Google日本語入力は、日本におけるGoogleの存在感上昇のきっかけになるか

この記事は、TechCrunch Japanに投稿したものです

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すでに先週木曜日に発表され、話題が一巡した感もあるGoogle日本語入力
本日、記者向けの説明会が行われ、詳細の説明が実施されたのでレポートしておこう。

google_ime

記者発表会の様子は下記の動画にまとめてみたが、20%プロジェクトからスタートしたことやベータ版であることを強く強調しているのが特に印象的で、現在のところはGoogle Chrome OSとの連携や、Google Adsense等の広告ツールとの連携の話は全くなし。

対マイクロソフトの戦略的なツールと言う印象は、ほとんど受けなかった。実際、20%プロジェクトから始まったことを考えれば、そういう位置付けのサービスなのだろう。(もちろんGoogleのことだから、現在のところは、という注記つきではあるが)

Google日本語入力 記者発表会の様子


Google日本語入力のデモの様子

ウェブ連携サービスとしての特性や、既存サービスとの競合など、このサービスの可能性をめぐる議論の軸はいくつもあるが、個人的に興味深いのは今回のサービスがGoogle日本法人のチームが中心に、日本語という日本独自の市場に対して提供されたということ。

これまで、主にGoogleがリリースするサービスはグローバルでの展開が先にあり、それを日本語環境にローカライズするという展開が一般的。もちろん、Google日本法人もこれまで日本独自の展開はいろいろと実施してきていたが、ここまで明確に日本法人が主導で独自のサービスを打ち出してきたことはなかったように記憶している。

今回、それができたのは今回のGoogle日本語入力が、IMEという英語圏には不要のサービスだからという特殊性があるのは間違いない。

ただ、日本法人の業務というのは、Googleストリートビューをめぐる議論のように、とかくグローバル主導のサービスを日本市場にそのまま当てはめようとする際に発生する独特のハレーションをケアするのが主な業務になりがちなことを考えると、今回のGoogle日本語入力が持っている意味は案外大きいという印象がある。

当然日本独自のサービスであれば、利用者のフィードバックに対する反応も早くできるし、日本独自のニーズもより深く反映させることができる。

記者発表会当日には、現在のGoogle日本語入力の抱える誤変換や、卑猥な用語の露出に対する対策など、はやくも大企業が提供するサービスとしての厳しい質問が集中していたが、それらの懸念に対する対応も日本法人独自の方針で積極的に対応することが可能だろう。

これまでのGoogleは比較的日本の利用者との接点が少ないこともあり、日本で顔が見えない黒船として扱われてしまうことが多いように思う。それが、Google日本語入力のような日本独自の活動を通じてGoogle日本法人の開発チームの顔が見えてくれば、そういったイメージを変えていくきっかけにもなりうるかもしれない。

さらに個人的になるのは、IMEという英語圏以外における独特なサービスのおかれた特殊な立ち位置。

これは奇しくも、Google日本語入力の参入により新たな巨大なライバルとの競争をよぎなくされたジャストシステムの担当者が以前言っていた話でもあるし、記者発表会でGoogleの及川氏も言及していた話だが。

IMEというのは実はブラウザや検索ボックスよりも利用者の手前にあるサービスだ。

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そういう意味では、IMEというのは英語圏以外における独特のサービスというだけでなく、英語圏以外のウェブ業界における隠れたキープレイヤーとなる可能性も持っている。

例えば、ATOKがチャレンジしているように、文字の入力中に単語の意味を確認したくなった場合、Google日本語入力から直接Googleのウェブ検索の結果を見せることもできるだろうし、Google日本語入力への何らかのキー入力をきっかけとしてアプリケーションやウェブサービスを直接呼び出すことも可能。Google日本語入力の展開の仕方によっては、OSやブラウザをバイパスしてウェブサービスとつなぐ手段になりうるのだ。

もちろん、現時点のGoogle日本語入力でそんな展開がほのめかされているわけでは全く無い。

ただ、今後、Google日本語入力が様々な形でGoogleの既存サービスとの連携を深めていけば、Google日本語入力をきっかけに、Googleの利用者やファンを増やし、日本市場に君臨するYahoo!との戦いにおける差別化要因になる可能性もある。そんな妄想を考えてしまうのは私だけだろうか。

(徳力基彦 ブログ/Twitter




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