい独特のトップ10が発表されたので、ここで紹介しておこう。

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(Photo by masakiishitani

■2009年「究極のウェブ」ランキング

10位 Twitter
完全に2009年の顔となった印象もあるTwitterだが、あまりに当たり前ということでこの究極のウェブランキングでは10位に。当たり前になったサービスは上位に入れないのが、究極のウェブランキングのひとつの特徴というのがよくわかる結果に。とはいえ、日本においてもTwitterが今年の話題の中心だったことは間違いない。

9位 nanapi
7分以内でデキル!をキャッチフレーズに、生活をもっとハッピーにするテクニックを共有するライフレシピ共有サイト。ネットコミュニティで有名なけんすう氏が運営するロケットスタートが今年開始したばかりのサイトで、日本版Mahaloとでもいうべき雰囲気のあるサイトだ。

8位 テレビジン
2ちゃんねるのスレッドやブログ、Twitterなどの情報をもとに、現在進行形でテレビ番組の盛り上がりを可視化しているサイト。アジャイルメディア・ネットワークのエンジニアで、Twitterのつぶやきランキングサイト「Twitty」などのサービスも開発している福田一行氏が、個人で運営している。

7位 AppBank
大量のiPhoneのアプリケーションをレビューしているサイト。複数人で運営するグループブログ的な携帯で運営されており、個人で運営されているライバルブログに差をつけ始めている模様。今年のiPhoneアプリの盛り上がりを象徴させる受賞といえる。

6位 美人時計
360人の日本美人が手書きボードで現在時刻をお知らせする「1min自動更新時計サイト」。ウェブサイトだけでなく、iPhone版やiGooeleやMy Yahoo用のウィジェットなども提供されており、美男時計をはじめ、フランス・パリ版や美声時計等が計画されたり、企業とのタイアップも始まっている。月間PVは2億4000万を突破。

5位 ほめられサロン
名前と性別を入力し、職業を選択すると、とにかく自分のことをほめまくってくれるサイト。心がすさんだときにおすすめの仕組みになっており、ハドソンやBiglobeなどとさまざまなタイアップ企画も実施されている。運営は大分県のデジタルバンクという会社。

4位 Revilist
ISBNコードからAmazonのAPIを使ってレビューだけをひっぱるサイト。Amazonに比べてレビューだけを一覧して手軽に閲覧できる点が評価された。開発したのはたつをのChangeLogというブログを書いていて、様々な便利アプリを開発していることでもお馴染みのたつを氏。

3位 Joker Blog
過去にTechCrunchでもWISH2009での大賞受賞が紹介されて話題になった、ラジコンをネット経由で操作できるというJoker Racerのラジコンマネージャー「Akiko」さんが運営しているブログがランクイン。Joker Racerの話題の盛り上げに貢献している。

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(Photo by masakiishitani

2位 Lang-8
世界中のユーザーがそれぞれの言語でお互いの日記を添削しあうクラウドソーシング的な言語学習翻訳サイト。昨年開催された忘年会議2008の究極のウェブランキングでも5位に入賞していたが、あらためて2位に入賞。現在は月額10万円程度の売上しか上がっていないとのことだが、今回の受賞も含め、今年はWISH2009でもITmedia賞を受賞するなど、認知が高まってきており、来年のさらなる飛躍が期待される。

1位 モバツイッター
日本ではおなじみの携帯電話用Twitterサービス。Twitter Japanが公式の携帯版を開始するまでは、Twitterの公式サイトからもリンクが貼ってあったことでも有名で、利用者は15万人以上、ページビューももうすぐ月間1億PVに到達する見込みだそうだ。実は開発者のえふしん氏が一人で業務の時間外に運営しているサービスだった。

なお、開発者のえふしん氏は12月末で現在在職するPaperboy&coを退職し、モバツイッターをコアに独立するとのことなので、来年は本家との開発競争が激化するのかもしれない。いずれにしても、Twitter利用者にとっては良いニュースだろう。


(Video by masakiishitani)


本家のサービスであるはずのTwitterが10位で、Twitterの周辺サービスであるはずのモバツイッターが1位に選ばれるという、究極のウェブランキングならではの象徴的な結果となった。ただ、初期のTwitterユーザーからは、モバツイッターがなければ、Twitter黎明期に日本でここまでTwitterファンが増えることはなかったと言われることも多かったため、今回のランキングは、はからずもそれを証明した形になったと言える。

