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2008年2月26日

国内ベンチャーが海外に出て行けないのは、最初から狙ってないからでは?

cnet_logo.png CNETのオンラインパネルディスカッションで、久しぶりに答えられそうなお題が出たので、コメントしてみました。
 書いていたら異様に長くなってしまったのですが、こちらにもポストしておきます。
(なんかリンクの投稿のせいかうまくいかないので、何度か押したら三つも同じ記事がポストされてしまったりしたのですが・・・)

■お題はコチラ。
国内ベンチャーの海外進出ってどうなの?:CNET Japan オンラインパネルディスカッション - CNET Japan


 個人的には、ウェブサービスに限って言うと、世界に通用するウェブサービスが日本から出てこないのは、シンプルに「世界に通用させようとしていない」からだと思っています。

 ウェブサービスというのは、文字通り「サービス」。
 日本が海外に誇る家電や自動車のようなハードウェアのように、製品自体が、そのままの形で海外でも利用されやすいものとは違って、サービスには、国にあわせたローカライズが不可欠です。

 ローカライズというのは、何も言語だけの話ではなく、言語の特徴を元にしたユーザーインターフェースの違いだとか、その国の他のサービスとの相性だとか、利用者の行動パターンにあわせた細かい機能だとか。
 そういうものの組み合わせでウェブサービスは初めて、その国の利用者にとって便利なものになりうるのであって、どこかの国でブレイクしたからといって、他の国で人気が出るとは限らないというのは、何も日本→海外だけの話ではありません。

 たとえば米国で圧倒的人気を誇っているeBayやMySpaceが日本参入に失敗したり、国によってYahooやGoogleが全く存在感の無いエリアがあったり、韓国でダントツ人気のCyworldが日本ではそれほど注目されなかったり。
 ウェブサービスの国境越えの失敗例は枚挙にいとまがありません。

 ただ、逆にグローバルに展開しているつもりでサービスを開発していたら、思いもよらない国で利用者が普及するという展開もあり得るのもインターネットの面白いところ。
 Googleが買収したSNSのOrkutがブラジルで利用者急増したりといった事例もありましたし、自分のブログでレビューしている限り、今や世界で注目されているウェブサービスの出身国は、米国だけでなく、ドイツ、フランス、韓国、中国、オーストラリア、エストニアなど、確実に世界に分散し始めているのを感じます。
(参考:世界のウェブサービス競争に取り残されているのは日本だけかも


 そういう風に見てみると、やはり国内ベンチャーが海外進出にあまり成功していないというのは、別に日本国内の特殊な環境が云々という複雑な話ではなく、単純にほとんどの国内ベンチャー企業が国内市場をメインのターゲットにしているからだと思っています。

 海外市場を目指している企業が最初から少ないなら、海外で成功する国内ベンチャーが少ないのは当たり前。
 確かに事例としてはLUNARRやはてな、FastladderやLingrなど、海外を意識した事業者は増えてきているんだと思いますが、世界のベンチャー企業の数からしたら1%にもならないはずで。
 
 まだまだ自分も含めて日本のインターネット事業者というのは、言語の壁に守られていて、インターネットによる本当のグローバル化の可能性や影響みたいなものを体験できていないのではないかと思います。 


 ちなみに、まず国内を固めてから海外を狙うというのは、一見筋が通っているように見えますが、実際には国内向けで成功したと言うことは国内市場に最適化されたという意味であって、海外での成功がそのまま約束されたわけではないということだと思います。

 仮に海外でも通用する面白いサービスを開発した企業がいたとしても、もし当面、国内で成功させるのに力を注いでいたら、そうこうしているうちに最初からグローバルのマーケットをターゲットにしている他の国のベンチャー企業が、類似のアプローチをとってその市場をおさえてしまったりもするわけで。
 ウェブサービスに限って言うと案外回り道になっているような気もします。


 そういう意味では、日本で成功したからついでに海外というようなノリではなく、本気で「世界を相手にする」と決意してチャレンジできる人が今後どれだけ増えてくるか。が、国内ベンチャーの海外進出の成功事例が出てくるかどうかにつながってくるのではないかと思います。

(って、他人事のように言ってないで、自分もがんばらないといけないんですが)


※ちなみに、本気で世界に出て行こうという日本のウェブサービスを、本気で支援しようという英語ブログAsiajinでは、日本人の英語のプレゼン練習イベントを定期的に開催されるそうです。
 第一回は、すでに申し込みを締め切ってしまっていますが、また開催されると思いますので、ご興味のある方は是非Asiajinのブログを継続的にチェックして下さい。

2008年2月21日

TECH VENTURE 2008にみる日本のテクノロジーベンチャーの可能性

 昨日、CNETさんが主催されているTECH VENTURE 2008の授賞式に招待頂いたので、当日の感想をレポートしておきたいと思います。

 今回のTECH VENTURE 2008で目指していたのは、テクノロジーを駆使したビジネスを生み出すすぐれたベンチャー企業を選出し、広く紹介すること。

 受賞企業の中には、ニコニコ動画のニワンゴさんや、顔ちぇきのジェイマジックさんなど、誰もがよく知るサービスを開発している企業から、私も初めて知った企業までいろんな企業があったのですが、日本にもいろんな技術を持ったベンチャー企業があることを改めて実感することができたイベントだったと思います。

techventure_2008.png

□受賞企業の一覧は上記にもありますが、簡単にご紹介するとこんな感じ。

株式会社アイ・ブロードキャスト
 動画や静止画を携帯電話向けに最適化して配信するソフトウェアの開発

ウタゴエ株式会社
 動画の配信費用を数十%まで削減できるグリッド型映像・音楽配信サービス

株式会社エニグモ
 クリエイターや個人に動画CM制作を依頼するマーケットサービス

株式会社エンターモーション

 MediaMagic2.0等のモバイルサイト構築システムの開発、提供

株式会社オークファン
 月間ユニークユーザー数が120万を超えるオークション統合サービスaucfan.com

コミュニティーエンジン株式会社
 オンラインゲーム向けのネットワークミドルウェアの開発

ジェイマジック株式会社
 独自開発の画像認識技術をベースに携帯電話向けメディアサービスを展開

株式会社シリウステクノロジーズ
 携帯電話の位置情報にあわせて、ユーザーに最適化した広告を配信するアドローカル

株式会社ニワンゴ
 動画上で視聴者がコミュニケーションできるニコニコ動画

株式会社PTP
 テレビ番組を同時に一週間HDDに録画し続けるレコーダSPIDER


 サービスのバリエーションとしては、やはり携帯電話関連と動画関連に集中していた印象がありますが、個人的には特にウタゴエさんのP2P配信ストリームサービスとでもいうべきChannel.isが、いきなりグローバルをターゲットにサービス展開を開始しているというのが印象的でした。
 また、テレビ番組を一週間HDDに録画し続けるSPIDERというレコーダーをプレゼンされていたPTPさんのようなハードウェアベンチャーも、今後はもっと増えていくと面白いのではないかなーと思ったりします。

 結構、いろんなベンチャーを知っているつもりになっていましたが、日本にもまだまだ知らない面白いベンチャーがあるもんです。

 一応、当日のプレゼンテーションをいくつか撮影してきましたので、公開の許可が出たらアップしたいと思いますが。
 このブログでは、主に海外のサービスばかりレビューをしているので、今回のイベントを通じてちょっと反省。今後は国内企業のサービスも、もっと取り上げていきたいな、と思います。

 ちなみに、公式サイトの記事はこちらにあります。

優れた国内ベンチャーが集結、「Tech Venture 2008」開催:CNET Japan

2008年2月18日

2008年はウェブサービスの統合が加速しそうな予感

workstylememo.gif 少し仕事のバタバタ感が落ち着いたので、ここしばらくメモっていた記事を振り返っていたのですが、感覚的にウェブサービスの買収の記事が多くなってきているなーという気がします。
 
 YahooをMicrosoftが買収という話が出ているから、余計にその印象が強くなっているだけかもしれないのですが。ちょっと振り返ってみただけでも噂ベースも含めてこれだけの買収ネタがあります。

 2月5日には、ウェブOSのgoowyとスタートページのyourminisを提供するGoowy MediaがAOLに買収

AOL,ウィジェット開発のGoowy Mediaを買収:ITpro

 2月9日には、Yahooを買収交渉中のMicrosoftが、ライブストリーミングサービスのUstreamを5000万ドルで買収するのでは?という噂が出ていますし。

TechCrunch Japanese アーカイブ » マイクロソフト、Ustream.tvを$50Mで買収か?