また、過去の究極ランキングで1位に選ばれたサービスは下記の通り。

2004年:mixi
2005年:はてなブックマーク
2006年:あとで読む
2007年:ニコニコ動画/時速ニコメートル
2008年:Dropbox

それぞれ現在となっては一般的なサービスと思われるものも多いが、マスメディアで取り上げられ始める前にピックアップされているのが特徴だ。そういう意味では、今回のランキングにも未来の日本のウェブを占う上でのヒントが含まれているかもしれない。

2009年12月14日

Google日本語入力は、日本におけるGoogleの存在感上昇のきっかけになるか

この記事は、TechCrunch Japanに投稿したものです

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すでに先週木曜日に発表され、話題が一巡した感もあるGoogle日本語入力
本日、記者向けの説明会が行われ、詳細の説明が実施されたのでレポートしておこう。

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記者発表会の様子は下記の動画にまとめてみたが、20%プロジェクトからスタートしたことやベータ版であることを強く強調しているのが特に印象的で、現在のところはGoogle Chrome OSとの連携や、Google Adsense等の広告ツールとの連携の話は全くなし。

対マイクロソフトの戦略的なツールと言う印象は、ほとんど受けなかった。実際、20%プロジェクトから始まったことを考えれば、そういう位置付けのサービスなのだろう。(もちろんGoogleのことだから、現在のところは、という注記つきではあるが)

Google日本語入力 記者発表会の様子


Google日本語入力のデモの様子

ウェブ連携サービスとしての特性や、既存サービスとの競合など、このサービスの可能性をめぐる議論の軸はいくつもあるが、個人的に興味深いのは今回のサービスがGoogle日本法人のチームが中心に、日本語という日本独自の市場に対して提供されたということ。

これまで、主にGoogleがリリースするサービスはグローバルでの展開が先にあり、それを日本語環境にローカライズするという展開が一般的。もちろん、Google日本法人もこれまで日本独自の展開はいろいろと実施してきていたが、ここまで明確に日本法人が主導で独自のサービスを打ち出してきたことはなかったように記憶している。

今回、それができたのは今回のGoogle日本語入力が、IMEという英語圏には不要のサービスだからという特殊性があるのは間違いない。

ただ、日本法人の業務というのは、Googleストリートビューをめぐる議論のように、とかくグローバル主導のサービスを日本市場にそのまま当てはめようとする際に発生する独特のハレーションをケアするのが主な業務になりがちなことを考えると、今回のGoogle日本語入力が持っている意味は案外大きいという印象がある。

当然日本独自のサービスであれば、利用者のフィードバックに対する反応も早くできるし、日本独自のニーズもより深く反映させることができる。

記者発表会当日には、現在のGoogle日本語入力の抱える誤変換や、卑猥な用語の露出に対する対策など、はやくも大企業が提供するサービスとしての厳しい質問が集中していたが、それらの懸念に対する対応も日本法人独自の方針で積極的に対応することが可能だろう。

これまでのGoogleは比較的日本の利用者との接点が少ないこともあり、日本で顔が見えない黒船として扱われてしまうことが多いように思う。それが、Google日本語入力のような日本独自の活動を通じてGoogle日本法人の開発チームの顔が見えてくれば、そういったイメージを変えていくきっかけにもなりうるかもしれない。

さらに個人的になるのは、IMEという英語圏以外における独特なサービスのおかれた特殊な立ち位置。

これは奇しくも、Google日本語入力の参入により新たな巨大なライバルとの競争をよぎなくされたジャストシステムの担当者が以前言っていた話でもあるし、記者発表会でGoogleの及川氏も言及していた話だが。

IMEというのは実はブラウザや検索ボックスよりも利用者の手前にあるサービスだ。

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そういう意味では、IMEというのは英語圏以外における独特のサービスというだけでなく、英語圏以外のウェブ業界における隠れたキープレイヤーとなる可能性も持っている。

例えば、ATOKがチャレンジしているように、文字の入力中に単語の意味を確認したくなった場合、Google日本語入力から直接Googleのウェブ検索の結果を見せることもできるだろうし、Google日本語入力への何らかのキー入力をきっかけとしてアプリケーションやウェブサービスを直接呼び出すことも可能。Google日本語入力の展開の仕方によっては、OSやブラウザをバイパスしてウェブサービスとつなぐ手段になりうるのだ。

もちろん、現時点のGoogle日本語入力でそんな展開がほのめかされているわけでは全く無い。

ただ、今後、Google日本語入力が様々な形でGoogleの既存サービスとの連携を深めていけば、Google日本語入力をきっかけに、Googleの利用者やファンを増やし、日本市場に君臨するYahoo!との戦いにおける差別化要因になる可能性もある。そんな妄想を考えてしまうのは私だけだろうか。

(徳力基彦 ブログ/Twitter

   

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