 2月11日には、TechCrunchで、営業支援サービスのSalesForceがOracleに買収の売り込みをしている噂が出てますし。

TechCrunch Japanese アーカイブ » Salesforce、Oracleに1株あたり$75で売り込みか?

 さらに2月14日には、以前からGoogleかMySpaceによる買収の噂があった、英国でfacebookに次いでSNS2位のBeboの買収が10億ドルで決まったという噂も登場

TechCrunch Japanese アーカイブ » Bebo―$1Bで買収か? 情報源は「確実」と断言

 2月15日には、OpenSocial対応で注目度が一気にアップしたプロフィール管理サービスのPlaxoがComcastに買収されることが決まったらしいと言う話も出てきています。

TechCrunch Japanese アーカイブ » Plaxoの買い手はFacebookでもGoogleでもない―どうやらComcastか?

 他にも2月2日には、TwitterNTTグループの資本が入るのではないかなんていう、うわさ話も流れていますが(まぁこれは多分ないとしても)、今月に入ってからのウェブサービスの買収話のペースは、どうにも早すぎるような気がします。

 もちろん、特に米国を中心としてM&Aが活発なのは何も今に始まったことではないのですが、個人的には、GoogleやYahooが小規模なWeb2.0系サービスを買収しあっていた頃に比べると、どうも買収対象の単位が大きくなってきている印象があるのが気になるところ。
 中ぐらいの成功をしたぐらいでは、他社との競争に勝ち残っていけないので、統合して規模の拡大を模索するというのは、金融機関とか自動車業界とかどんな業界でもおこる典型的な現象ですが。

 Web2.0ブームが一段落して、市場の成長ペースも落ち着いてきているところで、いよいよ早めに落ち着き先を見つけないとまずそうという雰囲気が出てきているような気がしてきます。

 MicrosoftによるYahoo買収というインパクトの大きい話で幕を開ける形となった2008年ですが。
 なんだか、今年は、相当、中規模のウェブサービスの統合が加速しそうな気がしてきました。

(個人的には買収のニュースよりも、新しいコンセプトのウェブサービスが登場するニュースの方が好きなのですが・・・)

2008年2月14日

ライブ動画ストリーミングも携帯電話対応が進行中

blogtv_logo.png 以前、このブログでレビューしたblogTVというライブストリーミングサービスが、携帯電話でのライブ配信の再生に対応したそうです。

 UstreamStickamに注目していた関係でblogTVは結構ノーマークだったんですが、サイトデザインもおしゃれに変わっていますし、結構頑張っているようですね。
 
 個人的に非常に興味があるのは、このあと出てくるであろう、携帯電話「から」、手軽にライブ配信を行えるサービス。
 もし、パケ放題の携帯電話から、手軽にライブ配信ができるようになったら、ライブ配信の位置づけがまた大きく変わることになるような気がします。

 もちろん、現状では回線速度やバッテリーの問題はもちろんありますし、携帯電話事業者からしたら必ずしも嬉しい話ではないと思いますが・・・
 この手の携帯電話向けサービスは、ぜひ海外に負けずに日本のサービス事業者もがんばってほしいところです。
 

TechCrunch Japanese アーカイブ » BlogTVがモバイルに

「ライブ動画ストリーミング配信サービス「BlogTV」のライブ番組が携帯対応になった。
新モバイル対応サイトは「m.blogtv.com」。プラグインを入れなくても大体の携帯電話でBlogTVのライブ番組が視聴できる(僕のiPhoneでは動かないのでflashベースだろうか)。」

2008年2月 8日

参加者にいきなり衝撃を与えた LUNARR発表会オープニングビデオ

workstyle_voice.png 昨日、LUNARRの発表会に行ってきました。
 LUNARRについてご存じのない方は、下記の記事なんかを参考にして頂ければと思いますが。 

 新コラボサービス「LUNARR」が地球の“表と裏”でベータ開始 - @IT


 今回の発表会は、何もかもが破天荒で、いろんな意味で衝撃を受ける発表会でした。
 会場が六本木ミッドタウンにあるリッツカールトンだったり、参加者全員にiPod nanoが配られてしまったり、しかも一人にはMacbook Airが当たったり。

 日本のウェブサービス系のベンチャー企業は、大抵サービスのリリースはオンラインで告知するぐらいだと思いますが、今回のLUNARRの発表会は全く別次元。
 米国のサービスの発表会を見に行ったことがないのでこれが米国流なのかはよく分かりませんが、高須賀さんがわざわざ米国に渡って新しい会社を始めた理由というのが痛感できる発表会でした。
(まぁ、サービスを開始したばかりの独立系のベンチャーが、ここまでの発表会をするのは米国でもあまりないでしょうから、これぞ高須賀流というところなのでしょうか。)
 
 なんだかあまりの衝撃でいまだに考えがまとまらないので、とりあえず発表会で大いに笑いと驚きをもって受け止められていたオープニングビデオだけ貼り付けて、今日は終わりにしたいと思います。
(ちなみに、ビデオ撮影のために最前列に陣取った自分自身が、もっとも衝撃を受けたのですが)

 当日の詳細については、すでにいくつか濃いレポートが上がっていますので、そちらもどうぞ。

F's Garage:LUNARRの発表会に行ってきたよ
404 Blog Not Found:LUNARR = (document|communic)ation
LUNARR β版のリリース | 近江商人JINBLOG


※なお、この映像は以前ご紹介したSANYOのXacti HD1000で撮影しています。
 

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2008年2月 6日

MySpaceがようやくAPI公開で、開発者囲い込み競争に参戦

myspace_logo.png 話題量では、完全にライバルのFacebookにSNSトップの座を奪われた印象のあるMySpaceですが、ようやく開発者向けプラットフォームを公開するようです。

 Facebookアプリはすでに1万5千を超えているそうですが、MySpaceのプラットフォームもOpenSocialプラットフォームに準拠しているということですから、OpenSocialアプリを開発しようとしていた開発者にとっての最大の利用者がいる場所には違いありません。

myspace_api.png
 
 1万5千分の1になるより、OpenSocialアプリが少ないうちに目立つという考え方もあるでしょうから、しばらくはウィジェット開発者の囲い込み競争の行方がどうなるのかは非常に気になるところです。
 まぁ、実際には開発者の方々は囲い込まれるというよりも、両方に対応したアプリを開発するだけかもしれませんが。


 特に日本はmixiがOpenSocial対応を宣言しているだけに、日本の開発者からすると英語版しかないFacebook向けにアプリを開発するよりは、まずはMySpace向けで肩慣らしという考え方もあるかもしれませんね。
(Facebookの日本語対応という噂もあったりしますが)


マイスペース、まもなく開発者向けプラットフォーム公開へ--新COO任命も:ニュース - CNET Japan

「世界最大のオンラインソーシャルネットワークMySpaceは、2月に外部のソフトウェア開発者を対象としたプログラムの公開を計画している。ライバルFacebookとの差を広げるのが狙い。」

2008年2月 4日

人気ファイル転送サービスのRapidShareがサービス停止の危機に?

rapidshare_logo.png TechCrunchによると、ドイツのファイル転送サービスRapidShareが存亡の危機に立たされているそうです。

 なんでも「著作権侵害にあたるファイルをホストしている責任をRapidshareはとらなければならない」という判決が出たそうで。
 RapidShareというのは基本的には日本の宅ふぁいる便のようなファイル転送サービスなのですが、あまりに著作権侵害行為にあたるファイルアップロードが多いということなのでしょうね。

 実はこのブログで書いたRapidShareのレビュー記事にも、検索経由で多くのアクセスがありますので日本人利用者も結構いるのではないかと想像しています。
 過去にまとめた無料オンラインストレージの一覧でも、Alexaの順位だけを見ると、米国のYouSendItなんかを抑えてトップクラスのアクセス数に見えますから、今後の動向が気になるところです。

 まぁ、個人的にはドイツでだめならサーバーを海外に移転させればいいだけのような気もするのですが・・・ビジネス上、そういうわけにもいかないというところでしょうか。


TechCrunch Japanese アーカイブ » ドイツ国内におけるオンラインファイル共有サイトへのアクセスは間もなく皆無になると言ってもよいだろう

「ドイツのファイルホスティングサイトRapidshareは国際的な人気を得るまでには至っていない。しかし、著作権侵害にあたるファイルがアップロードされた件につき、ドイツ法廷が同サービスの責任を認めたことから、どうもデッドプール入り(日本語)となりそうだ。」

   

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